“国民の初恋”ペ・スジの力強き変貌…共感&物議を呼んだ韓国ドラマ「アンナ」で次なるステージへ|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
“国民の初恋”ペ・スジの力強き変貌…共感&物議を呼んだ韓国ドラマ「アンナ」で次なるステージへ

コラム

“国民の初恋”ペ・スジの力強き変貌…共感&物議を呼んだ韓国ドラマ「アンナ」で次なるステージへ

Amazon Primeで配信中の「アンナ」ディレクターズ・カット版(以降「アンナ」)が、女性層を中心に熱い支持を得ている。作品の出来映えはもちろん、ペ・スジがすさまじいまでの表現力で肉迫した主人公アンナの姿が、多くの共感を呼んでいるからだ。大手芸能プロダクションJYPが見出した女性アイドルグループMiss Aのメンバーとしてデビューしたぺ・スジは、これまでドラマと映画など幅広く活躍し続けてきた。韓国芸能界をリードするアイコンとして誰もが認める存在だった彼女だが、このドラマで俳優としての格をさらに上げたようだ。

「アンナ」は、ペ・スジが「主人公を演じたいと強く思った」と初めて貪欲に挑んだ作品だったという。そのフィルモグラフィーを紐解いてみると、彼女がこの作品でタイトルロールを担うに至った道のりが理解できる。

演技の自然さで“国民の初恋”と呼ばれた『建築学概論』

その自然体な魅力で“国民の初恋”と呼ばれたペ・スジ
その自然体な魅力で“国民の初恋”と呼ばれたペ・スジ[c]LOTTE ENTERTAINMENT

スジのスクリーンデビュー作は、韓国で公開当時に恋愛映画史上最高の410万人を動員した大ヒット作『建築学概論』(12)だ。建築家のスンミン(オム・テウン)は、大学時代の知り合いソヨン(ハン・ガイン)に再会する。そして彼女から故郷の済州島にある家を改築して欲しいと頼まれたことで、彼は二人が出逢った頃を思い出す。若き日のスンミン(イ・ジェフン)は、建築学概論の授業に顔を出していた音大生ソヨン(ぺ・スジ)に片想いをしていた。しかし、ある時ソヨンが先輩のジェウク(ユ・ヨンソク)と自宅へ入る瞬間を目撃してショックを受け、彼女を拒絶。そのまま離ればなれになってしまう。

【写真を見る】この爽やかな笑顔!スンミンとソヨンの初々しいカップリングは、いまでもグッとくる
【写真を見る】この爽やかな笑顔!スンミンとソヨンの初々しいカップリングは、いまでもグッとくる[c]LOTTE ENTERTAINMENT

イ・ヨンジュ監督曰く、この映画のテーマは「ソヨンとジェウクに起きたかもしれない“最悪の事態”を受け入れられず逃げてしまった、情けない男の反省文」だ。確かに、劇中では初めての恋に戸惑うスンミンのピュアさが光った一方で、二人の男性にモーションをかけているように描かれるソヨンは、イ・ヨンジュ監督自身にはその意図はなかったものの「女性は“漁場管理”(魚を飼うように何人もの男性をキープしておくこと)が上手い」という解釈もされたという。しかし、本作で“国民の初恋”という称号を得たように、スジの魅力は実際にクラスの隣りの席にいるような自然さだ。スンミンから別れを告げられてもなお、彼を待ち続けてしまう不器用もあった。駆け引きの上手い恋愛巧者というイメージは、特に男性の観客が持ったやや一方的なイメージに過ぎなかったように思う。

タブーを打ち破ったはずの女性唱者に訪れる苦い現実『花、香る歌』

伝説の女性パンソリ唱者の生涯を題材にした 『花、香る歌』
伝説の女性パンソリ唱者の生涯を題材にした 『花、香る歌』[c]CJ ENM

花、香る歌』(15)は、1867年を背景に、史上初めての女性パンソリ唱者となったチン・チェソンとその師匠シン・ジェヒョの生涯をモチーフした作品だ。チェソン(ペ・スジ)は幼い頃に妓楼に売られたが、偶然耳にしたジェヒョ(リュ・スンリョン)のパンソリの声に己の境遇を重ねて涙し、パンソリ唱者を目指す。当時歌い手になれるのは男性のみだったため、彼女は男装し、見事合格。しかしその先には、想像し得ない苦難が待ち受けていた。


男性に生まれなければパンソリ唱者になれなかった時代に、チェソンは才能を開花させていく
男性に生まれなければパンソリ唱者になれなかった時代に、チェソンは才能を開花させていく[c]CJ ENM

『建築学概論』ですでに証明されていたように、スジは寂しさや孤独を表情や体で絶妙に表現することに長けている。パンソリ唱者として厳しい修行にも耐え、腕前を上げていくチェソンは、時の権力者だった興宣大院君(キム・ナムギル)に正体が知られてしまう。彼に見初められたチェソンは、愛する師匠の命を救うため、大院君の物となる人生を選ぶ。スジは、分かりやすく強い感情表現ではなく、時代に翻弄されるチェソンの心の深淵を繊細に見せた。

過酷な修行に耐えて歌い手となったチェソンだったが、権力社会では人生を自由に選択できなかった
過酷な修行に耐えて歌い手となったチェソンだったが、権力社会では人生を自由に選択できなかった[c]CJ ENM

また、女性映画としても観るべきポイントがある。女性はパンソリを歌えないというタブーを破り唱者となったものの、チェソンは結局、男性の権力に屈しなければならなかった。この苦々しい結末は、女性がガラスの天井に阻まれる現実の社会構造に通じるものがある。

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