今年の賞レースに絡む作品が一挙にお目見え!各地の批評家協会賞の受賞結果が続々発表|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
今年の賞レースに絡む作品が一挙にお目見え!各地の批評家協会賞の受賞結果が続々発表

コラム

今年の賞レースに絡む作品が一挙にお目見え!各地の批評家協会賞の受賞結果が続々発表

12月に入り、各地の批評家協会賞の受賞結果が出始めた。東海岸のNY、西海岸のLA、北米全土の批評家を集めたナショナル・ボード・オブ・レビュー、そしてアメリカの映画団体、アメリカン・フィルム・インスティチュートの結果から、今年の賞レースの傾向を占う。

1935年設立のNY批評家協会賞は、日刊紙、雑誌、オンライン媒体などで批評活動を行う約40名の批評家が選ぶ賞。昨年は『ドライブ・マイ・カー』(濱口竜介監督)を作品賞に選出し、その後の各賞受賞につながっていったことも記憶に新しい。今年の作品賞には、トッド・フィールド監督の『Tár(原題)』、監督賞に『RRR』のS.S.ラージャマウリ監督、アニメ映画賞にA24のストップモーションアニメ『Marcel the Shell with Shoes On (原題)』を選んでいる。

ドイツの有名オーケストラで、女性としてはじめて首席指揮者に任命されたリディア・ターの人生を描く『TÁR』
ドイツの有名オーケストラで、女性としてはじめて首席指揮者に任命されたリディア・ターの人生を描く『TÁR』[c]2022 FOCUS FEATURES LLC.

西海岸のLA批評家協会賞は1975年設立。新聞・雑誌、ラジオ、テレビ、オンライン媒体などで定期的に映画評論を行っている、ロサンゼルス在住の映画評論家約60名が会員に名を連ねる。LA批評家協会賞も昨年、作品賞と脚本賞に『ドライブ・マイ・カー』を選んでいる。今年の作品賞は『Tár』と『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が同時受賞、『Tár』は監督賞、脚本賞、ケイト・ブランシェットの主演俳優賞(『生きるLIVING』のビル・ナイと同時受賞)も受賞している。新人監督に与えられるニュージェネレーション賞は、フランス・カンボジア・韓国合作の『ソウルに帰る』のダヴィ・シュー監督と、主演のパク・ジミンに授けられた。

ごく普通の中年女性がカンフーマスターとなって世界を救う異色のアクションアドベンチャー『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
ごく普通の中年女性がカンフーマスターとなって世界を救う異色のアクションアドベンチャー『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』[c]A24 / Courtesy Everett Collection

NYもLAも、批評家集団が選ぶ賞だけあり、受賞傾向に個性が強く出ている。北米全土の批評家を集めたナショナル・ボード・オブ・レビューは、1909年設立の歴史ある団体による賞。主にNY近郊在住の映画関係者によるグループで、投票者の人数は明かされていない。今年の作品賞と撮影賞には、『トップガン マーヴェリック』を選び、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のミシェル・ヨーが主演女優賞、『イニシェリン島の精霊』のコリン・ファレルが主演男優賞。助演男優賞が同じく『イニシェリン島の精霊』のブレンダン・グリーソン、助演女優賞に『ナイブズ・アウト: グラスオニオン』のジャネール・モネイが選ばれている。

1986年公開『トップガン』の36年ぶりの続編で今年大ヒットを記録した『トップガン マーヴェリック』
1986年公開『トップガン』の36年ぶりの続編で今年大ヒットを記録した『トップガン マーヴェリック』[c]Paramount Pictures / Courtesy Everett Collection

映画芸術を支援する団体で、毎年11月にハリウッドで映画際を行ったり、付属映画学校も持つアメリカン・フィルム・インスティチュートは1967年設立。毎年、10本のアメリカ映画と10本のテレビシリーズを選出している。ハリウッドに近い映画関係者が選ぶ賞で、この賞に選ばれた作品とアカデミー賞作品賞ノミネートが重なることが多いために注目されている賞だ。今年は『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』と『トップガン マーヴェリック』『NOPE ノープ』が入ったことが注目されている。ドラマシリーズでは、各賞で評価の高い『アボット・エレメンタリー』や『ホワイト・ロータス』『ベター・コール・ソウル』のほか、『MO モー』『一流シェフのファミリーレストラン』『Pachinko パチンコ』といった新しい作品も選ばれている。この20作品と特別賞の『イニシェリン島の精霊』のキャスト・スタッフは来年1月に行われる祝賀ランチョンに参加する。

2009年公開し、全世界興行収入歴代1位の大ヒット作となった「アバター」の13年ぶりとなる続編『アバター ウェイ・オブ・ウォーター』
2009年公開し、全世界興行収入歴代1位の大ヒット作となった「アバター」の13年ぶりとなる続編『アバター ウェイ・オブ・ウォーター』[c]Walt Disney Studios Motion Pictures / Courtesy Everett Collection


今年の傾向は、どの賞も結果が異なり、本命が見つけづらいところ。これだけ受賞結果がバラエティに富んでいると、アカデミー賞に投票する会員も悩ましいところだろう。それが、アカデミー賞を主催する映画科学技術アカデミーが標榜する、多様性のある映画文化の姿なのかもしれない。

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