長編商業アニメに特化した「新潟国際アニメーション映画祭」の開催が決定!審査委員長の押井守が期待を明かす|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
長編商業アニメに特化した「新潟国際アニメーション映画祭」の開催が決定!審査委員長の押井守が期待を明かす

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長編商業アニメに特化した「新潟国際アニメーション映画祭」の開催が決定!審査委員長の押井守が期待を明かす

「第1回新潟国際アニメーション映画祭」の開催が決定し、5月23日に、第75回カンヌ国際映画祭が開催中のカンヌと東京、新潟の3都市を結んだ記者会見が行われた。東京会場からは、審査委員長の押井守、フェスティバル・ディレクターの井上伸一郎(株式会社KADOKAWA上級顧問、元月刊「Newtype」編集長)、映画祭事務局長(東京)の真木太郎(株式会社ジェンコ代表)が登壇。アジア最大の祭典として、長編アニメーションに特化した映画祭を目指すことを明らかにした。

第1回新潟国際アニメーション映画祭は、2023年3月17日(金)〜22日(水)の6日間開催
第1回新潟国際アニメーション映画祭は、2023年3月17日(金)〜22日(水)の6日間開催

3都市を結んだ記者会見では、カンヌ国際映画祭会場からプログラミング・ディレクターの数土直志。新潟会場からは、新潟国際アニメーション映画祭実行委員会代表の堀越謙三、映画祭事務局長(新潟)の梨本諦鳴が出席した。まず会見の冒頭では、井上が「本映画祭は、長編商業アニメーションにスポットを当てた、コンペティション部門を持つ、アジア最大の祭典として、新潟から世界にアニメーション文化を発信してまいります。短編は扱いません。尺は、基本的に40分以上を考えています」と説明し、「毎年開催していきたい」と意気込んだ。

フェスティバル・ディレクターの井上伸一郎
フェスティバル・ディレクターの井上伸一郎

また「なぜいまの日本に、国際アニメーションの映画祭が必要なのか」について、井上はこう語った。「現在アニメーションは日本を代表する文化となり、“アニメ”と呼ばれる日本の作品はいまや世界中のどこででも見ることができます」と前置きしつつ、「しかし未来永劫、アニメーション文化を維持するためには、文化価値の共有や作品への評価、人材やスタジオが持続する基盤を作る必要があります。現在アニメーション文化は、“商業”と“アート”、 “国内”と“海外”、“専門家”と“大衆”と様々に分断され、十分な力を発揮しているとは言えません。その現状を打破し、日本のアニメに限らず、アニメーションの地位や価値の向上に貢献する中心的な役割を担おうとするのが『新潟国際アニメーション映画祭』となります」と熱く語る。さらに「映画祭である以上、一番重要なのは国内外のアニメファンや、アニメ制作者が一同に会して交流を実現すること。みんなで祭りを盛り上げていきましょう!」と笑顔でアピールした。

【写真を見る】審査委員長の押井守が、課題や期待を語った
【写真を見る】審査委員長の押井守が、課題や期待を語った

記念すべき第1回の審査委員長を務めるのは、映画監督の押井守。「いままでもアニメーションのコンテストというのはたくさんありましたが、考えてみればアート系のアニメーションがメインだったと思います」と切りだした押井は、「本映画祭の特徴は、長編作品に特化して、エンタテインメント作品のコンペにしていこうというところ。それがおもしろいと思うんです」とコメント。「いままでそういうコンペティションがなぜなかったのか、いろいろな理由があると思いますが、一つには僕らのアニメ業界というのは、人の作品を評価するようなことを基本的にやらない、特殊な世界だったんです。人の仕事に口を出すな、ケチをつけるなというのは、僕らの世界の悪しき伝統。そこには批評もなければ、評価もない。今回はそういったものを打ち破る契機になったらと思う」と語り、「作品を出す側の彼らに、どんなメリットを作ってあげられるか」という課題もあげた。


審査委員長としての方針については、「そもそも、押井とかいうヤツが勝手に決めていいのかというね。あとで殴られるとか、そういうこともナシとはしない」と茶目っ気たっぷりに微笑みながら、「引き受けた以上は、自分のポリシーで好きな作品を選びたい。作品の規模、興行成績、作った会社の規模、監督の評判、そういったものは関係なく、クリエイティブで情熱が感じられる、おもしろい作品を選びたい」と決意表明。さらに「アニメファンがいっぱい集まる、楽しいイベントになれば最高。また業界の人間にとっては、普段会うこともない監督同士が会ったり、話してみたいアニメーターと会ったりという、交流の場になれば。メリットのあるイベントになってほしいと思っています」と期待を寄せた。

「第1回新潟国際アニメーション映画祭」記者会見の様子
「第1回新潟国際アニメーション映画祭」記者会見の様子

堀越は、開催地となった新潟について言及した。新潟は、多くの著名なマンガ家、アニメ・クリエイターを輩出してきた。堀越は「新潟では、約30年の間に3000人のアニメスタッフ、マンガのクリエイターを育成してきた」と人材育成としても、常に先導的役割を果たしてきたという。なおかつ2012年から10年間、マンガ・アニメ文化の振興と、地域産業の活性化を担うべく「マンガとアニメを活用した街づくり構想」を実施。継続的なイベントとして「にいがたアニメ・マンガフェスティバル」(来場者約5万人)、1996年からは全国対象で「にいがたマンガ大賞」も行うなど、日本有数の熱烈なアニメ都市として歩みを進めてきた。堀越は「批評精神や豊かな想像力が、市民のなかに生まれてきている。そういう土壌を持った新潟だからこそ、この映画祭をやる意味がある」と力を込めていた。

第1回新潟国際アニメーション映画祭は、2023年3月17日(金)〜22日(水)の6日間、新潟市民プラザを中心に、開志専門職大学、T・ジョイ万代橋(予定)、シネウィンドの4拠点を会場として開催される。部門としては、長編部門(コンペティション)に加え、前年度の観るべき作品を集めた「世界の潮流」、アニメの進化に貢献した人と作品を集めた「アニメーションの未来」、マンガとアニメの関係性を探る「マンガの視線」、作家やムーブメントの再評価をする「レトロスペクティブ」をはじめ、セミナーや育成プログラムも予定されている。

取材・文/成田おり枝

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