最後に描かれる真実の愛『レジェンド&バタフライ』、衝撃の急展開『イニシェリン島の精霊』など週末観るならこの3本!|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
最後に描かれる真実の愛『レジェンド&バタフライ』、衝撃の急展開『イニシェリン島の精霊』など週末観るならこの3本!

コラム

最後に描かれる真実の愛『レジェンド&バタフライ』、衝撃の急展開『イニシェリン島の精霊』など週末観るならこの3本!

週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!
週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!

MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、織田信長と、彼を支えた濃姫の知られざる30年を描いた時代劇、内戦が起きていた時代のアイルランドを舞台に、2人の男のせつない友情を描くドラマ、映画に出会い、映画に恋した少年が映画監督を志していく様子を描くヒューマンドラマの、人々の関係に心動かされる3本。

繊細な心を持つ信長を描いてみせた…『レジェンド&バタフライ』(公開中)

【写真を見る】『戦国自衛隊1549』(05)ぶりに濃姫を演じた綾瀬はるか(『レジェンド&バタフライ』)
【写真を見る】『戦国自衛隊1549』(05)ぶりに濃姫を演じた綾瀬はるか(『レジェンド&バタフライ』)[c]2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会

東映創立70周年記念の大作。戦国武将の中でも人気が高い織田信長の生涯を、妻、濃姫の視点から、彼の人間性にスポットを当てて描いている。物語は16歳の信長が濃姫と結婚して、49歳で本能寺の変で亡くなるまでを点描している。最初は見た目だけを気にして、行動力にも判断力にも欠ける信長が、勝ち気で武芸にも秀でた濃姫の影響によって、武将として開花していく前半は、会えば喧嘩ばかりする2人のラブコメディといった雰囲気。これが後半の信長は濃姫にも制御できない、大量殺りくも辞さない魔王になっていき、最後には濃姫への真実の愛へとたどり着く。

前半と後半で違った顔を見せる信長を木村拓哉が好演。彼を支える野生児のような濃姫を、綾瀬はるかがアクションも交えて見事に表現した。脚本の古沢良太は、若いころから魔王の片鱗を覗かせる「どうする家康」の信長とは違った、繊細な心を持つ信長を描いてみせた。大河ドラマと比べて観ても面白い1本だ。(映画ライター・金澤誠)

最後は人生の意味についても考えさせられる…『イニシェリン島の精霊』(公開中)

『スリー・ビルボード』(17)のマーティン・マクドナー最新作『イニシェリン島の精霊』
『スリー・ビルボード』(17)のマーティン・マクドナー最新作『イニシェリン島の精霊』[c]2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

5年前の『スリー・ビルボード』(18)でも賞レースを賑わせたマーティン・マクドナー監督。この新作もアカデミー賞で作品賞など8部門9ノミネートをはたしただけあって、思いもよらぬ角度から心をざわめかせる一本になっている。アイルランドの架空の島で、パブで一緒に飲み、語らうことが日課だったパードリックとコルム。しかしコルムが突然、絶交を宣言したことで、理由もわからないパードリックは戸惑う。壊れていく2人の友情関係に、島の住民の運命も絡んでいき…。

舞台は1923年。荒涼とした自然が広がるイニシェリン島の、のどかな日常。その中での親友2人の争いは最初こそ子どもの喧嘩のように取るに足らないものだが、脚本も手がけたマクドナー監督は衝撃的な急展開も用意する。最後の最後まで、物語がどう転んでいくのか予断を許さない。映画のムードも、サスペンス、ブラックなコメディ、人間ドラマ、ファンタジーと様々に変化。コリン・ファレルの素朴なパードリック役への誠実なアプローチ、ブレンダン・グリーソンが滲ませるコルムの複雑な内面など、俳優たちの演技にも引き込まれ、最後は人生の意味についても考えさせられる。(映画ライター・斉藤博昭)


ナリン監督の“映画の魔法”が堪能できる…『エンドロールのつづき』(公開中)

インドの田舎街で暮らしていた少年が映画監督になるまでの実話を描いた『エンドロールのつづき』
インドの田舎街で暮らしていた少年が映画監督になるまでの実話を描いた『エンドロールのつづき』[c]2022. CHHELLO SHOW LLP

初長編映画が世界の映画祭で高く評価されたインド出身監督パン・ナリン。本作は、ナリン監督が自身の体験をちりばめながら紡ぐ感動作だ。チャイ売りの少年が映画監督になる夢へと一歩踏みだす姿を、多様なハーブや野菜をふんだん使った地元グジャラート州の食文化と職業選択にも関わるカースト制度に目配せしつつ、たっぷりの映画愛とともに描きだしている。

本作が懐かしくも新しい印象なのは、主人公であるサマイ(パヴィン・ラバリ)の映画愛が物語ではなく“映写機”への興味から出発している点。生まれて初めて行った劇場で映写窓から差し込む光に魅了された彼は、映写技師のファザル(バヴェーシュ・シュリマリ)に映像投影の仕組みを教わりつつ、仲間の少年たちと試行錯誤を繰り返しながら日用品を使って簡易映写機を作り上げる。そうして出来た機材を使って自由な発想で行われた映画上映会は秀逸で、彼らの“ものづくりスピリット”にワクワクが止まらない。さらに本作では、冒頭からナリン監督が敬愛するリュミエール兄弟をはじめとする巨匠監督へのオマージュも満載!世界で一番の映画ファンの1人を自認するナリン監督の“映画の魔法”が堪能できる、いま観るべき珠玉作だ。(映画ライター・足立美由紀)

映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。

構成/サンクレイオ翼

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