90分間ノンストップの恐怖…『アオラレ』が映画ファンならずとも必見の理由|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
90分間ノンストップの恐怖…『アオラレ』が映画ファンならずとも必見の理由

コラム

90分間ノンストップの恐怖…『アオラレ』が映画ファンならずとも必見の理由

全米公開時にはコロナ禍のロックダウンで映画館がほとんど休業状態にあったにもかかわらず、興行収入2000万ドルを超えるヒットを記録したラッセル・クロウ主演の『アオラレ』。日本だけでなく世界中で社会問題となっている“あおり運転”をテーマに、そのあまりにも理不尽な恐怖を描きだして話題を集めた本作のBlu-ray&DVDが、本日10月6日にリリースされた。本稿では注目点を3つのポイントにわたって紹介し、誰しもに起こりうるテーマを持った物語の魅力へと迫っていきたい。

朝の運転中、些細な苛立ちから地獄へと引きずり込まれていくレイチェル
朝の運転中、些細な苛立ちから地獄へと引きずり込まれていくレイチェル[c]2020 SOLSTICE STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.

ある朝、美容師のレイチェルが仕事へ向かうところから物語は始まる。高速道路の渋滞に巻き込まれ仕事に遅刻してしまうと連絡するレイチェルだったが、突如クビを言い渡されてしまう。そして最悪な気分のまま下道を走り、信号が変わっても動きださない前の車に苛立ちクラクションを鳴らす。追い抜きざまにその車のドライバーの男から謝罪を求められるも拒否した彼女は、それを境に男から執拗に追いかけられることに。やがてエスカレートした男の“あおり運転”は、レイチェルの周囲の人物を危険に晒していくことに。

理不尽すぎる!“車”にどこまでも追いかけられる恐怖

【写真を見る】クラクションを鳴らしただけなのに…“あおり運転”の恐怖を描く緊迫のスリラー
【写真を見る】クラクションを鳴らしただけなのに…“あおり運転”の恐怖を描く緊迫のスリラー[c]2020 SOLSTICE STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.

あおられる側の視点からあおり運転の恐怖を描くとあって、レイチェルが男に追尾される“カーチェイス”シーンは緊迫感たっぷり。うまく逃れたと安堵するのも束の間、いつ再び現れるのかわからない恐怖。運転中の些細な苛立ちをきっかけに、恐怖のどん底へと突き落とされてしまうという、サスペンスともホラーとも取れる展開はまさに、スティーヴン・スピルバーグ監督の長編デビュー作としていまなお人気を誇る『激突!』(71)を彷彿とさせるものがある。

“車”に追いかけられる映画の元祖といえば、スピルバーグの『激突!』
“車”に追いかけられる映画の元祖といえば、スピルバーグの『激突!』写真:EVERETT/アフロ

ハイウェイを走っている途中に前を走っていた大型トレーラーを追い越した主人公が、突然そのトレーラーから追いかけ回されるようになる『激突!』。開放的なロケーションとは裏腹に、ごく最小限の登場人物と2台の車さえあれば成立するストレートな恐怖描写は、その後も数多くの映画で引用されてきた。なかでも2001年にJ・J・エイブラムスがプロデュースを務めた『ロード・キラー』は、ポール・ウォーカーら青春スターを起用し、当時『スクリーム』などのヒットで流行していた青春スリラーというジャンルに落とし込み、新たな魅力を生みだすことに成功。


ポール・ウォーカー主演の『ロード・キラー』も、『激突!』の影響を受けた一本
ポール・ウォーカー主演の『ロード・キラー』も、『激突!』の影響を受けた一本写真:EVERETT/アフロ

同じ方法論で恐怖を描きながらも、そのシンプルさゆえに、描き方一つでまるで異なる作品を生みだすことができる。本作ではそこに “あおり運転”という社会問題化したテーマを合わせることで、一気に現代的で身近な恐怖へと変えていく。追われる側のレイチェルが置かれた境遇もまた、本作のリアリティを一層高めているといえよう。

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