ヘレン・ミレン、ルーシー・リュー、レイチェル・ゼグラーが最大56歳差の姉妹に！『シャザム！～神々の怒り～』はヴィランもおもしろい

長女ヘスペラ役にオスカー俳優のヘレン・ミレン

長女ヘスペラ役のヘレン・ミレンは、エリザベス女王(2022年に亡くなったエリザベス2世)を演じた2006年の『クィーン』でアカデミー賞主演女優賞を受賞した超実力派。イギリスでは「デイム」の称号を持つ“国宝”的俳優だ。そんなミレンが、余裕の表情でヴィランの最年長を楽しそうに演じつつ、杖を手にした華麗なアクションでも魅せる。観ているこちらまで微笑ましい気分にさせるのは、さすがベテランの芸！ミレンは「RED」や「ワイルド・スピード」といったハリウッドの大人気シリーズにも積極的に参加しているが、ここまでハメを外した暴れっぷりは初めてかも。またミレンへのオマージュとして、シャザム(ザッカリー・リーヴァイ)がヘスペラに「『ワイスピ』は全部観た」と話すシーンもある。そのセリフを聞くミレンの笑顔は必見だ。

次女カリプソ役に「チャーリーズ・エンジェル」＆「キル・ビル」のルーシー・リュー

次女のカリプソ役はルーシー・リュー。「チャーリーズ・エンジェル」や「キル・ビル」の各2作で発揮したアクションの才能を、久々に炸裂させてくれる。時には冷静な判断もするヘスペラに対し、カリプソはとにかく血の気が多く、抑えが効かないキャラ。シャザムらとの戦いをさらに激化させる役どころだ。巨大なドラゴンとカリプソの2ショットは、恐ろしいまでの“圧”がある。近年、ハリウッドではアジア系俳優が大躍進。今年のアカデミー賞でさらにその流れが顕著になったが、中国系(両親が台湾からの移民)のリューは、その先駆的スターともいえる。今後もドウェイン・ジョンソンとクリス・エヴァンスと共演したアクション・アドベンチャー『Red One』が控えており、今回の『シャザム！～神々の怒り～』をきっかけに再び彼女の活躍が加速しそうな気配だ。

三女アンテア役に『ウエスト・サイド・ストーリー』の新星レイチェル・ゼグラー

そしてストーリーの重要なカギを握るのが、三女のアンテア。長女と次女が最初から“神の娘”として大暴れする一方で、彼女だけは人間社会のハイスクールの転校生として登場する。もちろん見た目も、人間そのもの。アンと名乗る彼女は、シャザムのチームの一人、フレディ(ジャック・ディラン・グレイザー)と仲良くなり、恋愛へと発展しそうな流れに…。

そんな彼女が女神という素顔を露わにするのだが、姉たちとは違って人間たちへのシンパシーも増大。ピュアでキュートな魅力のまま、神と人間の間で右往左往する。演じたのは、レイチェル・ゼグラー。スティーヴン・スピルバーグ監督がリメイクした『ウエスト・サイド・ストーリー』(20)のヒロイン、マリア役に大抜擢され、一躍若手トップスターとなった。本作のあとは、ディズニー・アニメーションの不朽の名作『白雪姫』(37)の実写版『スノー・ホワイト』で主演を務め、『ウエスト・サイド・ストーリー』と同様に歌唱力も発揮する。現在21歳ながら、ハリウッドで最高の地位に登り詰めたゼグラー。大ベテランたちを相手に堂々と渡り合う姿と、高校生役での初々しい演技。その鮮やかなコントラストで新たなファンを獲得するのは間違いない。

このようにキャラもまったく違う3姉妹に、それぞれの個性を最大限に生かして挑んだ3人の俳優たち。彼女たちのやり取りを眺めているだけでも『シャザム！～神々の怒り～』はテンションが上昇する一作なのである。

文/斉藤博昭