「最初の10分で否応なく心をつかまれた」作家・漫画家ら“ミステリーの匠”たちが「名探偵ポアロ」最新作を高く評価する理由とは?|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
「最初の10分で否応なく心をつかまれた」作家・漫画家ら“ミステリーの匠”たちが「名探偵ポアロ」最新作を高く評価する理由とは?

コラム

「最初の10分で否応なく心をつかまれた」作家・漫画家ら“ミステリーの匠”たちが「名探偵ポアロ」最新作を高く評価する理由とは?

英国を代表する名優で、映画監督としても『マイティ・ソー』(11)や『ベルファスト』(21)などを手掛け高い評価を得ているケネス・ブラナー。彼が監督・主演を務めた最新作『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』が公開中だ。英国が誇るミステリー作家、アガサ・クリスティの代表作「名探偵ポアロ」シリーズの第31作「ハロウィーン・パーティ」を映画化した本作。鋭い洞察力と話術で難事件を解決する“灰色の脳細胞”の持ち主、探偵エルキュール・ポアロが、ハロウィーンの晩に起きた連続殺人事件に挑む本格ミステリーだ。『オリエント急行殺人事件』(17)、『ナイル殺人事件』(22)でも監督を兼ねてポアロを演じ、すっかり名探偵役が板についたブラナーのほか、2023年度アカデミー賞でアジア系初のアカデミー賞主演女優賞に輝いたミシェル・ヨーなど共演者も演技派ぞろい。そんな本作をひと足先に観た作家や漫画家の“ミステリーの匠”たちも絶賛している。そのコメントと共に本作の魅力を探ってみたい。

名探偵ポアロと霊能者レイノルズの対決の行方も気になるところだが…
名探偵ポアロと霊能者レイノルズの対決の行方も気になるところだが…[c] 2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.

探偵業の引退を宣言し、イタリアのベネチアで隠遁生活を過ごしていたポアロ(ブラナー)。彼は友人でミステリー作家のアリアドニ・オリヴァ(ティナ・フェイ)に誘われて、ハロウィーンの晩に“子どもの亡霊が出る”という屋敷で開催される「降霊会」に参加することになった。霊能者レイノルズ(ミシェル・ヨー)のトリックを暴こうと意気込んでいたポアロだが、屋敷で次々と殺人事件が巻き起こり、彼自身もその標的に。さらにポアロは屋敷にいるはずのない少女に遭遇する…。

「フルコースの料理が並ぶ晩餐にも似た贅沢さを伴っている」ポアロも観客も翻弄する巧みなミステリー展開

降霊会が始まり、事件が起きる…犯人は人間か?亡霊か?
降霊会が始まり、事件が起きる…犯人は人間か?亡霊か?[c] 2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.

アガサ・クリスティといえば、誰もがその名を知るミステリーの女王。巧みなトリックを駆使した作品群は時代を超えて読み継がれ、全世界の出版数が20億冊以上と世界一売れた作家としても知られている。ドラマ化も大ヒットした「池袋ウエストゲートパーク」ほか青春小説から恋愛、ファンタジー、ミステリーなど多彩なジャンルを手掛ける作家・石田衣良は、原作の“本格推理”を継承した映画化を「亡くなった娘の魂を呼びだすハロウィンの夜の降霊会を襲う連続殺人!閉ざされた嵐の屋敷で、恐ろしくも贅沢に凝縮された本格推理劇が展開」と称賛する。

さらに、「クセ者揃いの俳優の演技合戦は火花が飛ぶほど。ポアロは殺人犯だけでなく、亡霊まで裁けるのか?」と役者陣の織り成す、スリリングな応酬も高く評価する。ポアロ役のブラナーのほか、本作には『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』で2023年アカデミー賞主演女優賞に輝いた名優ミシェル・ヨーがキーパーソンである霊能者レイノルズ役で出演。ポアロを降霊会に誘う友人の作家アリアドニ役でエミー賞脚本家でもあるコメディ俳優ティナ・フェイ、心に闇を抱えた医師役で『ベルファスト』でゴールデン・グローブ賞助演男優賞候補になったジェイミー・ドーナンなど実力派が集結し、激しい心理戦を繰り広げる。

【写真を見る】オスカー女優、ミシェル・ヨーが霊能者レイノルズを怪演…。霊に憑依された彼女が叫ぶのは?
【写真を見る】オスカー女優、ミシェル・ヨーが霊能者レイノルズを怪演…。霊に憑依された彼女が叫ぶのは?[c] 2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.


物語の発端は、亡くした娘、アリシアの声を聴きたいと願う元オペラ歌手ロウィーナがハロウィーンの晩に降霊会を開いたこと。会場はかつては孤児院で「子どもの幽霊が出る」と噂される古い屋敷。そこでアリシアの主治医だったドクター・フェリエやアリシアの元婚約者らゆかりの人々が集まり愛憎うずまく人間模様を繰り広げる。「検察側の罪人」や「望み」など映画化された著書を数多く発表する作家・雫井脩介は、様々な出来事に翻弄されるポアロと観客の目線で「次々と繰り出される怪奇的な謎は、ポアロの灰色の脳細胞をも幻惑し、観る者を迷宮に閉じこめる。その体感はもちろん怖い。しかし同時に、フルコースの料理が並ぶ晩餐にも似た贅沢さを伴っている」と表現し、「検索すればだいたいのことが分かる今の世において、ある種の妖しさや禍々しさは姿を消してしまったが、我々の本能はどこかでそれを欲しているのかもしれない」と、理屈では割り切れない展開を評価する。

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