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批評家が選ぶ、オードリー・ヘプバーン出演作ランキング!『ローマの休日』だけじゃない、“フレッシュ”なおすすめ10選

コラム

批評家が選ぶ、オードリー・ヘプバーン出演作ランキング!『ローマの休日』だけじゃない、“フレッシュ”なおすすめ10選

ヘプバーンを語る上で欠かせない、3人の名匠たち

もっとも高い100%フレッシュの評価を獲得したのは、1966年に公開された『おしゃれ泥棒』。ヘプバーンが演じるのは、美術収集家のふりをする贋作家を父に持つニコル・ボネ。父に贋作作りをやめてもらいたい彼女は、ある時美術商の依頼で家に忍び込んだ私立探偵のサイモン・デルモットと出会い、鑑定にかけられようとしていた贋作のヴィーナス像を美術館から盗み出すことを計画する。

『おしゃれ泥棒』は100%フレッシュで文句なしの高評価!
『おしゃれ泥棒』は100%フレッシュで文句なしの高評価![c]Everett Collection/AFLO

同作でメガホンをとったのは『ローマの休日』も手掛けた名匠ウィリアム・ワイラー監督。アカデミー賞監督賞のノミネート12回はいまだ破られていない大記録で、そのうち3度で受賞、作品賞では受賞作を3作も世に送り出した。ワイラー監督はまさにヘプバーンの魅力を引き出した立役者の一人で、『ローマの休日』から8年後に公開された『噂の二人』(61)、そして『おしゃれ泥棒』と3作でタッグを組んでおり、それぞれの作品で異なるヘプバーンの魅力を堪能することができる。

そんなワイラー監督の作品で世界的名声を獲得したヘプバーンは、遺作となった『オールウェイズ』(89)でスティーヴン・スピルバーグ監督とタッグを組むまで、多くの名監督たちと仕事をしてきた。キング・ヴィダー監督やジョン・ヒューストン監督、「007」シリーズで知られるテレンス・ヤング監督。さらには2022年1月に亡くなったピーター・ボグダノヴィッチ監督に至るまで。

そのなかでも欠かすことができないのは、3作でタッグを組んだスタンリー・ドーネン監督と、2作でタッグを組んだビリー・ワイルダー監督だろう。

初ミュージカル作品となった『パリの恋人』
初ミュージカル作品となった『パリの恋人』[c]Everett Collection/AFLO

ドーネン監督と組んだ3作は、『パリの恋人』が88%フレッシュ、『シャレード』が94%フレッシュ、『いつも2人で』が82%フレッシュと、いずれも上位10作品に名を連ねている。ヘプバーン初のミュージカル作品挑戦となった『パリの恋人』では、フレッド・アステア演じるカメラマンに見出される女性を演じ歌唱にも挑戦。若き日のスピルバーグ監督が本作を観てヘプバーンに魅了されたという逸話もある。

そしてヘプバーンが3度目の英国アカデミー賞に輝いたサスペンスの名作『シャレード』。名優アルバート・フィニーと共演し危機に直面した夫婦の12年間の旅路を描いたキャリア後期の代表作『いつも2人で』と、まったく異なるジャンルとキャラクター設定で見事にヘプバーンの魅力を引き出していく。1950年代中期にはまだアイドル女優としてのイメージも強かったヘプバーンを本物の女優に育て上げたことこそが、ドーネン監督最大の功績ではないだろうか。


ビリー・ワイルダー監督がコメディエンヌとしての才を引き出した『麗しのサブリナ』
ビリー・ワイルダー監督がコメディエンヌとしての才を引き出した『麗しのサブリナ』[c]Everett Collection/AFLO

一方でワイルダー監督は、『ローマの休日』の翌年に公開された『麗しのサブリナ』が93%フレッシュの高評価。ヘプバーンの同作への出演が決まったのはまだ『ローマの休日』が公開される前。それでも原作者のサミュエル・テイラーとワイルダーは、ヘプバーンに合わせて脚本を執筆したという。ハンフリー・ボガートとウィリアム・ホールデンが演じる兄弟の間で揺れるヒロインを演じたヘプバーンは、同作で『ローマの休日』以上に溌剌とした演技を見せ、コメディエンヌとしての才を爆発させた。

名だたる監督たちに見出され、映画史に輝かしい一ページを刻んだ正真正銘の名女優ヘプバーン。『ローマの休日』からまもなく70年の月日が経とうとしているが、映画のなかに記録されたその輝きは決して色褪せることはない。彼女のような女優の存在が、ハリウッド映画の黄金期と現代をつなぐ重要な架け橋になっていることは言うまでもなく、それだけで映画というものの価値を体現しているとさえ感じてしまう。そしてそれはおそらく、これから何十年先も変わらないはずだ。

文/久保田 和馬

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