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新作のトラックリストも発表!映画・音楽ジャーナリスト宇野維正が語る、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズ楽曲の魅力

コラム

新作のトラックリストも発表!映画・音楽ジャーナリスト宇野維正が語る、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズ楽曲の魅力

懐かしくてゴキゲンなナンバーが満載の映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズ。最新作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』(5月3日公開)のトラックリストがついに発表。そこで、最新作を観る前に、本シリーズに使われている楽曲の魅力を、映画・音楽ジャーナリストの宇野維正に語ってもらった。(インシアターマガジン「月刊シネコンウォーカー」4月号掲載の特集より ※本取材は『~VOLUME 3』のトラックリスト発表前に行いました)。

【写真を見る】樹木型ヒューマノイドのグルート。ヘッドフォンを付けるとノリノリに!
【写真を見る】樹木型ヒューマノイドのグルート。ヘッドフォンを付けるとノリノリに![c]2023 MARVEL『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズはディズニープラスで見放題配信中

「ジェームズ・ガンの選曲には、血と心が通っている」

ジェームズ・ガンは本当に特異な監督で、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズもそうですが、どの曲を使うかを決めてから脚本を書いているんです。このシーンで流れるのはこの曲という感じで、その理由まで脚本に書いてあるそうです。そんな監督ってほかにいないですよね。ポップソングを劇中で使うのは珍しいことではないですが、ガンの場合はシーンに合った曲を選ぶというより、その曲をどう聞かせたいかを考えて選んでいるんです。だから1作目の冒頭、クイルが惑星モラグで音楽を聴くシーンに『カム・アンド・ゲット・ユア・ラヴ』(by レッドボーン)みたいな、アメリカ人にとっても記憶の彼方にあったような曲も入れちゃう(笑)。2作目のアタマで流れたエレクトリック・ライト・オーケストラの『ミスター・ブルー・スカイ』もキャラクター同士のやりとりがあってのアンプにつないでドン!という曲出しをやりたかったんだと思います」

シリーズ2作目の冒頭、ガーディアンズが宇宙怪獣と戦っているシーンで「ミスター・ブルー・スカイ」が流れる
シリーズ2作目の冒頭、ガーディアンズが宇宙怪獣と戦っているシーンで「ミスター・ブルー・スカイ」が流れる[c]2023 MARVEL『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』シリーズはディズニープラスで見放題配信中

「クエンティン・タランティーノの登場以降、音楽にこだわりを持った監督が多く世に出てくるようになって、ガンもその1人と思われがちですが、全然違います。ほかの監督は音楽専門のスーパーバイザーを付けていますが、ガンはすべて自分で選曲しています。しかも、そこでカッコつけたり、趣味のよさをひけらかそうともしない。彼の選曲には、彼自身の血と心が通っているんです。70〜80年代のヒット曲が使われているのも、当てようとねらったわけではなくて、作品の時代設定が彼の実人生と重なっていたから。アメリカでは1作目のサントラが全米アルバム・チャートで1位になりましたが、それは内容もさることながら、音楽が劇中で重要なアイテムになっていたからなんですよね。まさに映画と音楽が一心同体。結果的にカセットテープのリバイバルブームの決定打となったし、その後のマーベル作品はガンの影響もあってなのか音楽の使い方が急にうまくなりました」


「最新作では予告編でスペースホッグの『イン・ザ・ミーンタイム』(94年リリースのヒット曲)が使われていて、もう70〜80年代しばりではなさそうです。前作でクイルはヨンドゥから300曲入る音楽プレイヤーをもらっているから、カセットテープからも解放されるのかな。最終作とも言われているので、みんなでハッピーになれる、そういう作品になると期待しています」

ピーター・クイルが幼いころ亡くなった母親からもらったカセットテープ
ピーター・クイルが幼いころ亡くなった母親からもらったカセットテープ[c]2023 MARVEL『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズはディズニープラスで見放題配信中

〈『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3 オーサム・ミックス Vol. 3(オリジナル・サウンドトラック)』 トラックリスト〉
1. クリープ(アコースティック・ヴァージョン)/レディオヘッド
2. クレイジー・オン・ユー/ハート
3. シンス・ユー・ビーン・ゴーン/レインボー
4. イン・ザ・ミーンタイム/スペースホッグ
5. リーズンズ/アース・ウィンド&ファイアー
6. ドゥ・ユー・リアライズ??/ザ・フレーミング・リップス
7. ウィー・ケア・ア・ロット/フェイス・ノー・モア
8. 小犬のカーニバル~小犬のワルツより~/エハミック
9. 虹を追いつづけて/アリス・クーパー
10. サンフランシスコ/ザ・モーグリス
11. プア・ガール/X
12. ディス・イズ・ザ・デイ/ザ・ザ
13. ノー・スリープ・ティル・ブルックリン/ビースティ・ボーイズ
14. ドッグ・デイズ・アー・オーヴァー/フローレンス・アンド・ザ・マシーン
15. バッドランド/ブルース・スプリングスティーン
16. アイ・ウィル・デアー/ザ・リプレイスメンツ
17. カム・アンド・ゲット・ユア・ラヴ/レッドボーン


■宇野維正プロフィール
映画・音楽ジャーナリスト。著書に「1998年の宇多田ヒカル」(新潮社)、「小沢健二の帰還」(岩波書店)など。最新刊「ハリウッド映画の終焉」(集英社)6月刊行予定。

取材・文/村上ひさし

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