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宮沢りえが主演を務める石井裕也監督作品『月』悩みや不安がにじむ場面写真公開、監督や有識者からのコメントも

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宮沢りえが主演を務める石井裕也監督作品『月』悩みや不安がにじむ場面写真公開、監督や有識者からのコメントも

<キャストコメント>

●石井裕也(監督、脚本)

「この話をもらった時、震えました。怖かったですが、すぐに逃げられないと悟りました。撮らなければいけない映画だと覚悟を決めました。多くの人が目を背けようとする問題を扱っています。ですが、これは簡単に無視していい問題ではなく、他人事ではないどころか、むしろ私たちにとってとても大切な問題です。この映画を一緒に作ったのは、人の命や尊厳に真正面から向き合う覚悟を決めた最高の俳優とスタッフたちです。人の目が届かないところにある闇を描いたからこそ、誰も観たことがない類の映画になりました。異様な熱気に満ちています。宮沢りえさんがとにかく凄まじいです」

●長井龍(プロデューサー)

「目の前の問題に蓋をするという行為が、この物語で描かれる環境に限らず、社会の至る所に潜んでいるのではないか、という問いが映画『月』には含まれています。障害福祉に従事されている方にも本作をご覧頂き『この映画を通して、障害者の置かれている世界を知ってもらいたい』という言葉も預かりました。本作を届けていく必要性を改めて噛み締めています。そして、映画製作を通して、この数年で障害福祉の環境が変わろうとしている現実も目の当たりにしました。そのこともまた、社会の持つ可能性のひとつだと信じています」

●見城徹(編集者)

「この社会に蔓延る『嘘と現実』、『善と悪』、『建前と本音』の判断を宙吊りにしたとてつもない映画だった。『月』は誰もが当たり前のように見ているが、実は誰も本当に存在しているのか解らない曖昧なものでもある。しかも、『月』は太陽の光に照らされて様々に姿を変える。だから、『月』はロマンチックな影を人間の心に落とすのだ。オダギリジョーと宮沢りえ夫婦が直面する『圧倒的な現実』と磯村勇斗の心に影だけを落とす『月』はライバルのように激しくせめぎ合う。後半は磯村勇斗の狂気(=ルナティック=月)を誰も否定出来なくなるが、ラストに宮沢りえがオダギリジョーにかける一言がこの映画を万感の想いで支えている。身動きも出来ないまま観終わって、まだ映画に犯されている。世に問うべき大問題作にして大傑作の誕生。石井裕也監督、此処にあり。凄過ぎる」

●高橋源一郎(作家)

「『月』を観て、名状し難い感銘を受けた…と書いて、これは正確ではないと思った。ぼくが感じたものは、もっとずっとやっかいで、ことばにするのが難しいものだった。『月』では、障害者施設を襲い、そこに収容されている人たちを殺傷した現実の事件とその犯人らしき人物がモデルとして描かれている。そこには重い問いかけがある。どんなことばもはね返してしまうような強烈な問いである。だが、その問いよりもさらに強く、訴えてくるのは『月』だと思った。映画全体をひたしている『月の光』だ。『太陽の光』はまぶしく、すべてのものを照らし尽くす。そこではすべてが見えてしまうだろう。世界の隅々までくっきりと。けれども、『月の光』はちがう。ぼくたちひとりひとりを個別に照らすか細い光である。その淡い光の下でだけ、ぼくたちは『個』になるのだ。 登場人物の多くは、『ものをつくる人』である。そして、同時に『うまく作ることができない人』でもある。彼らは淡い『月の光』の下でそのことを知る。そこで生まれてくるものがある。そこでしか生まれないものが。それがなになのかぼくにはよくわからない。『月』は、あまりに強烈なテーマを扱っているので、もしかしたら観客は、そちらに視線を奪われるかもしれない。そうではない。もっとずっと繊細で、実はおぼろげなものが、そこにある。それは『生きる』ということなのかもしれない。もう一度書くが、ぼくにはその正体がはっきりとはわからない。わからないまま、ぼくはうちのめされていた。ぼくもまた、この映画が発する『月の光』の下にいたのだ」

●森直人(映画評論家)

「石井裕也が命がけでぶん投げてきた灼熱の問題提起の豪球。我々にできるのは、火傷しながらも全身で受け止めること。『月』は告げる。もう見え透いた嘘はやめにしよう。本気の表現しか響かない新しい時代が目の前に来ている」

●恩田泰子(読売新聞編集委員)

「石井裕也監督の 『月』は、広く公開され、たくさんの人に届けられなければならない。この映画は、苛烈にして誠実な表現をもって、人や社会をぬくぬくとくるんできたきれいごとを剥がし、見ているふりをして見ていなかったこと、考えているふりをして考えていなかったことを突きつけてくる。もう逃げたり、ひるんだりしているわけにはいかない。カオスの中でつつましくまたたく希望のかけらを見つけ出すために。この映画から、しっぽを巻いて逃げだしたら、それこそもう絶望しか残らないのだ」


文/鈴木レイヤ

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