南沙良、ミニシアターを巡る Vol.22 シネマ・ジャック&ベティ(後編)|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
南沙良、ミニシアターを巡る Vol.22 シネマ・ジャック&ベティ(後編)

コラム

南沙良、ミニシアターを巡る Vol.22 シネマ・ジャック&ベティ(後編)

「DVD&動画配信でーた」と連動した連載「彗星のごとく現れる予期せぬトキメキに自由を奪われたいっ」では、私、南沙良がミニシアターを巡り、その劇場の魅力や特徴をみなさんにお伝えします。第22回は横浜市にある「シネマ・ジャック&ベティ」さん。支配人の梶原俊幸さんとの対談の模様をお届けします!

【写真を見る】南沙良が横浜のミニシアターの魅力を紹介
【写真を見る】南沙良が横浜のミニシアターの魅力を紹介撮影/河内彩 スタイリング/武久真理江 ヘアメイク/竹内未夢

「ジャックとベティは、英語の教科書の名前から取りました」

南「2つのスクリーンに“ジャック”“ベティ”と名前がついてるんですね。内装もおしゃれ!」

梶原「開館は1991年。バブルのころなので、こだわりの設計なんです。同じ場所に1952年開館の横浜名画座があったんですが、その時は1スクリーンでした。建て直したときに効率性を重視して2スクリーンにしたんです。当時ジャックはチャンバラや西部劇など男性向け作品を、ベティはラブストーリーやロマンスなど女性向け作品を上映していました。カップルで来て、それぞれ別の作品を観て、終わったらまた合流して横浜デートを続けましょうと」

南「いい提案(笑)。でもジャックとベティっていったい誰ですか?」

梶原「昔の英語の教科書に出ていた登場人物名ですよ。誰でも知っている横文字の男女の名前です」

「シネマ・ジャック&ベティ」支配人の梶原さんと
「シネマ・ジャック&ベティ」支配人の梶原さんと撮影/河内彩

南「なるほど…。ところで、梶原さんは支配人になる前まで映画とは無関係の仕事をされていたと聞きました。どういった経緯で?」

梶原「僕は吉祥寺育ちでして、初めて黄金町に来たのは社会人になってからなんです。学生時代の友人が横浜で働いていた関係で遊びに来るようになり、ジャック&ベティを知りました。その後、その友人たちと一緒に黄金町の街づくり活動に関わるようになったんです。昔から“危ない街”とか“風俗街”のイメージがある黄金町を、文化、芸術の街として活性化させようと」

南「文化、芸術の街なんですか」

梶原「かつてこの地域は横浜随一の映画館のメッカだったんです。黄金町だけで4館、関内駅からイセザキモールを通ってここまでなら30館も映画館がありました」

南「ええっ、そんなに!」

梶原「うちの向かいにも2005年まで横浜日劇がありました。『私立探偵 濱マイク』(94〜96)のロケ地です」

南「全然、知らなかったです」

2つのスクリーンはそれぞれ異なる設計なので、比べてみるのも楽しい
2つのスクリーンはそれぞれ異なる設計なので、比べてみるのも楽しい撮影/河内彩

梶原「ただ、街づくり活動の拠点にしていたジャック&ベティは2005年に一度閉館してしまい、別の会社が運営したんですが、あまりうまくいっていなくて。すると当時の運営会社さんから、『だったら君たちが運営をやっては?』と提案されたので引き受けました」

南「未経験なのに?」

梶原「はい。最初は苦労しました。当時は名画座興行で男性客が中心。だけど女性のお客様にも来てもらいたかったので、シネスイッチ銀座やBunkamura ル・シネマでやっているような作品もかけるようにしたら、徐々に女性客も増えていったんです」

南「そんな新生ジャック&ベティで最もヒットした作品は?」

梶原「若松孝二監督の『キャタピラー』(10)です。若松監督って、ご自分で劇場に営業するんですよ」

南「どういうことですか?」

梶原「主演の寺島しのぶさんがベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞されてTVでも大々的に報道されたんですが、その翌々日くらいに監督が電話で『TV見た?やるよね?やるよね?』って」

南「それは断れませんね(笑)」

梶原「初日舞台挨拶にも来ていただいて、大盛況でした」


お客さんとのコミュニケーションツールでもある、映画のリクエストボード
お客さんとのコミュニケーションツールでもある、映画のリクエストボード撮影/河内彩

南「では最後に、この劇場最大の事件を教えていただけますか」

梶原「私が来る前の話ですが、かつて上映中にスクリーンが切りつけられる事件がありまして」

南「若松監督のいいお話で終わっておきましょうか(笑)」

取材・文/稲田豊史

●シネマ・ジャック&ベティ
公式サイト https://www.jackandbetty.net/
住所 神奈川県横浜市中区若葉町3-51
電話 045-243-9800
最寄駅 黄金町駅/阪東橋駅

●南沙良 プロフィール
2002年6月11日生まれ、東京都出身。第18回ニコラモデルオーディションのグランプリを受賞、その後同誌専属モデルを務める。
女優としては、映画『幼な子われらに生まれ』(17)に出演し、デビュー作ながらも、報知映画賞、ブルーリボン賞・新人賞にノミネート。2018年公開の映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』(18)では映画初主演ながらも、第43回報知映画賞・新人賞、第61回ブルーリボン賞・新人賞、第33回高崎映画祭・最優秀新人女優賞、第28回日本映画批評家大賞・新人女優賞を受賞し、その演技力が業界関係者から高く評価される。2021年には、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2021のニューウェーブアワードを受賞。
最近の主な出演作に『ゾッキ』(21)、『彼女』(21)、『女子高生に殺されたい』(22)、MIRRORLIAR FILMS Season3『沙良ちゃんの休日』(22)、TBSドラマ「ドラゴン桜」、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」など。待機作に『この子は邪悪』(9月1日公開)などがある。
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