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イニャリトゥ監督が明かす、22年ぶりの故郷での映画制作と劇場公開への想い「映画館で観た映画は忘れ難いもの」

インタビュー

イニャリトゥ監督が明かす、22年ぶりの故郷での映画制作と劇場公開への想い「映画館で観た映画は忘れ難いもの」

「映画館で観た映画のクオリティは忘れ難いもの」

今作は、通常のNetflixオリジナル作品よりも長い期間劇場で公開されている。その理由についてイニャリトゥ監督は、「ルイス・ブニュエルは、『映画とは、演出された夢である』と言いました。私にとって、この作品は夢であり映画です。判然とした境界線はありません。Netflixは私に絶対的なサポートと自由を与えてくれただけでなく、この映画をメキシコで初公開したのちにアメリカの映画館で7週間にわたって公開すると約束してくれました。アメリカだけでなく、世界中の映画館で。支援と自由があるだけでなく、我々と同じように映画を愛し、人々に映画的な経験をさせるという寛大さを享受しました。私は、この映画が映画館にふさわしいものであると深く信じているので、このような特別な措置がなされ、祝福されることに深く感謝しています」と思いの丈を述べ、映画館への想いを連ねた。

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そして、「私の世代には、偉大な作家の映画を観ることができるアートシネマが存在していました。それとは別に、(イングマール・)ベルイマン、(フェデリコ・)フェリーニ、ブニュエルなど偉大な映画監督たちの作品をテレビやひどい画質のVHSで、トイレに行く時間も惜しんで観ていました。世界中のすべての映画を常にスクリーンに映し出すことは非常に難しいので、映画館の上映サイクルと選択に委ねられています。時流に逆らうことは不可能だと思いますし、ますます質の高い発展を遂げている新しいメディアに異議を唱えるのは難しいことです。ですが、映画館で観た映画のクオリティは忘れ難いものです」と、Netflixをはじめとする配信メディアへの考えを話した。

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この夢と自我の間を行き来する映画の屋台骨を支えた功労者として、『BIUTIFUL』『バードマン』『レヴェナント』と4作にわたり共同脚本を務めたニコラス・ヒアコボーネと、プロデューサーのステイシー・パースキー・カニス、美術監督のエウジェニオ・キャバレロの名を挙げた。「この映画は、私がこれまで作ったなかで最もコントロールされた映画です。絶対的で厳格、ほぼ強迫観念のようなものでした。即興的なものは一切なく、すべて最初から絶対的に構成されていました。ニコラスは、私のなかにバラバラで存在していた様々な要素を、非常に正確に脚本へと構築してくれました。


彼はほとんど私の専属セラピストでした。ステイシーが手掛けた一つ一つのロケーションが非常に精密だったおかげで、複雑で豊かな世界観を構築することができました。エウジェニオの美術は撮影手順、脚本、カメラの動きに完全に連動していて、まるで完全に振り付けされたバレエを踊っているようでした」と、今作はイニャリトゥ監督の心情と思想、夢と映画の間を、完璧なまでのコントロール下で再構築した映画だとしている。いままではストーリーテリングの強靭さが前面に出ていたイニャリトゥ監督作品だが、最新作ではストーリーやキャラクターを追うのではなく、圧倒されるような映像と音響に身を任せて感じるのに適した作品になっている。

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取材・文/平井伊都子

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