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諸星大二郎、クトゥルフ神話、霊体ミミズ…白石晃士が語る、POV回帰作に詰まった“白石ワールド”の全貌

インタビュー

諸星大二郎、クトゥルフ神話、霊体ミミズ…白石晃士が語る、POV回帰作に詰まった“白石ワールド”の全貌

「キャッキャ言いながら、『グーニーズ』大人版のような感覚で楽しんでほしい」

――名作ホラーからの引用について伺います。カメラにナイフをつけるアイデアは『血を吸うカメラ』へのオマージュのように感じました。

「ナイフをカメラに装着することを思いついた時は、『血を吸うカメラ』を思い出しましたが、そこから引っ張ってきたアイデアではありません。あの状況をどのようにクリアするべきかと考えたときに、偶然『血を吸うカメラ』の設定とリンクしただけです。しかしカメラにナイフをつけるという犯罪者の心情に思いを馳せた時の私の心境は、当時のマイケル・パウエル監督の心境に近かったかもしれません。ただ彼はその後、不遇な映画人生を歩んでいるので、そこはリンクしたくないですね(笑)」

――劇中に登場するバケモノのヴィジュアルも個性的です。アイデアの源は?

「ベースにあるのは、生命の根っこを感じられる原始的な生命感と深海生物です。『遊星からの物体X』のクリーチャーからの影響もあります。また近年は信じがたいほど珍しい形をした深海生物がどんどん発見されているので、それらを参考にしていくつかのバケモノは作り上げました。今回の挑戦は深海生物のヴィジュアルを意図的に取り入れたことです」

白石ワールドの根底には、深海生物からの影響も
白石ワールドの根底には、深海生物からの影響も撮影/興梠 真穂


――ホラーなのにユーモラスな作りも白石晃士印と言えそうです。

「『死霊のはらわた』のように、怖いけれどカラッとした笑いがあるものが好きで、たとえホラー作品であっても、ユーモアは欠かせないと思っています。今作も怖い要素はあるけれど可愛らしい作品であると言えます。『ようこそ』というタイトルにもユーモアを含ませています。ホラーなのに昼のシーンのみで構成したのも、怖がりながら観てもらうというよりも、キャッキャ言いながら観てほしいという思いがあるからです。バケモノは出るけれども、『グーニーズ』大人版のような感覚で楽しんでほしいです」

「POV酔いするお客さんは、でんぐり返しをして三半規管を強くしてください(笑)」

――「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」から時間も経過しています。制作上の進化や変化はありましたか?

「そこまでの進化はなくて、時代が変わっても手法は変わりません。現在は機材のレベルやCG技術が向上して色々なことができるようになりましたが、この作品ではあえて逆の超アナログのやり方をしています。たとえ映像がぶれていても、勢いで見せる。現行の最新技術とは逆行していますが、子どもがカメラをぶん回して撮ったような原始的な映像作品にすることで、逆に新鮮味を感じてもらえるのではないかと思います」

――POV作品のメリットとデメリットを教えてください。

「メリットは臨場感ある仕上がりになること。また自分でカメラを回して演技もしているので、その場で空気をコントロールして本番中にアクセントをつけることができる。役者さんも近くにいるので、コミュニケーションも密になります。デメリットは手振れ映像が多いので映像酔いするお客さんが出てくること。でもこれは三半規管を鍛えていただければクリアできる問題なので、自宅ででんぐり返しをして三半規管を強くしてください。ちなみに私はPOV作品を作り過ぎているせいからなのか、ちょっとやそっとのブレブレ映像では酔いません!」

白石晃士が演じる黒石光司
白石晃士が演じる黒石光司[c] 2022WOWOW・KADOKAWA・ひかりTV

――今回、POVホラーを久々に手掛けられたわけですが、新たなシリーズ化の構想は?

「自分としては『オカルトの森へようこそ』はこれで完結をしています。しかし続編の要望があって、なおかつ予算アップなどがあれば前向きに考えたいです。また、『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』の続きはいつかやりたいと思っていますので、それはそれでご期待ください」

――ちなみに白石監督はYouTubeチャンネルを立ち上げていらっしゃいますよね。でもその内容は監督自身が筋トレしながらお気に入り映画を紹介するという変わったもので、本当の意味での「コワすぎ!」な雰囲気が漂っています。あの映像にはどのような意図があるのでしょうか…?

「ワハハハハ!私自身、視聴者がどういう感覚で観ているのかと思いますよ(笑)。あのチャンネルの動画は単純に自分の趣味を見せているだけですから。私が筋トレしているだけだと退屈でしょうから、そこに自分の好きな映画紹介トークをしていればYouTubeっぽいかなと。ギックリ腰も治って撮影も再開していますので、こちらも是非ご覧ください!」

今後のPOVホラー作への期待も高まる!
今後のPOVホラー作への期待も高まる!撮影/興梠 真穂

「WOWOWオリジナルドラマ オカルトの森へようこそ」の放送済みエピソードは、WOWOWオンデマンド、ひかりTVにて配信中。8月27日(土)からは、短編映像『訪問者』を追加した劇場版『オカルトの森へようこそ THE MOVIE』も公開となる。

取材・文/石井隼人

※記事初出時、作品名表記に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

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