渋オジの極み、ヴィゴ・モーテンセンファン必読!D・クローネンバーグが昇華させた名優を深掘り|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
渋オジの極み、ヴィゴ・モーテンセンファン必読!D・クローネンバーグが昇華させた名優を深掘り

コラム

渋オジの極み、ヴィゴ・モーテンセンファン必読!D・クローネンバーグが昇華させた名優を深掘り

鬼才、デヴィッド・クローネンバーグ監督の最新作『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』(8月18日公開)。主演を務めるのは、『ヒストリー・オブ・バイオレンス』(05)、『イースタン・プロミス』(07)、『危険なメソッド』(11)と本作を含めて4度のタッグを重ねてきた実力派俳優のヴィゴ・モーテンセンだ。モーテンセンといえば、「ロード・オブ・ザ・リング」三部作のアラゴルン役が有名だが、同作以降の現在に至るまで、ハリウッドのスター街道とは異なる独自の路線を突き進んでいる。本稿では、そのキャリアに大きな影響を与えたのがクローネンバーグの存在なのでは?という仮説に基づき、これまでの彼の活躍を振り返っていく。

『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』の主人公、アーティストであるソールは、モーテンセンの創作活動に重なるところも
『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』の主人公、アーティストであるソールは、モーテンセンの創作活動に重なるところも[c]2022 SPF (CRIMES) PRODUCTIONS INC. AND ARGONAUTS CRIMES PRODUCTIONS S.A. [c]Serendipity Point Films 2021

「ロード・オブ・ザ・リング」三部作のアラゴルン役でブレイク!3度のオスカー候補にも

1958年10月20日生まれ、現在64歳のモーテンセン。大学ではスペイン文学と政治学を専攻し、卒業後に映画館に入り浸ってイングマール・ベルイマン、アンドレイ・タルコフスキー、小津安二郎といった巨匠たちの作品に感銘を受けたことから俳優を志していく。舞台などで経験を積んだのち、ハリソン・フォード主演の『刑事ジョン・ブック 目撃者』(85)で本格的に映画デビュー。ショーン・ペンの初監督作『インディアン・ランナー』(91)で演じたPTSDを抱えるベトナム帰還兵役で注目を集め、ブライアン・デ・パルマの『カリートの道』(93)、リドリー・スコットの『G.I.ジェーン』(97)、名作サスペンス『ダイヤルMを廻せ!』(54)をリメイクした『ダイヤルM』(98)といった良作、話題作で出演を重ねてきたが、どちらかというと知る人ぞ知る俳優という位置に留まっていた。

『インディアン・ランナー』でのPTSDを抱えたベトナム帰還兵役が高い評価を獲得する
『インディアン・ランナー』でのPTSDを抱えたベトナム帰還兵役が高い評価を獲得する[c]Everett Collection/AFLO

そんなモーテンセンにとって大きな転換点となったのが「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのアラゴルン役だ。物語の舞台である“中つ国”が闇に覆われようとするなか、人々を率いる人間族の王の末裔という己の宿命に苦悩するキャラクターを体現。剣や弓、馬に乗ってのアクションも披露し、アラゴルンはシリーズ屈指の人気キャラクターとなった。その後、灼熱の砂漠で繰り広げられる長距離騎馬レースを題材にしたアドベンチャー『オーシャン・オブ・ファイヤー』(04)やスペインの歴史劇『アラトリステ』(06)、文明崩壊後の世界を描く『ザ・ロード』(09)などで主演を務めたほか、上記の『イースタン・プロミス』に加えて、『はじまりへの旅』(16)、『グリーンブック』(18)で3度の米アカデミー賞主演男優賞候補にも選ばれるなど世界的な俳優としてブレイク。これらの活躍によって熱烈な支持も獲得し、“北欧の至宝”と称されるデンマーク人俳優のマッツ・ミケルセンと共に“枯れ専二大巨頭”と、ある界隈では叫ばれているとか。昨年の第75回カンヌ国際映画祭ではモーテンセンとミケルセンのツーショットも実現しており、世界中のファンが悶絶したことだろう。


「ロード・オブ・ザ・リング」三部作のアラゴルン役で世界的にブレイク!(『ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔』)
「ロード・オブ・ザ・リング」三部作のアラゴルン役で世界的にブレイク!(『ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔』)[c]Everett Collection/AFLO

アート系や欧州、南米のインディーズ作品で才覚を発揮!

輝かしいキャリアを持つ一方で、今日までのモーテンセンは独自の作品選びを貫いている。良心の呵責に苦悩するナチス党員を演じた『善き人』(08)や美しいギリシャの街を背景に殺人を犯した詐欺師の逃避行を描く『ギリシャに消えた嘘』(14)、ノーベル文学賞作家アルベール・カミュの短編小説が原作の『涙するまで、生きる』(14)といったアート寄りの作品で才覚を発揮。一卵性双生児の兄弟を1人2役で演じたサスペンス『偽りの人生』(12)、行方不明となった娘を探す父親の旅路を幻想的なタッチで描く『約束の地』(14)などのアルゼンチン映画では主演のほかプロデューサーも務め、同地のクリエイターたちの作品づくりもあと押しした。

異国の地で消えた娘を探す父親の孤独な旅を描く『約束の地』
異国の地で消えた娘を探す父親の孤独な旅を描く『約束の地』[c]Everett Collection/AFLO
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