伊坂幸太郎を愛する書店員&映画のプロが『ブレット・トレイン』を絶賛! 「見事な伏線回収」「リスペクトを感じた」 - 3ページ目|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
伊坂幸太郎を愛する書店員&映画のプロが『ブレット・トレイン』を絶賛! 「見事な伏線回収」「リスペクトを感じた」

コラム

伊坂幸太郎を愛する書店員&映画のプロが『ブレット・トレイン』を絶賛! 「見事な伏線回収」「リスペクトを感じた」

文学に造詣が深い評論のプロたちは『ブレット・トレイン』をどう観た?

最後に、テレビ、ラジオといったメディアでも活躍する映画評論家・松崎健夫と、伊坂幸太郎をはじめ作家へのインタビューや書評、構成などを行うライター・吉田大助による、映画のプロたちによる『ブレット・トレイン』評も紹介したい。

松崎は、「偶然と偶然が予想外の人間関係を紡ぎ、バラバラだったエピソードをひとつに集約してゆく鮮やかな結末。そんな爽快感が伴う筆致は、<伊坂幸太郎ワールド>の魅力だ」と伊坂の作家性を語る。「『ブレット・トレイン』でも、散りばめられた数々の伏線が忘れた頃に思わぬ形で回収され、偶然が必然へと変容してゆく痛快さがある。今作の主役は殺し屋たちだが、伊坂幸太郎は、泥棒、強盗、ギャングといった悪党を好んで描いてきた作家。重要なのは、<伊坂幸太郎ワールド>に流れる“悪党なりの正義”の痕跡が、ブラッド・ピット演じるレディバグの姿にも窺える点にある」と、書店員たちも口を揃えた伊坂の伏線力が、たしかに映画のなかにも見られることを評価している。

ブラッド・ピット、サンドラ・ブロックなど、ハリウッド映画ならではの豪華キャストたちの演技合戦は必見!
ブラッド・ピット、サンドラ・ブロックなど、ハリウッド映画ならではの豪華キャストたちの演技合戦は必見!

吉田は、「自らが生み出した物語の舞台において、起こり得るすべてのおもしろさの可能性を、あますことなく追求する。言い換えるならば、作り手がその舞台でとことん遊び尽くす。伊坂幸太郎が小説『マリアビートル』で発揮した作家性の真髄は、映画『ブレット・トレイン』にも受け継がれている。『立ったままでは、遅かれ早かれ、注目を集める。(中略)座ったまま誰かと戦うことなど、はじめての経験だった』という原作の文章を活かした結果、映画史に燦然と輝くことになったかつてないアクションシーンの数々もすばらしい」と、製作陣が伊坂作品としての魅力を損うことなく、本作を作り上げた点を称賛。

狭い列車内の環境を活かしたアクションシーンも必見!
狭い列車内の環境を活かしたアクションシーンも必見!

そのうえで、「が、なによりグッとくるのは原作のミステリー的興奮を忠実に再現しつつ、オリジナルな展開を付与している点だ。その展開は、作品世界の外部に立って発想されたものではない。あくまで原作のなかに眠っていた『可能性の種』(原作のある場面で登場人物が口にするワード)を発掘し、発芽させ、それらを再構築するかたちで発想されている(ex.“王子”の素性)」と、ただ忠実に原作を映像化するのではなく、さらに作品を昇華させることに成功したと指摘している。「つまり、監督が、脚本家が、俳優が、スタッフが、映画ならではのアプローチの仕方で物語のおもしろさの可能性を新たに追求し、この舞台を遊び尽くしている。伊坂幸太郎作品を映画化するうえで、これ以上ないスタンスで作られた逸品だと思う」。


『ブレット・トレイン』は9月1日(木)より公開
『ブレット・トレイン』は9月1日(木)より公開

ハリウッドでの映画化によってド派手で一見するとふざけているような印象を受けるが、ファンの言葉からもわかるように、その根底にはしっかりと伊坂幸太郎のイズムが詰まっている『ブレット・トレイン』。不安を覚えている伊坂ファンは安心して劇場に足を運んでほしい。

文・構成/サンクレイオ翼


原作者・伊坂幸太郎への愛があふれる!『ブレット・トレイン』特集【PR】
作品情報へ

関連作品

  • ブレット・トレイン

    3.8
    3648
    伊坂幸太郎のベストセラー小説「マリアビートル」を、ブラッド・ピット主演で映画化
    Amazon Prime Video U-NEXT