ASTROを愛するすべてのファンへ贈る。6人の原点がここにある『STARGAZER: ASTROSCOPE』をレビュー|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
ASTROを愛するすべてのファンへ贈る。6人の原点がここにある『STARGAZER: ASTROSCOPE』をレビュー

コラム

ASTROを愛するすべてのファンへ贈る。6人の原点がここにある『STARGAZER: ASTROSCOPE』をレビュー

12月23日(金)から31日(金)まで公開される映画『STARGAZER: ASTROSCOPE』。本作の主人公は、2016年にデビューした韓国の6人組アイドルグループ、ASTROだ。メンバーは年齢順にMJ、JINJIN(ジンジン)、CHA EUN-WOO(チャ・ウヌ)、MOON BIN(ムンビン)、ROCKY(ラキ)、YOON SAN-HA(ユンサナ)。2019年には日本デビューを果たし、国内でも高い人気を誇るグループである。

本作は、3年5か月ぶりに開催した3度目の単独コンサート「The 3rd ASTROAD to Seoul 'STARGAZER'」のステージとビハインドに、メンバーが胸の内を明かしたインタビュー映像を盛り込んだロードムービー。「3年5か月」。文字にすると改めて、その長さを実感する。

同コンサートのソウル公演(2022年5月28日・29日)前、5月9日にMJが現役入隊を果たした。ASTROは現在、ソロ活動やユニット稼働が中心となっており、AROHA(ASTROのファンネーム)は少々、寂しい時間を過ごしていることと思う。だからこそ、観てほしい作品だ。過酷な状況下でも、彼らはAROHAに最高のステージを届けるべく全身全霊を注いでいた。鑑賞後にはひとときASTROへの想いと寂しさが増すけれど、6人の原点はここにあると、映像から感じ取ることができる。

そしてAROHA以外にも、ASTROの魅力が伝わる内容だ。ステージへの熱意、高いパフォーマンススキルはもちろん、インタビューやソロステージから見える6人それぞれの個性。本稿では、ライブ映画さながらの迫力もぜひ体感していただきたく、公開に先駆けて本作の見どころをたっぷりレビュー。もちろん劇場で最大限この感動を味わえるよう、作品の核心については触れていないことは明記しておく。

“6人のASTRO”で作り上げた強み

冒頭、コンサートのリハーサル映像。MJ不在のため、5人バージョンに組み直したパートやダンスを身体に覚え込ませるメンバーたち。時間がない、不安、頭が真っ白――ジンジン、ラキは焦りを口にする。

今年5月に入隊したMJ。MJ不在のなか、メンバーが語る心境とは
今年5月に入隊したMJ。MJ不在のなか、メンバーが語る心境とは写真はASTRO(@officialastro)公式Instagramのスクリーンショット

チャウヌは冷静だ。葛藤さえ笑顔を浮かべて話してしまう彼だから、そうあろうとしているのかもしれない。ユンサナも、自身に言い聞かせるような正直な言葉で、限られた準備期間の心境を振り返る。それぞれに不安を抱えながらも「やるしかない」と、真剣な表情で練習に向かう。

ムンビンは、かつて「ASTROが6人であること」に抱いていた意外な想いを明かした。5人でステージに向かおうとしているいま「6人で作り上げた強み」について改めて気付かされたという。この言葉、そして「強み」がなにを意味するのか。観る者、ASTROを愛する者もまた、本編を通して気付くのではないだろうか。

ステージでのリハーサルが始まった。当時の心境を、ムンビンが感情を整理しながら振り返る。本作において、カメラに積極的に話しかけ、分かりやすい表現でメンバーの状況を教えてくれるのはいつもムンビンだった。彼が、メンバー全員にニックネームをつけるシーンがあるのだが、自身に付けた名をまさに体現している。

5人になったからこそ、「6人で作り上げた強み」を感じたというムンビン
5人になったからこそ、「6人で作り上げた強み」を感じたというムンビン[c]Fantagio,Kingkongenm,Wysenscene,Ktalpha,HIAN


演出においては、事故に繋がりかねない機構もある。ジンジンは、険しいほど真剣な表情を浮かべ、ステージの隅々までチェック。最高の公演ができるよう、気を張り続けていた。

そんなジンジンのプレッシャーを、ユンサナは理解していた。言葉にせずともメンバーは皆、分かっていたはず。インタビューでジンジンは、リハーサル時点で感じていたリーダーとしての責任を振り返り、メンバーと話し合ったことも明かした。彼にとって、多くを学んだコンサートだったようだ。

そして本番当日。ASTROは、驚くほど晴れ晴れとした表情を浮かべていた。リハーサルの雰囲気も、これまでとはまるで違う。「やるしかない」、冒頭から繰り返していた言葉と、いざ腹をくくれる強さ。それでこそASTROだ。

オープニングの立ち位置に向かう途中、ジンジンが感じたある喜び。その瞬間を振り返る表情には、AROHAへの愛おしさが見える。そして、ラキに芽生えた感情。彼は、それをそのままステージに連れて行った。チャウヌ、ムンビンは、彼らにしか見えない景色と感じ得ない思いを率直に語る。ユンサナはライブのオープニングでさえも、メンバーの様子を見ていたようだ。

いざ、コンサートが幕を開けた。「やってやる」と、アーティストが決意を決めた瞬間ほど、かっこいいものはない。映画前半で語られた焦燥や不安が嘘のような、プロフェッショナルなステージがそこにあった。

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