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アニメ化決定の「戦隊大失格」さとうけいいち監督に直撃!“アンチヒーロー”を描く意義と原作の魅力とは

インタビュー

アニメ化決定の「戦隊大失格」さとうけいいち監督に直撃!“アンチヒーロー”を描く意義と原作の魅力とは

「“笑える”、“カッコイイ”、“ダサい”を明確にして、コミックス以上に表現していく」

原作コミックスは、コメディ的なテイストでスタートしながら、ドラゴンキーパーという戦隊ヒーローの本性が見えることで垣間見える世界の怪しさと深遠さ、そして主人公である戦闘員Dの目的意識の変化などが物語を牽引していく。「僕の作品を『TIGER & BUNNY』しか知らない人は、コメディ好きだと思っているかもしれませんが、僕はサスペンスも好きなんですよ。作品の入りの段階ではコメディ要素が強いですが、劇中はカメラが戦闘員Dのところにいて、ずっと彼の心情を追いかけていくことになると思います。そんななか、戦闘員Dがやろうとしていることを通して、彼の想像とは違う方向に展開は裏切られていく。これがサスペンスになっているので、僕はその流れをより明確にしていくのを目指しています」。

その一方で、作品全体の構成についてバランスの難しさもあるとさとう監督は話す。「シリアスな展開を引っ張り過ぎると、お客さんがキャラクターの表層から『こんな重い話なの?』と意図することと違う方向に感じ取られる可能性もあるので、そこはある程度バランスを見ています。とはいえ、中途半端な見せ方だけはしたくないので、“笑える”、“カッコイイ”、“ダサい”っていう部分は明確に、コミックス以上に表現していくようになるかもしれません。あとは、サスペンスとしては湿っぽくならない、カラッとした方向で見せるような演出を考えています」。

「『戦隊大失格』で描くのは、道徳感からはみ出るもの」

アニメ化の際には、原作サイドから「アクションを盛り盛りに立ててください」とオーダーがあったという。「原作コミックスの3巻くらいまで読んだ段階では、意外とアクションを頑張らずに、人間ドラマなどでキャラクターの内面を追いかけていくサスペンスものにしていけばいいと思っていたんですけどね(笑)。『アクションもので』と言われると、そのオーダーには応えなくてはならない。僕自身は、アクションものを撮ってきた自負もありますし、そういう印象を持たれるのも納得です。ただ、あんまりやり過ぎてしまうと『戦隊大失格』という舞台装置が格好良くなりすぎてしまって、原作のイメージとは違うものになってしまいそうで、そちらに行きすぎないようするにはどうしたらいいか、現在は悩んでいるところです」と、複雑な物語と原作のイメージをどう落とし込むかの苦労をさとう監督は明かす。

現代の不安を反映させた“アンチヒーロー”たちの群像劇『ウォッチメン』
現代の不安を反映させた“アンチヒーロー”たちの群像劇『ウォッチメン』[c]EVERETT/AFLO


そして、作品を構築するなかで重要なのは、“アンチヒーロー”というキーワードだそう。「“アンチヒーロー”というのは、一般的な方々のなかに“ヒーロー”に対する耐性が揃ったから出来ることだと思うんです。僕の世代だと、ウルトラマンや仮面ライダーが世の中に生まれてきたタイミングで、その時にはほかに比べるヒーローの存在はほとんど無かったんです。マーベルやDCでは70年代から80年代にかけて恐ろしいくらいのヒーローが生まれてチームを組んだりするわけですが、日本はまだ“ロンリーヒーローもの”、いわゆる『ひとりで頑張るぞ』という作品がメインで、必ず“善”の道徳観に引っ張られていたんです。それが、ヒーロー番組のタイトルとしての具材がある程度揃うと、『そろそろ違うことを考えたいよね』という思いが、作り手から出てくる。僕が『TIGER & BUNNY』を作ろうと思った理由も同じことなんです」。

「そして、『TIGER & BUNNY』というアンチヒーロー的な作品を考えた時にも、『戦隊大失格』と同じように、日曜朝の特撮番組をひっくり返すことをイメージしていたんです。以前に撮った『鴉-KARAS-』も、『NYにはスパイダーマン、ゴッサムシティにはバットマンと街を守るヒーローがいるけれど、日本にはないな』と思って作りました。僕自身はこれまでヒーローものでは道徳観のあるものをやってきているので、今回の『戦隊大失格』は道徳感からはみ出るようなものを描こうとしています。それに対する向き合い方のポイントは、シンプルに言うと“カッコイイ悪”なんです。ここで重要なのは、戦闘員Dが“悪”として筋を通している部分。ここがブレると格好悪くなるので、原作よりも立てて描いていくつもりです」。

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