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『レミニセンス』リサ・ジョイ監督と夫ジョナサン・ノーランが語る、夫婦での映画作りの秘訣

インタビュー

『レミニセンス』リサ・ジョイ監督と夫ジョナサン・ノーランが語る、夫婦での映画作りの秘訣

「私はコロナ禍で未来に不安を抱いたというよりは、心のつながりがさらに強まったようにも感じています」(リサ・ジョイ)

メガホンをとったリサ・ジョイ監督
メガホンをとったリサ・ジョイ監督[c] 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved


――水没した都市で、未来に不安を抱くという設定の脚本は、コロナ禍で監督が感じた心情とリンクしていたのでしょうか?

リサ・ジョイ「そうですね。コロナ禍で私たちはとても孤独で、社会から疎外されていました。ハグをすることができなくて寂しかったし、家族や友人に会えるようになることを心待ちにしていました。そういう親密な関係におけるノスタルジーや新たに発見した価値観が、私の心に強く響いたと思います。だからもしも劇中のように、過去に戻り、みんなが一緒にいられる思い出を再体験できるとしたら、きっと私たちはやっていると思います。

ニックをサポートするワッツ役に「ウエストワールド」のタンディ・ニュートン
ニックをサポートするワッツ役に「ウエストワールド」のタンディ・ニュートン[c] 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

ただ、私はコロナ禍で未来に不安を抱いたというよりは、心のつながりがさらに強まったようにも感じています。なぜなら私は、人間というものは希望によって導かれるべきだと思っているし、そう信じているから。だから水没した都市においても、人生における楽しみの兆候を見つけることができるし、人々は恋に落ちます。たとえ生活が困難になっても、組織的な不正があったとしても、私たちの人生はすばらしいということを見せたかったです」

――水没した都市の世界観が非常に印象的でしたが、特にこだわった点を聞かせてください。

リサ・ジョイ「街が沈んでしまうのはとても悲しいことですが、そういう状況においても、“美”はあると思っていたので、そこは表現したかったです。アールデコの建物や、街のイルミネーションなどを上手く使って、グラマラスな世界観に作っていきました。また、衣装にもこだわり、靴1つ取っても耐水性があって歩きやすいデザインにしたり、なるべくすべてのものに生活臭が感じられるような造形にして、みんなが本当にこの世界で生きているんだと感じさせるようにしました。

デザイン的には多文化を意識し、看板もよく見ると多言語になっています。私の母はアジア系で、小さいころからアジアの夜市などに行っていた記憶が残っているので、水上市場などにその雰囲気を活かしました」

「宮崎駿監督ほど大胆に新しい神話を作れる監督はいないと思っています」(リサ・ジョイ)

宮崎駿監督をリスペクトしているというリサ・ジョイ監督
宮崎駿監督をリスペクトしているというリサ・ジョイ監督[c] 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

――『千と千尋の神隠し』にオマージュを捧げた電車のシーンも登場しました。リサ・ジョイ監督は『千と千尋の神隠し』のどんな点に惹かれましたか?

リサ・ジョイ「本当に目を見張るような想像力にあふれた作品だと思います。宮崎駿監督はアーティストとして本当に美しいものを作る方で、彼ほど大胆に新しい神話を作れる監督はいないとも思っています。私は彼の大ファンで、挿入したオマージュのシーンでは、宮崎監督の10分の1でも美しいものを作れていれば、十分満足です」

『千と千尋の神隠し』にオマージュを捧げたシーン
『千と千尋の神隠し』にオマージュを捧げたシーン[c] 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

――また、水中を泳ぐシーンが非常に印象深かったのですが、あのシーンは水を使わない「Dry for wet」での撮影ではなく、リアルに水中で撮影されたのですか?

リサ・ジョイ「そうです。私は水中撮影において、ビジュアル・エフェクトがとてもすばらしく見えるようにするためには、リアルな映像であるべきだと強く信じています。水中では照明や反射の具合がまったく違うし、役者の髪がどのように流れているかなどは、実際の動きを見て初めてはっきりと感じることができます。もちろんファイトシーンにおいては言うまでもなく大事です。

そんな複雑な水の物理を、Dry for wetで撮影して再現したとしても、リアルには見えないと思っています。この映画は完全にリアルだから、観客も水中への没入体験ができるはず。本作は、虚構の世界だと知りながらも、一時的に本物だと信じ込み『すばらしいスペクタクルだ』と思うスーパーヒーローの映画ではなく、もう少し現実に基づいたものとして撮影しました」

――仕上がりを観れば大いに納得しますが、水中のシーンでなにか印象的なエピソードがあれば教えてください。

「水中で撮影するのはとても大変なことです。特に大きなファイトシーンは、緊張感を伴いましたし、全員が長時間働き、みんなが疲れてへとへとでした。でもそんななかで、ピアノが目についたんです。私はピアノのところへ行って『ヒュー、あなたは私たちみんなを元気づけてくれないと』と提案し、『雨に唄えば』を弾いたんです。そしたら、その曲に合わせてヒューが歌ってくれました。その歌声が本当にすばらしくて、クルー全員に笑顔が戻りました。ヒューが私たちに活力や喜びを与えてくれた瞬間でした」

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