「嵐は甥っ子のような存在」堤幸彦監督が『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”』で伝えたかった“嵐らしさ”|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
「嵐は甥っ子のような存在」堤幸彦監督が『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”』で伝えたかった“嵐らしさ”

インタビュー

「嵐は甥っ子のような存在」堤幸彦監督が『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”』で伝えたかった“嵐らしさ”

嵐にとって初となるライブフィルム『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”』(公開中)。監督を務めたのは「TRICK」シリーズや『明日の記憶』(06)など、数々のヒット作を手掛けてきた堤幸彦だ。映画『ピカ☆ンチ LIFE IS HARDだけどHAPPY』(02)以降、旧知の仲である嵐の20周年、その節目に行われたライブを映像で残した本作について「私の撮影人生において非常に大きな結論、結果になった」と語った。

「その瞬間にしかもぎとれない映像を」

「幸いにも映画やドラマを継続的に撮ることができているので、音楽に近い人間だとはあまり思われていないんだけども(笑)」と話し始めたように、オムニバス作品『バカヤロー!私、怒ってます』(88)内の1作でスクリーンデビューを果たす以前は、プロモーションビデオ制作や音楽映像の撮影に携わることも多かったという堤監督。ライブ撮影を「ある種、メインの仕事」と位置づけており、その魅力について「一発撮りという緊張感が好きですね。その瞬間にしかもぎとれない映像を上手く撮ることができた時には“やったぜ”という気持ちになる」と、熱く語る。

撮影の準備期間として1年以上、嵐のツアーに足を運び、構想を練った。「一瞬一瞬、先が読めないものだからこそ、1秒たりともとりこぼしたくなかった」という想いのもと、同時撮影で使用したカメラは総計125台。ライブ映像撮影としては国内最大規模といえる。それでも足りないのが本音だったが、そもそもは「5×20。じゃあ100台!」と決めたことから始まっており、当初はそれでも皆冗談だと思ったという。

【写真を見る】嵐のメンバー同士の細かなやりとりも映しだす!堤監督の愛が詰まった本作
【写真を見る】嵐のメンバー同士の細かなやりとりも映しだす!堤監督の愛が詰まった本作[c] 2021 J Storm Inc.

東京ドームという広い会場を撮るにあたり、鳥瞰は不可欠。しかし、遠くから撮ればいいという簡単なものではない。監督は会場中を歩き回り、メンバーの動きを確認しながらベストポイントを探した。そうするうちに、2階席と3階席では視点がまるで異なることにも気づく。使用するレンズはカメラのスペックや位置によって様々な種類が使用された。平面――アリーナ席での撮影も、「客席からはどこにいるときにどう見えるのか」をこだわったという。さらに、メンバーがステージ上でなにをしてるかによっても、フォーカスすべき場所は変わる。「例えば、櫻井(翔)くんがピアノを弾いている時の足元、手、指先…そういう細かなところもバランスよく入れていきたい」。丁寧に映しだされたディティール、鳥瞰とのスイッチングが、作品に臨場感を生みだした。


“1秒たりともとりこぼさない”ためには、こんな作戦も。「125台のカメラのうち、約50台はそれぞれ狙う箇所によってメンバーを決めているんです。1人につき6~7台、そのカメラはどんなことがあっても担当メンバーを撮り続けてくれ、と」。しかしこの作戦にも、ライブならではの課題があった。「彼らは動き回るわけです。メインステージにいる時にはアップが撮れても、バックステージに行くと背中側しか撮れない。その場合にはシフトを変えたりしながら、とにかく“メンバー”をきちんと撮ることは絶対としました」。その結果生まれた“嵐らしい”シーンは、作品中に散りばめられている。「背中側からも撮ることで、肩を組んだ瞬間にメンバー同士の手が触れ合うなど、ふとした瞬間にいたずらっぽくちょっかいをかけているとか、現場の随所で起きている“副産物の化学反応”も、余すところなく撮りたかった」という堤監督のこだわりが映しだした、メンバー間の温度。嵐の素顔をよく知る堤監督だからこそピックアップできた、等身大の嵐がそこにいた。

あらゆる角度から撮影を行いながらも、パフォーマンスや演出の支障にならないよう常に留意した。とりわけ避けるべきは、舞台上スクリーンに“いまその時”の嵐を映す、演出用カメラとのバッティングだ。パズルを組むように緻密な計算を重ね、カメラの位置を検討した。しかし、どれほど隙間を縫おうとも、5万2000人の視界をすべて避けることは難しい。その点は、“撮影のためのライブ”という名目を理解して参加したファンの協力が大きかった。「カメラと被写体の距離の問題を、よりクローズにしたいという想いがありました。本来、視線を遮ることはいけないことですが、撮影のためのライブだとファンの方にご了承いただけたことで、接近戦とも言える撮影ができたことは大きかったですね」と振り返る。

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