『アステロイド・シティ』ウェス・アンダーソン監督にインタビュー。完璧なアートワークの根源は舞台美術から?|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
『アステロイド・シティ』ウェス・アンダーソン監督にインタビュー。完璧なアートワークの根源は舞台美術から?

インタビュー

『アステロイド・シティ』ウェス・アンダーソン監督にインタビュー。完璧なアートワークの根源は舞台美術から?

今の映画界で監督名がブランドになっているセレブグループの1人、ウェス・アンダーソン。毎回、計算し尽くされたアートワークと、馴染みの俳優陣+αによる絶妙なキャスティング、そして印象的なショットを積み重ねつつ一気に駆け抜ける、端正でスピーディな演出で魅せまくるアンダーソンだが、最新作『アステロイド・シティ』(公開中)もこれまた、魅力満載の作品になった。そこで、最新作に込めたアイディアと、気になる製作のプロセス、カラーリング、ジオラマ的世界の製造法、さらに監督本人の服選びまで、限られた時間の中で質問をぶつけてみた。

 【写真を見る】『アステロイド・シティ』ウェス・アンダーソン監督にインタビュー。大人数ならではのキャスティング秘話も
【写真を見る】『アステロイド・シティ』ウェス・アンダーソン監督にインタビュー。大人数ならではのキャスティング秘話も[c]2022 Pop. 87 Productions LLC

『アステロイド・シティ』の舞台は1955年のアメリカ西部に位置する砂漠の街。ここは紀元前に隕石が落下してできた巨大なクレーターが観光名所になっている。隕石が落下した9月23日は”アステロイド・デイ”と名付けられ、毎年イベントが開催されている。今年はジュニア宇宙科学賞に輝いた天才キッズとその家族がやってくる。

「僕の作品はどこか舞台っぽい部分があるかもしれません」

ジュニア宇宙科学賞の祭典にやってきた天才キッズたちとその家族
ジュニア宇宙科学賞の祭典にやってきた天才キッズたちとその家族[c]2022 Pop. 87 Productions LLC

まずはフレンチカルチャーへの憧憬があからさまだった前作『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』(21)から、最新作では一気にアメリカの西部に舞台を移した理由あたりから訊いてみることにした。

「当初、思い浮かんだのは1950年代にブロードウェイで上演されていた舞台劇でした。マーロン・ブランドやエリア・カザンの世界ですね。いま思うと、あの時代は現在のアメリカよりよっぽどアメリカらしい時代だったんですよね。だから、最初は本編の中で描かれる舞台劇(『アステロイド・シティ』は劇中劇形式で物語が展開する)もタイムズスクエアで上演されていたような演劇をイメージしていたのですが、途中から西部に舞台を移そうということになり、結果、前作のフランスからアメリカ西部へシフトすることになりました。舞台が変わっても、最もアメリカらしい時代を描いたことに変わりはないのですが」

 前作とは一転し、アメリカらしさ満点の本作
前作とは一転し、アメリカらしさ満点の本作[c]2022 Pop. 87 Productions LLC

そういえば、監督と舞台の出会いは古い。そもそも、小学4年生の時に書いたのは一幕ものの舞台劇の脚本だったというし、テキサス大学時代に出会った親友のオーウェン・ウィルソンと最初にコラボしたのも舞台劇だった。舞台という空間は監督にとってスペシャルなものなのだろうか。

「まさにそうかもしれません。僕の舞台での経験は必ずしも多くはないですが、子どものころから、戯曲を読んだり、舞台関係の書籍を読み漁ったりしていましたね。おっしゃるように、小学生時代は色々な戯曲を書くのに夢中で、先生にとっては制御不能な子どもだったみたいです。それでも、珍しく先生のいうことを聞いて1週間おとなしくしていたご褒美にと、僕が書いた戯曲を上演させてくれたことがありました。大学時代は、オーウェンと一緒に脚本の授業を受けていて、彼にお願いしてサム・シェパードの戯曲『TRUE WEST』を僕なりにアレンジした舞台に出演してもらい、50人くらいの観客の前で上演したこともありました。たった2晩の上演でしたけれど」

 今作でも随所でウェス・アンダーソンらしい世界観が楽しめる
今作でも随所でウェス・アンダーソンらしい世界観が楽しめる[c]2022 Pop. 87 Productions LLC


監督の作品はジオラマ的だとよく言われるが、独特のセットデコレーションのルーツはフレームワークといい、手作り感といい、舞台から派生したもの、と見ることもできるだろうか。

「たしかに、背景を設定する時にどこか舞台っぽさがあるかもしれませんね。それは認めます。今回もロケ地は本物の砂漠(スペインのチンチョン)だったのですが、わざわざ土を掘り起こして、そこにペンキを塗って意図的に作り物感を出しているんですよね。そういうフレームワークでありながらも、僕が一番やりたいのは人物たちのストーリーを物語ることなんですよ」

ジオラマ的な美術が特徴のウェス作品は、舞台の影響があるといえそう
ジオラマ的な美術が特徴のウェス作品は、舞台の影響があるといえそう[c]2022 Pop. 87 Productions LLC

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