“愛と嫉妬と欲望”が絡み合う、大人のための極上のミステリー…『ナイル殺人事件』の人間ドラマは想像以上に深かった!|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
“愛と嫉妬と欲望”が絡み合う、大人のための極上のミステリー…『ナイル殺人事件』の人間ドラマは想像以上に深かった!

コラム

“愛と嫉妬と欲望”が絡み合う、大人のための極上のミステリー…『ナイル殺人事件』の人間ドラマは想像以上に深かった!

有名なミステリー作家にして、ギネスで“史上最高のベストセラー作家”として認定されているアガサ・クリスティ。多作だったクリスティの作品群のなかでも、屈指の傑作と評される1937年の長編小説「ナイルに死す」を新たに映画化した『ナイル殺人事件』が2月25日(金)に公開される。古代神秘に満ちたエジプトを舞台に、豪華クルーズ船で密室殺人事件が発生。その背景にあったのは、くせ者ぞろいの登場人物たちが繰り広げる“愛と嫉妬と欲望”のドラマだった。ここでは、キャラクターの人間模様に注目しながら、観る者の心をかき乱しながらも夢中にさせる、ラブミステリーとしての魅力を紹介していきたい。

豪華クルーズ船での密室殺人事件という難題に挑む名探偵ポアロ
豪華クルーズ船での密室殺人事件という難題に挑む名探偵ポアロ[c]2022 20th Century Studios. All rights reserved

殺害された美しき花嫁を巡る衝撃の真相とは?

若くして莫大な遺産を相続した資産家の女性、リネット(ガル・ガドット)。彼女は親友ジャクリーン(エマ・マッキー)から、婚約者サイモン(アーミー・ハマー)を奪い取る形で結婚してしまう。リネットとサイモンがハネムーンに選んだ場所はエジプトで、そこには2人の豪華なウエディングパーティに招かれたゲストたちも集まっていた。しかし、サイモンへの想いを断ち切ることのできないジャクリーンまでも姿を見せ、新婚夫婦を執拗につけ回す。不穏な空気が流れるなか、一同は豪華クルーズ船カルナック号に乗り込み、ナイル川クルージングの旅へ出発。その船上には、久しぶりのバケーションを楽しんでいる著名な私立探偵エルキュール・ポアロ(ケネス・ブラナー)の姿もあった。

略奪婚した資産家の美女と失業中の青年。青年の元婚約者との三角関係は複雑すぎる…
略奪婚した資産家の美女と失業中の青年。青年の元婚約者との三角関係は複雑すぎる…[c]2022 20th Century Studios. All rights reserved

ある夜、感情を高ぶらせたジャクリーンが、持ち歩いていた小型拳銃でサイモンの脚を撃つという事件が起きる。さらにその翌朝には、就寝中に射殺されたリネットの遺体が船室で発見される。真っ先に犯人と疑われたのは、サイモンを奪われてリネットに恨みを抱いていたジャクリーンだったが、彼女には完璧なアリバイがあった。クルーズ船という密室で起こった殺人と、乗客全員がリネット殺害の動機を持つという不可解な状況。複雑に絡み合った謎をひとつひとつ解いていく名探偵ポアロは、衝撃の真相にたどりつく。

複雑な人間の心理から事件解決のヒントをつかむポアロ
複雑な人間の心理から事件解決のヒントをつかむポアロ[c]2022 20th Century Studios. All rights reserved

親友と恋人からのまさかの裏切り…。ひと筋縄ではいかない男女の三角関係

物語の軸となるのは、リネット、ジャクリーン、サイモンが織りなすスリリングな三角関係だ。リネットとジャクリーンは、かつて同じ寄宿学校に通っていた親友同士。リネットが富にも美貌にも恵まれた社交界の花形であるのに対し、ジャクリーンはフランスの上流階級に生まれたものの、現在はあまり裕福ではない境遇に置かれている模様。だが、最愛の男性サイモンと婚約したジャクリーンは幸せな気持ちで満たされていた。ジャクリーンはリネットに、失業中のサイモンに職をあてがってほしいと頼み込む。サイモンは背が高くてハンサムで、少年のような笑顔がチャーミングな好青年。ジャクリーンからサイモンを紹介された瞬間、リネットは彼に心を奪われ、雇うどころか、あっという間に結婚を決めてしまったのだ。

ジャクリーンはリネットに、失業中の婚約者、サイモンに職をあてがってほしいと頼み込む
ジャクリーンはリネットに、失業中の婚約者、サイモンに職をあてがってほしいと頼み込む[c]2022 20th Century Studios. All rights reserved

信頼していた親友に、全身全霊で愛していた婚約者を奪われる…。友人と恋人の2人に裏切られるのは、いわゆる三角関係のなかでも、傷つく度合いが非常に大きいケース。さらに、富も名声も美貌もすべてを持っていたリネットが、ジャクリーンの人生にとって唯一の光だった存在を奪うという構図の残酷さが際立っている。おそらくジャクリーンの婚約者でなければ、リネットが無職の名もないサイモンを人生の伴侶に選ぶことはなかったはず。逆に言えば、リネットはそれほどジャクリーンのまっすぐで純粋な愛情がうらやましかったのだろう。とてつもない資産家である以上、自分に近づいてくる人間が財産目当てでないと信じることは難しいのだから。


リネットはハンサムでチャーミングなサイモンに心惹かれ、なんと彼との結婚を決めてしまう
リネットはハンサムでチャーミングなサイモンに心惹かれ、なんと彼との結婚を決めてしまう[c]2022 20th Century Studios. All rights reserved

リネットとサイモンの結婚後、嫉妬と怒りに燃えるジャクリーンは、ストーカーのように、2人の行く先々を追いかける。ジャクリーンに対する後ろめたい気持ちがあるだけに、彼女の姿を見るたびに動揺を隠せないリネットたち。リネットを深く恨みながらも、自分を捨てたサイモンのことは決して悪くは思えないジャクリーンの心情もまたせつない。愛憎渦巻く三角関係が、このあとに発生する殺人事件にどう絡んでくるのかに注目してほしい。

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