『少女は卒業しない』で初主演。躍進を続ける俳優・河合優実が明かしたモットーは「映画を観る側であり続けること」 - 2ページ目|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
『少女は卒業しない』で初主演。躍進を続ける俳優・河合優実が明かしたモットーは「映画を観る側であり続けること」

インタビュー

『少女は卒業しない』で初主演。躍進を続ける俳優・河合優実が明かしたモットーは「映画を観る側であり続けること」

「高校時代に芽生えた『こういうことを仕事にしたいな』という想いや興味が、だんだんお芝居に傾いていった」

映画が映しだすまなみたちの世界は、河合自身にとっても遠くはない過去だったため、「卒業式のシーンでは、自分が高3の時のことを思い出しましたね」と、懐かしそうに目を細める。

4人の少女たちは、卒業を前に自信の想いと向き合おうとする
4人の少女たちは、卒業を前に自信の想いと向き合おうとする[c] 朝井リョウ/集英社・2023 映画「少女は卒業しない」製作委員会

「卒業式前日の、あの悲しいのかなんなのかわからないそわそわしている感じや、そんな気持ちを抱えた大勢の生徒が集まっている体育館の空気がすごくリアルで。私は当時、この映画に登場する軽音部の部長、神田(小宮山莉渚)に近い立場で、所属していたダンス部や、いろんな学校行事のまとめ役になることが多かったんです。特に体育祭では全学年で踊る伝統があって、お休みも返上して練習し、本番では百数十人で踊ったんです。あの高3の体育祭は本当に楽しかったですね(笑)」。

その喜びが、どうやら河合を現在の世界へと導いたようだ。「自分たちの作ったものを観た人が感動してくれるのが本当に楽しくて、うれしくて。その時に芽生えた『こういうことを仕事にしたいな』という想いや興味が、だんだんお芝居に傾いていった感じです」と述懐するが、それからわずか数年で、日本映画の話題作に次々に出演するような存在になるとは。そんな驚きを伝えると、「作品に恵まれるってこういうことなんだって思うぐらい、自分が思ってもいなかったところまで連れてきてもらったので、本当に運がいいなと思います」と謙虚な笑みを浮かべる。

河合演じるまなみと、彼氏である駿(窪塚愛琉)との瑞々しい掛け合い
河合演じるまなみと、彼氏である駿(窪塚愛琉)との瑞々しい掛け合い[c] 朝井リョウ/集英社・2023 映画「少女は卒業しない」製作委員会

その強運がいまなお続いているのか、『世界の中心で、愛をさけぶ』(04)を始めとした行定勲監督の作品を数多く手がける脚本家、伊藤ちひろの初監督作『ひとりぼっちじゃない』(3月10日公開)では、井口理(King Gnu)が演じる主人公の心を激しく揺さぶる強烈なキャラを怪演するなど、まだまだ話題作が控えている。

「映画を観る側であり続けるということ」


【写真を見る】唯一無二の空気をまとう河合優実。柔らかな陽射しが降り注ぐ街で、ロケ撮影を敢行
【写真を見る】唯一無二の空気をまとう河合優実。柔らかな陽射しが降り注ぐ街で、ロケ撮影を敢行撮影/垂水佳菜

さらに、昨年出演した海外の短編映画では日本の撮影現場との違いを目の当たりにし、大きな気づきを得たという。「単純に労働環境の違いです。こんなに余裕のある現場で作ったら、それはおもしろいものができる可能性が上がるのは当たり前だよなと思ったし、日本は逆に皆でクリエイティブに向かえる余裕がなさすぎると感じました。それと、海外のクリエイターは幅広い層の観客を想定して作っているけれど、日本は特定の狭い層をターゲットにした作品が多いような気がして。もちろん、それゆえに育ってきた独特の価値もあるんだろうけど、そこに偏るのはよくないなと思ったし、視野が広がりましたね」。

話を聞けば聞くほど彼女が着実にアップデートしているのが伝わってくるが、ブレずに守り続けたいものもあるようだ。「映画を観る側であり続けるということですね。こういう仕事をしていると、届ける側の視点になりがちなんですけど、ちゃんと映画館で感動するということを、これからも続けていきたいと思っているんです」。

取材・文/イソガイ マサト

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