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『マジック・マイク』最終作でソダーバーグ監督が目指したのは?「『ウエスト・サイド物語』に匹敵する作品にしたかった」

インタビュー

『マジック・マイク』最終作でソダーバーグ監督が目指したのは?「『ウエスト・サイド物語』に匹敵する作品にしたかった」

「私独自のやり方で、『ウエスト・サイド物語』に匹敵する作品にしたいと思いました」

サルマ・ハエックの魅力についても語ったスティーヴン・ソダーバーグ監督
サルマ・ハエックの魅力についても語ったスティーヴン・ソダーバーグ監督[c]2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

また、本作で出色の存在感を魅せたのが、マックス役のサルマ・ハエック。テイタムとのパッションに満ちたパフォーマンスは圧巻だった。
「私はいろいろな人たちに『観ている人は、人生になにを求めているのか』『ファンタジーになにを求めているのか』ということを聞きました。それで、彼らが求めるもの――安全で共感できて、少しミステリー要素もある空間を作りたいと思いましたが、そういうアイデアを生み出すための議論をしていくなかで、一番大きな影響を受けたのがサルマ・ハエックの存在でした。劇中でもマックスはショーについて尋問しますが、まさに彼女自身がいろいろと問いかける人でした。すなわちマックスが問いかけるシーンは、ほとんどサルマ自身のものであり、彼女がキャラクターとして見せたい部分は、彼女が最終的な判断を下していたと言ってもいいくらいです」。

公開中の『マジック・マイク ラストダンス』
公開中の『マジック・マイク ラストダンス』[c]2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

劇中で一番の見せ場となるのは、やはりラストのダンスショーだろう。「最後のダンスシーンは、いままで私が観てきた好きな映画のダンスシーンを踏まえて作り上げました。きっと誰も『ウエスト・サイド物語』の“アメリカ”のシーンを超えることはできないと思っていますよね。あれ以上複雑にするとバラバラになってしまうし、誰もあのダンスシーンを打ち負かせないとも思いますし、私自身もそこは認めています。でも、それに競合するようなダンスシーンを作りたいと自分なりに考えた時、“水のダンスシーン”を思いつき、マックスがマイクとの思い出を回想するシーンをダンスの合間に編集で取り入れました。ミュージカルでのダンスという直線的な流れに、直線的でない時間が流れるようにしたのです。それが私独自のやり方であり、『ウエスト・サイド物語』に匹敵する作品にしたいと思い、必死に作り上げました」。

【写真を見る】チャニング・テイタムらが鍛え抜かれた身体で、キレキレのパフォーマンスを披露!
【写真を見る】チャニング・テイタムらが鍛え抜かれた身体で、キレキレのパフォーマンスを披露![c]2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

『ウエスト・サイド物語』(61)以外で、参考にした映画について聞くと「ボブ・フォッシーの映画をよく観ていました。フォッシーの映画は、アメリカの監督でミュージカルを撮るのであれば、観なければならないと思っていましたので。特に『スイート・チャリティ』(68)や『キャバレー』(72)、『オール・ザット・ジャズ』(79)などを観ながら『僕はこの逆をやろう』とか反応しながら、自分のアイデアを探していました」と答えてくれた。


ソダーバーグ監督は3作目となる本作で、さらなる高みを目指した。「過去の2作でのアイデアは小さなものでしたが、それが段々と広がっていき、男女関係にもつながっていきます。1作目はマイクが男女関係に進むかな?というところで終え、2作目は関係を終えているところから始まります。だから3作目で、ようやくマイクが恋愛関係にある姿を描くことができました。本作に関わってきたチーム全体が、映画についての男女関係やファンタジー、欲望、官能性などについて議論して考えた結果、この3作目ができあがったというわけです。おそらく11年前の1作目では、まだそれを描く準備ができていなかったのではないかと思います」。

マイクとマックスとの情熱的なパフォーマンスが胸熱
マイクとマックスとの情熱的なパフォーマンスが胸熱[c]2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

本作においては、特に2つの大きなチャレンジがあったというソダーバーグ監督。「1つ目は、舞台でのショーをどのように作るか、そして男女関係をどのようにして見せるかという2つの要素を上手くブレンドし、両方を充分に見せるというのが大きな挑戦だったと思います。そして2つ目は、ダンスシーンをどのように作り上げていくかということでした。舞台のダンス劇は100年以上の歴史があり、その上に立ちたいと思いましたが、幸か不幸かあまり時間がありませんでした。その時は『もっと時間がほしい』と思いましたが、いま完成した映画を観ると、限られた時間で作らなければならなかった“エネルギー”や“熱量”といったものが、スクリーンの上に上手く表れているなと思いました。願わくは、観ている人にとって、ダンスが目の前で繰り広げられているように、自発的かつ自然に観ることができる映画になっていたらいいなと思っています」。


取材・文/山崎伸子

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