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第94回アカデミー賞“オスカー・ウィーク”に、国際長編映画賞候補の監督たちが勢揃い「映画オタクの世界で最も大きな集会」

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第94回アカデミー賞“オスカー・ウィーク”に、国際長編映画賞候補の監督たちが勢揃い「映画オタクの世界で最も大きな集会」

「観客の集中力に応えるような、恥ずかしくない映画を作らなくてはいけない」(濱口)

【写真を見る】「すべての映画監督にとって悪夢のような存在です」と紹介された濱口竜介監督
【写真を見る】「すべての映画監督にとって悪夢のような存在です」と紹介された濱口竜介監督Mike Baker / [c]A.M.P.A.S.

シンポジウムのなかで、現在の映画業界において避けることのできない劇場とストリーミングの問題も議題にあがった。メディアの違いの問題ではなく、「観客の集中力が映画にとって最も重要」とする濱口監督は、「一方で、集中力に立ち向かうのはとても怖いこと。集中力が高まっている観客には、撮影現場で削いでしまったもの、嘘や間違いのようなものを見破られてしまう。集中力は配信でも映画館でも究極的には関係がなく、僕は本当に観たい映画はYouTubeで低い画質で観たりもしています。観客の集中力に応えるような、恥ずかしくない映画を作らなくてはいけないと思っています」と持論を述べた。

 「映画館での鑑賞体験は必要」と強調した『わたしは最悪。』のヨアキム・トリアー監督
「映画館での鑑賞体験は必要」と強調した『わたしは最悪。』のヨアキム・トリアー監督Mike Baker / [c]A.M.P.A.S.

それに対し、ヨアキム・トリアー監督は、『わたしは最悪。』はまだ世界中のどこでも配信されておらず、映画館でしか観ることができないと明かし、映画館で観る体験のユニークな持論を語っていた。「自分で“ディープビューイング”と造語を作ったんですが、携帯電話をしまい、映画に没頭するような体験が好きです。世界には孤独を扱った映画が多いですが、それを映画館で大勢の観客と共有する体験ができます。そして、映画独自の技巧であるクローズアップの重要性もあります。デンマークのカール・テオドア・ドライヤーやスウェーデンのイングマール・ベルイマンの映画で、目の前に迫るスクリーンいっぱいに映されたクローズアップの人物の瞳を観ると、実生活で感じるよりも親密な関係にあるような感覚を抱くことがあります。私はその体験が好きなので、映画館での鑑賞体験は必要ですし、これからも大きなスクリーンのための映画を作ると思います」。


司会を務めた『未来を生きる君たちへ』のスサンネ・ビア監督と映画キュレーターのラジェンドラ・ロイ氏
司会を務めた『未来を生きる君たちへ』のスサンネ・ビア監督と映画キュレーターのラジェンドラ・ロイ氏Mike Baker / [c]A.M.P.A.S.

司会のロイ氏は5人の監督たちを、“映画オタクの世界で最も大きな集会”と呼び、密度の濃い会話が交わされていた。アカデミー賞は表向きでは賞を争うレースだが、このようなイベントからは、映画を介した交流が盛んに行われていることがわかる。第94回アカデミー賞授賞式は、現地時間3月27日に行われる。

取材・文/平井伊都子

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