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「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022」で、飛翔する監督たちの新作3本から国内コンペ作品14作を一挙紹介!

コラム

「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022」で、飛翔する監督たちの新作3本から国内コンペ作品14作を一挙紹介!

個性あふれる国内コンペティション部門短編8本はハシゴ観したい

160本のなかから短編部門にエントリーされたのは、短尺ながらも研ぎ澄まされた感性が光る8本となった。コロナ禍ということで、なかには国をまたいでの制作、撮影の苦労が伺える作品もあったよう。短編なので、ぜひ秀作群をハシゴして観ていただきたい。

心奥の葛藤を体現『しかし、それは起きた。』

『しかし、それは起きた。』
『しかし、それは起きた。』[c]吹田祐一

ある教師は3つの問題を抱えていた。1つは自分の子どもが部屋から出てこなくなったこと、もう1つは学校の屋上から飛び降り自殺をした子どもがいたこと、さらにその子どもが、自分が担任をしているクラスの生徒だったこと。本作は『美しき日本の朝』(11)や『彼女が死ぬと決めた日』(13)などの短編が海外の映画祭で上映された俊英、吹田祐一監督作で、15分の尺ながら、台詞や説明を最小限に留め、ラストショットまで緊張感を途切れさせない。

三者三様の思惑がもつれ合うダークコメディ『似ている』

『似ている』
『似ている』

世界的な広告賞を取ったデザイナーの田中が働く会社に、旧友の有作が面接にやってくる。そこで有作が見せた絵が、田中の受賞作と酷似していたことで社内は大混乱になる。音楽や環境問題を題材にしたドキュメンタリー、企業広告など、幅広いジャンルの映像制作に携わってきた木村輝一郎監督の作品で、三者三様の思惑がもつれ合うダークコメディとなっている。有作役のミネオショウと、切れ味鋭い有作の妻、栄美役の森レイ子の掛け合いにも注目。

男女の狡猾さを描く『ウィーアーデッド』

『ウィーアーデッド』
『ウィーアーデッド』[c]NOTHING PRODUCTION

売れない芸人のレイジは会社員のナナセと同棲中だが、将来を案じながらも互いに別れを切り出せずにいる。ナナセは新しく会社に入ってきたシュンに口説かれるが、彼を利用して自分の気持ちを確かめようとする。倦怠期のカップルが抱える悩みをいきいきと描きだしたのは、前作『私が神んなる前の話』(20)でも全員片想い状態の男女4人の恋愛物語を切り取った野呂悠輔監督だ。ダメ男のレイジ役を、子役からキャリアを重ねる塩顕治が演じる。

実体験を基に映画化、是枝裕和監督らの指導によって生まれた1作『こねこ』

『こねこ』
『こねこ』[c]映像制作実習2021

高校生になった石松りんは、友達を作るために大好きな読書をやめるが、登校初日に出会った玲と一緒に図書委員をすることに。ある日、下校中に子猫を見かけたりんは、玲から謎の質問を投げかけられる。本作は、是枝裕和監督、篠崎誠監督らが指導教員を担当する早稲田大学基幹理工学部の映像制作実習作品。山口あいり監督の体験を基にした本作では、大人になるに連れ、素直に自分の気持ちを言えなくなっていくせつなさや、他者の心を推し量ろうとする善意や危うさが詩情豊かに綴られている。

「映像作家100人」に選出された監督によるモノクロアニメーション『サカナ島胃袋三腸目』

『サカナ島胃袋三腸目』
『サカナ島胃袋三腸目』[c]2022 Moe Wakabayashi

豚のとん吉は、巨大な魚の腹の中でさかな子に出会い、おたまじゃくしの坊やを授かる。家族は穏やかに暮らしていたが、ある日、漂着した果実をとん吉と坊やが口にしたことで、生活は一変する。なんとも突飛な設定の本作を手掛けたのは、学生時代からMVやCDジャケットデザインなどを手掛けてきた若林萌監督。東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻在籍中の2020年には「映像作家100人」に選出された。本作でも奇抜なセンスが冴えわたる。

台湾で制作された短編ホラー『喰之女』

『喰之女』
『喰之女』[c]SWALLOW Film Partners.

女優として成功することにすべてを注ぐシューランは、ある日女優仲間のミミから招待制の晩餐会に誘われる。10年前から変わらないミミの美貌の秘密が、そこでの食事に隠されていると期待するシューランだったが…。高雄市電影館の助成プログラムを受けて制作された本作は、中西舞監督が台湾で作り上げた、背筋がゾッと凍るような完成度の高いスリラー。欲望に取り憑かれた人間の恐ろしさをシャープな演出で描き、最後まで目が離せない。

トランクルームを舞台に、コロナ禍の閉塞感を描く『ストレージマン』

『ストレージマン』
『ストレージマン』[c]MANTRIX PICTURES

自動車工場の派遣社員である森下は妻と娘の3人暮らしだったが、コロナ禍で派遣切りに遭い、職を失う。妻からは離婚を、会社からは社宅の立ち退きを迫られた森下は、仕方なくトランクルームで生活を始める。コロナ禍の閉塞感をリアルに描く本作の監督を手掛けたのは、経済情報メディアNewsPicksやNHKワールドの経済番組を演出してきた萬野達郎。『47RONIN』(13)の米本学仁や、渡辺裕之が脇を固め、古坂大魔王も声優として参加している。

中国の自然風景をバックに、思春期の少女と末期がんの中年女性の友情を描く『清風徐来』

『清風徐来』
『清風徐来』

両親の都合で引っ越すことになったズイ。不機嫌な娘が唯一心を開いたのは、父親の元同僚で、がんを患ったフィンだった。中国杭州の美しい景色をバックに、思春期で鬱屈としている少女と、末期がんを患う中年女性の友情を描きだしたのは、中国の大学を卒業後、日本で大学院に進んだ盧明慧監督。盧はコロナ禍で中国からリモートで研究を進めたが、その後戻った日本で卒業制作の準備を進めるうちに、蘆自身の経験に着想を得た本作を、中国で撮影した。


第19回SKIPシティ国際Dシネマ映画祭が開催
第19回SKIPシティ国際Dシネマ映画祭が開催

日本映画から日本と他国の合作映画まで、バラエティあふれる新進気鋭の監督作がずらりラインナップされた国内コンペティション部門に乞うご期待。なお、「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022」の上映チケットは日時および座席指定券となり、1回の上映につき、1枚のチケットが必要となるが、コンペ作品のフリーパスもも現在発売中。また、オンライン配信は単品レンタルと見放題プランを選べられる。詳しいチケット情報、各上映のスケジュール詳細は公式ホームページでチェックしてほしい。

文/山崎伸子


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■SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022
日程:【スクリーン上映】7月16日(土)~7月24日(日)、【オンライン配信】7月21日(水)~7月27日(水)
会場:SKIPシティ 彩の国 ビジュアルプラザ 映像ホールほか
内容:国際コンペティション、国内コンペティション(長編部門、短編部門) ほか
URL:http://www.skipcity-dcf.jp/
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