『プレデター:ザ・プレイ』の圧倒的"リアル"を見逃すな!ホンモノ志向で描かれる、アクションや文化描写|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
『プレデター:ザ・プレイ』の圧倒的"リアル"を見逃すな!ホンモノ志向で描かれる、アクションや文化描写

コラム

『プレデター:ザ・プレイ』の圧倒的"リアル"を見逃すな!ホンモノ志向で描かれる、アクションや文化描写

異星から来たハンターとの死闘を描いたアクション大作『プレデター:ザ・プレイ』がディズニープラス「スター」で配信中だ。本作はアーノルド・シュワルツェネッガー主演の『プレデター』(87)から始まった「プレデター」シリーズ最新作。アメリカ合衆国建国前の世界を舞台に、少女が最強の敵に挑む姿が描かれる。
1700年代初期のアメリカ大陸。偉大なハンターたちのなかで育ったコマンチ族の少女ナルは、いつしかハンターになることを夢見るようになっていた。そんなある日、彼女は大空を切り裂く巨大な炎を目撃。それは異星から飛来した巨大な宇宙船だった。

時代を超えて愛されてきた本シリーズはプレデターのド派手なバトルで高い人気を博してきたが、今作のキーワードは“リアル”。アクションからドラマまで製作陣がこだわり抜いた“ホンモノ志向”により、アクション・エンタテインメントの枠を超え観るものの心に響く作品に仕上がった。

宇宙最凶のハンター、プレデターとはいったい何者なのか?

高度な技術力と驚異的な身体能力を持つ狩猟民族、プレデター(『プレデターズ』)
高度な技術力と驚異的な身体能力を持つ狩猟民族、プレデター(『プレデターズ』)[c] 2022 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.ディズニープラス「スター」で配信中

プレデターは断続的に地球にやってくるエイリアン。昆虫のような頭部を持つヒト型の生物で、高度な科学力だけでなく圧倒的パワーや木々の上を跳びまわる高い身体能力を持っている。彼らの目的は狩猟。高い戦闘力を持つ生物を見つけては戦いを仕掛け、狩った獲物の頭蓋骨を持ち帰るいわゆるトロフィー・ハンターだ。第1作ではグアテマラのジャングル、第2作『プレデター2』(91)と第4作『ザ・プレデター』(18)は市街地、第3作『プレデターズ』(10)は未知の惑星、そして「エイリアン」シリーズとのクロスオーバー『エイリアンVS.プレデター』(04)では南極を舞台に、兵士や刑事、犯罪者たちと激しい死闘を演じてきた。


彼らの武器は銃器類だけでなく、腕のガントレットに仕込んだリスト・ブレイド、スピア(槍)、獲物を切り裂くネットランチャーなどプラクティカルな装備も多い。熱探査や照準システム付きヘルメット、コンピュータ内蔵ガントレット、姿を周囲になじませる光学迷彩、応急キットなど凝ったガジェットも魅力で、今作でもそれらを駆使してコマンチ戦士を翻弄する姿が描かれた。シリーズを通し種族や目的の違うプレデターが登場したが、今作は原点回帰を思わせる狩猟に特化したタイプ。荒野や山岳地帯など大自然のなか、コマンチや白人入植者に容赦なく戦いを仕掛けていく。

狩りを目的に生きるプレデター。グロテスクな造形は見るも恐ろしい(『プレデター:ザ・プレイ』)
狩りを目的に生きるプレデター。グロテスクな造形は見るも恐ろしい(『プレデター:ザ・プレイ』)[c] 2022 20th Century Studios

一切の妥協なし!コマンチ族の“リアル”描写

今作でプレデターのターゲットにされるのがネイティブ・アメリカン、コマンチ族のハンターたち。第1作でもネイティブ・アメリカンの血を引く傭兵ビリー(ソニー・ランダム)が見せ場を作っていたが、今作は製作にあたり「可能な限りコマンチを正確に描くこと」がテーマの一つに掲げられた。実は本作のプロデューサーのひとり、ジャーン・マイヤーズはコマンチ族の末裔。さらにマイヤーズら製作陣は、主人公ナル役にネイティブ・アメリカンの血を引くアンバー・ミッドサンダーを起用し、ナルの兄タアベ役に新人ダコタ・ビーヴァーズを抜擢したほか、コマンチを演じた俳優はネイティブ・アメリカンの俳優からキャスティングされた。

ナル役のミッドサンダー(右)、ナルの兄・タアベ役のダコタ・ビーヴァーズ(左)もネイティブ・アメリカンの血を引く(『プレデター:ザ・プレイ』)
ナル役のミッドサンダー(右)、ナルの兄・タアベ役のダコタ・ビーヴァーズ(左)もネイティブ・アメリカンの血を引く(『プレデター:ザ・プレイ』)[c] 2022 20th Century Studios

制作にあたりスタッフは、コマンチの研究家ジャニータ・パードポニー監修のもと彼らの文化を綿密にリサーチ。衣装や武器など小道具、住居など美術をはじめ、薬草作りや歯磨き、植物をより合わせた縄作り、手話による合図などシーンの端々にさりげなくコマンチの風習や暮らしが挿入された。冒頭のナレーションの一節をコマンチ語にしたほか、セリフにもコマンチの言語や単語を組み込んでいる。エンドロールで流れる素朴なアニメーションは、ネイティブ・アメリカンの絵画アートをベースにデザイン。スタイルや様式に加え、大量のバッファローの死体に祈りを捧げるナルを通しコマンチの死生観を垣間見せるなど、こだわりは内面描写にも及ぶ。

文化や言語を含めアリカラ族を忠実に描いた『レヴェナント:蘇えりし者』(15)や、衣装や小道具、建築物はもちろん全編マヤ語を使ってマヤ文明を再現した『アポカリプト』(06)などに引けを取らない徹底ぶり。「プレデター」シリーズという冠に頼ることなくクオリティを追求した結果は、そのまま作品に見てとれる。なお映画は完成を待たずに逝去したコマンチ監修パードポニーにも捧げられた。

コマンチ族の住居や生活用品も、徹底した監修のもとに再現している(『プレデター:ザ・プレイ』)
コマンチ族の住居や生活用品も、徹底した監修のもとに再現している(『プレデター:ザ・プレイ』)[c] 2022 20th Century Studios

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