「山下さんの無言の演技があまりにもよくて、台詞を減らしたほど」『SEE HEAR LOVE』山下智久×イ・ジェハン監督が対談|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
「山下さんの無言の演技があまりにもよくて、台詞を減らしたほど」『SEE HEAR LOVE』山下智久×イ・ジェハン監督が対談

インタビュー

「山下さんの無言の演技があまりにもよくて、台詞を減らしたほど」『SEE HEAR LOVE』山下智久×イ・ジェハン監督が対談

Prime Videoにて独占配信中、そしてディレクターズカット版が7月7日(金)より全国公開される映画『SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる』。本作は、病で視力を失った漫画家の泉本真治と、彼の漫画を心の支えにしている聴覚障がいのある女性、相田響の物語。仕事が軌道に乗ってきた矢先、突如病により視力を失った真治は絶望し自殺を試みるが、彼の作品のファンである響に助けられる。目の見えない真治と耳の聴こえない響は互いを助け合いながら、不思議な共同生活を始めるが――。真治役を演じるのは、約6年ぶりのラブストーリー挑戦となる山下智久。そして、山下と5年ぶりの共演となる新木優子が、響役を可憐に演じている。

 ディレクターズカット版が7月7日(金)より全国公開する『SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる』
ディレクターズカット版が7月7日(金)より全国公開する『SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる』[c]2023「SHL」partners

メガホンをとったのは、『私の頭の中の消しゴム』(04)で知られるイ・ジェハン監督。今回、来日中のイ監督と山下の対談が実現した。お互いに深い敬意を示しながら、本作を「魂の物語」と表する二人が、その想いを静かに熱く語った。

「お会いする前から、山下さんの声がとても好きでした」(イ監督)

『SEE HEAR LOVE』山下智久×イ・ジェハン監督
『SEE HEAR LOVE』山下智久×イ・ジェハン監督撮影/増永彩子

――監督は、俳優としての山下さんにどういったイメージを持っていましたか?

イ「まず、とてもハンサム。そして歌手でもいらっしゃるということで、ステージマナーがすばらしい方だと思っていました。彼の持つ強いエネルギーを、私も感じてみたかったんです」

――実際に撮影して、改めてどんな俳優だと感じましたか。

イ「とても繊細な演技に感動しました。そして、これはお目にかかる前から感じていたことなんですけど、山下さんは声がすてきな俳優さんですよね。僕は山下さんの声がとても好きで、台詞はもちろん、それを発している声に惚れ込みました。さらに、山下さんは心も耳もオープンで、相手役が発する台詞をちゃんと聞いて演技をするんです。基本的なことですが、それができない俳優はたくさんいます。山下さんはその基礎ができているから、とてもディレクションしやすかった。もしも私のことを受け入れてくれるのであれば、これからも引き続きご一緒したい俳優さんです」

山下「(お辞儀をして)光栄です」

イ「あと、大事なことを言い忘れていました。涙のシーンは一度も目薬を使っていません(笑)。その点でも、山下さんはとても感性の優れた俳優だと思いました」

 【写真を見る】山下智久が 『SEE HEAR LOVE』を通して見えてきた“真実の愛の形”とは?撮り下ろし写真もたっぷり公開
【写真を見る】山下智久が 『SEE HEAR LOVE』を通して見えてきた“真実の愛の形”とは?撮り下ろし写真もたっぷり公開撮影/増永彩子


――「相手の台詞を受ける」というのは、山下さん自身、意識していることなのですか?

山下「そうですね。相手のお芝居に反応できるようにという気持ちは常に持って、表情を見て演じています」

――それは、昔から?

山下「いえ、若い時は、そういうことはわからなかった。“とにかく台詞を言わなきゃ”と思っていたんですけど、経験を積んで演技のレッスンもしていくなかで、変わってきたと思います」

イ「一方で、題材が題材だけに、台詞がないシーンもたくさんあります。ときには無声映画のように意思疎通しなくてはならないのですが、そこでも山下さんの魅力である繊細な演技が光を放っていました。無言の演技があまりにもよくて、あえて台詞を減らしたこともあります。編集長の平山と、3回目に会うシーンです。目が見えない状況にありながら、敵と相対している表情や声のトーン、目の光があまりにもすばらしかった」

『私の頭の中の消しゴム』『ジェジュン:オン・ザ・ロード』などのイ・ジェハン監督
『私の頭の中の消しゴム』『ジェジュン:オン・ザ・ロード』などのイ・ジェハン監督撮影/増永彩子

――山下さんの芝居が、監督の想像を超えてきた、と。

イ「はい。それは、本編を通してほぼすべてといえます。と言うのも、身体になんらかの障がいのある人を演じるというのは、とても難しいことなんです。にも関わらず、山下さんは真治が染み付いていると思わされるような芝居を見せてくれました。例えば、車に乗るシーンを急遽追加した時。本来ならどう演じるか考える時間が必要だと思うんですけど、山下さんは自然と、目の見えない人がするであろうように、手の甲で車の天井の辺りを辿って、乗り込んだんです。そういう一つひとつの小さな積み重ねが、見ている人に『この人は目が見えないんだ』と感じさせるんだと思います」

山下「正解はわからなかったんですが…“目が見えない”ということを意識するよりは、真治の内面をよく感じながら演技をしていたと思います。先ほど、繊細な芝居と言っていただきましたけど、その瞬間、真治として生きていたことが、監督に伝わっていたのかもしれないと思うとうれしいです」

視覚障がいをもつ真治になりきった繊細な演技が、監督にも絶賛された山下智久
視覚障がいをもつ真治になりきった繊細な演技が、監督にも絶賛された山下智久[c]2023「SHL」partners


イ「さらに、真治が自殺を試みる場面。家の中のあらゆるものをなぎ倒してベランダに向かう…その時の山下さんの視線や表情を見てください。一度も揺れることなく、そこには一貫して真治という人物がいます」

山下「実際に目が見えなくなってしまった方とお話をする機会をいただいたことも大きかったと思います。視力を失って、死にたいくらいまで落ち込んだという思いをリアルにお聞きしました。それに加えて監督やカメラマンさん、いろんな方の意見によって役が立体化していって、真治の絶望を表現できたんだと思います」

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