親子の繊細な感情を描くドラマに心震わせるドキュメンタリー…第20回「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023」国際コンペ出品の10本をチェック - 3ページ目|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
親子の繊細な感情を描くドラマに心震わせるドキュメンタリー…第20回「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023」国際コンペ出品の10本をチェック

コラム

親子の繊細な感情を描くドラマに心震わせるドキュメンタリー…第20回「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023」国際コンペ出品の10本をチェック

人生の素晴らしさを伝えるハートフルコメディ『ジェイルバード』

『ジェイルバード』(22/イタリア、ウクライナ)
『ジェイルバード』(22/イタリア、ウクライナ)[c]Pilgrim Film

刑務所内で囚人の両親の間に生まれたジャチントにとって、看守のジャックに守られた刑務所での生活は、外の世界より平穏に暮らせるものだった。自らも看守となったジャチントは、女囚のロッキーと心を通わせていく。
監督、脚本を手掛けたアンドレア・マニャーニ監督は、長編デビュー作『Easy』(17)がロカルノ国際映画祭新鋭監督部門に選出され、イタリアのアカデミー賞に当たるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞の新人監督賞にもノミネートされた。また、本作もタリン・ブラックナイト映画祭のコンペティション部門でワールド・プレミアを飾っている。主演のアドリアーノ・タルディオーロは、カンヌ映画祭で脚本賞を受賞した『幸福なラザロ』(18)で、高校在学中に発掘された新星だ。

戦場の病棟で、生まれてくる命に日々祈りを捧げ続ける『助産婦たち』

『助産婦たち』(23/フランス)
『助産婦たち』(23/フランス)[c]Geko Films

5年間の修学を経たルイーズとソフィアはついに、「世界で最も美しい仕事」と言われる助産の仕事に就く。しかし現実には、幼子の命を預かるストレスとオーバーワークによる疲労が、2人に大きくのしかかる。
理想と現実の狭間で葛藤する2人の新人助産師を中心に、人生の苦さと生命の美しさを描く重厚な群像劇は、今年のベルリン国際映画祭パノラマ部門でワールド・プレミア上映された。本作が長編3作目となるレア・フェネール監督は、2012年に日本でも劇場公開された初長編作品『愛について、ある土曜日の面会』(09)がヴェネチア国際映画祭ヴェニス・デイズ部門に選出され、セザール賞新人監督賞ノミネート、ルイ・デリュック賞で新人監督作品賞を受賞している。


『写真の女』の串田壮史監督が放つ独創的なサイコサスペンス『マイマザーズアイズ』

『マイマザーズアイズ』(23/日本)
『マイマザーズアイズ』(23/日本)[c]2023 PYRAMID FILM INC.

チェロの演奏家の母、仁美と娘のエリ。ある日、仁美の車が事故を起こす。視力を失った仁美がつけるカメラ内蔵コンタクトレンズと、負傷した病室のエリが装着するVRゴーグルにより、2人は1つの視覚を共有する。
2020年の本映画祭で『写真の女』(20)が唯一の日本作品として国際コンペティションにノミネートされ、SKIPシティアワードを受賞した串田壮史監督。本作では、そのオリジナリティあふれたビジュアルにさらに磨きをかけ、観る者に特異な映像体験をさせてくれる。キャスト陣は、主人公の母娘を演じた小野あかねが妖しい魅力、設楽もねも気迫ある熱演を放っているほか、『写真の女』にも出演していた鯉沼トキや大滝樹がしっかりと脇を固めている。

養子に出したわが子を取り戻す猶予の6週間を描く『シックス・ウィークス』

『シックス・ウィークス』(22/ハンガリー)
『シックス・ウィークス』(22/ハンガリー)[c]Sparks Ltd

有望な卓球選手の高校生ゾフィは、情緒不安定な母ベアと幼い妹メシの3人暮らし。すでに中絶ができない時期に妊娠が判明したゾフィは、子を望むカップルに養子に出すことを決意するが、ベアはそれを受け入れられなかった。
ハンガリーでは2014年に法案が改正され、養子縁組が成立していても、出産日から6週間の間に実母が気持ちを変えた場合、子どもを取り戻すことが可能になった。本作では、そこでの葛藤が描かれる。本作で長編デビューしたのは、ドキュメンタリーの経験が豊富なノエミ・ヴェロニカ・サコニー。サラエボ国際映画祭のコンペティション部門でワールド・プレミアされた本作は、タリン・ブラックナイト映画祭のジャストフィルム(青少年映画)部門でもグランプリを受賞した。

紛争の爪痕が残るシリアの村に暮らす父娘を描く『この苗が育つ頃に』

『この苗が育つ頃に』(22/シリア)
『この苗が育つ頃に』(22/シリア)

シリアの村に住むヨーグルト売りの父フセインは、娘ゼラルをバイクに乗せて、叔父のもとへ配達に向かう。コバニの街で迷子の少年ハムデと出会った2人は、ハムデとともに、傷む前にヨーグルトを売り切ろうと奔走する。
イランの名匠アッバス・キアロスタミ作品を思わせる、市井の人々が織りなす何気ない日常のを丁寧に描いた本作。トルコ出身のレーゲル・アサド・カヤ監督は、シリアに移り、撮影監督や編集、俳優としても映画制作に携わった。予算には厳しい制限があるなかで、シリア北部のロジャヴァ地域の映画制作者たちのコラボレーションとして本作は完成したと監督自身が語っている。なお、ゼラルとハムデを演じた2人は実際の兄妹で、2016年にアレッポの戦いで父を亡くしている。


串田壮史監督の最新作からすでに評価の高い海外の作品まで、バラエティあふれる新進気鋭の監督作がずらりラインナップされた国際コンペティション部門に乞うご期待。なお、「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023」の上映チケットは日時および座席指定券となり、1回の上映につき、1枚のチケットが必要となるが、コンペ作品のフリーパスも現在発売中。また、オンライン配信は単品レンタルと見放題プランを選べられる。詳しいチケット情報、各上映のスケジュール詳細は公式ホームページでチェックしてほしい。

文/山崎伸子


現場からお届け!もっと楽しむ「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023」特集【PR】

■SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023
日程:【スクリーン上映】7月15日(土)~7月23日(日)、【オンライン配信】7月22日(土)~7月26日(水)
会場:SKIPシティ 彩の国 ビジュアルプラザ 映像ホールほか
内容:国際コンペティション、国内コンペティション(長編部門、短編部門) ほか
URL:https://www.skipcity-dcf.jp/
作品情報へ