赤坂アカが明かす、「かぐや様は告らせたい」7年半で迎えた完結への感慨。白銀やかぐやたちに伝えたい「またね」 - 3ページ目|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
赤坂アカが明かす、「かぐや様は告らせたい」7年半で迎えた完結への感慨。白銀やかぐやたちに伝えたい「またね」

インタビュー

赤坂アカが明かす、「かぐや様は告らせたい」7年半で迎えた完結への感慨。白銀やかぐやたちに伝えたい「またね」

「『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズから、影響を受けています」

ギャグとシリアスを絶妙なバランスで描く本シリーズ。赤坂は、そういった作風に影響を与えた映画があると打ち明ける。「本作は、ロジックと理詰めで作っている作品。僕は伏線がきれいに回収される作品が好きなんです。そういった意味で影響を受けたなと思うのは、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズです」とロバート・ゼメキス監督によるタイムトラベルSFの傑作をあげ、「『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は何度も観てしまうし、伏線の張り方、回収の仕方も見事。『かぐや様は告らせたい』ってこれまでにあった話をなぞらえる感じの展開もあるんですが、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズのセルフオマージュを繰り返していくやり方には、だいぶ影響を受けていると思います」と語る。

SF映画の金字塔となった『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85)
SF映画の金字塔となった『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85)写真:EVERETT/アフロ

テンポのよいギャグや、それを放つすべてのキャラクターが生き生きと躍動している点も、本シリーズの際立っているところだ。テンポに関しては、「漫才のテンションを大事にしている」のだとか。

赤坂は「『東京03』さんのコントが大好きで。『東京03』のコントって、人の醜いところや愚かなところを、掛け合いによっておもしろく見せていきますよね。人間の絶望や焦りが、どんどんおもしろく見えてくる。コントのなかに込められた感情が真に迫れば迫るほど、爆発力あふれるテンポを生んでいく気がしています」とその魅力に言及。

「『かぐや様は告らせたい』も、人間のずるいところや、醜い部分を描いている作品でもあると思っていて。たとえば白銀は聖人君子みたいな顔をして、性欲もちゃんとある(笑)。そういった部分も隠さず、肯定しながら描くことが本シリーズにとって大事だったのかなと思っています。かぐやも最初はキリッとした天才として出てきますし、そんな彼らがポンコツな部分をさらけだしていくことで、物語が楽しいものになっていく。キャラクターを壊していくことで意外性が生まれ、爆発力へとつながっていくんだと思います」と躍動感あふれるキャラクターを生みだす秘訣を明かし、「僕自身で描きながらも、一番ヤバい方向に進んでいったなと思うのは、伊井野ミコ。当初から『真面目な委員長キャラとして登場して、それを徐々に崩していこう』とは思っていましたが、まさかあそこまで崩れていくとは(笑)。本作で一番ヤバいのは、実はミコちゃんですから」と微笑んでいた。

「白銀やかぐやたちには、『またね』という気持ちです」

7年半の連載に幕を下ろした
7年半の連載に幕を下ろした[c]赤坂アカ/集英社

「かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜」は、2022年11月2日発売の「週刊ヤングジャンプ」49号で7年半の連載に幕を下ろした。「たくさん走ったなあ」と感慨を口にした赤坂だが、最終回まで走り切り、「キャラクターそれぞれの抱えている問題を、解決できたと思っています」と胸を張る。

ラブコメを主軸とした作品とはいえ、本シリーズから“誰かを好きになること”や、“助け合い生きること”の尊さを受け取った読者も多いはずだ。赤坂は「僕が漫画を描く際のモチベーションとなっているのが、『読者の方が漫画をパタンと閉じた時に、なにか現実世界に持ち帰れるものがある作品を描きたい』ということなんです。本シリーズは恋愛のお作法を描いた作品にもなっているし、現実世界を生きるうえでのお手伝いができる作品になったのではないかと思っています」と充実感もたっぷり。

アニメ化と共に実写映画化もかない、「アニメも実写映画も成功して、僕自身も成功して。描きたいものも描けた。本シリーズは、夢がかなった作品。読んだ人も、少しハッピーになれる作品になったのかなと思っていて。みんなが幸せになれる作品になったことが、とてもうれしい」としみじみ。「みんなを幸せにできたと思うと、今後の人生でちょっとぐらい悪さをしたとしても、最後は天国に行けるかな」とお茶目に笑うなど、清々しい気持ちで連載を終えた様子だ。


最終巻で描かれるのは、卒業式。かぐやと白銀が迎えるラストとは?
最終巻で描かれるのは、卒業式。かぐやと白銀が迎えるラストとは?[c]赤坂アカ/集英社

ツイッター上で、赤坂が作画をする漫画家を引退し、ストーリー製作に専念する“原作家”として活動していくと宣言したことも、大きな話題となった。今後の展望を尋ねてみると、「原作者として、実写やアニメ、小説など、オリジナル作品としていろいろなものにチャレンジしてみたいです。僕にはコメディ適性があると言われてきましたが、まだもっと向いているものがあるかもしれない」と意欲をみなぎらせながら、「都合がいい時には、漫画家と名乗ります。漫画を描くこともあるかもしれない」とも。「本シリーズのキャラクターとは、まだお別れじゃないだろうと思っています。描けばいつでもそこに現れるし、僕としては『またね』という気持ち。いつでも会えると思っています」と愛情を傾けていた。

取材・文/成田おり枝

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