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「ジョン・ウィック」監督が語る、“アクションアート映画”にするための美学「すべてのカットが美しくないといけない」

インタビュー

「ジョン・ウィック」監督が語る、“アクションアート映画”にするための美学「すべてのカットが美しくないといけない」

「シリーズを作るにあたってキアヌと話したのは、“アクションアート映画”にすること」

もう一つの本作の特徴と言えるのが、豊富なアイデアを惜しまずに投入したバラエティに富むアクションシークエンスの数々だ。17ものバリエーションで魅せる多彩なアクションの構築に関しても、スタエルスキ監督の徹底したこだわりがあった。「シリーズを作るにあたって、最初にキアヌと話をしていたのは、“アクションアート映画”にするということでした。だから、アクションとしてすべてのカットが美しくないといけない。僕は『マトリックス』シリーズでウォシャウスキー姉妹と仕事をしたなかで、『すべてのディテールにこだわることが大事だ』ということを学びました。だから、作品にとってなにが一番大事なのかと聞かれたら、『全部です』と答えます。そうしたマインドを受け継いでアクションを描いています」。

アート作品のような画作りも、「ジョン・ウィック」シリーズの魅力
アート作品のような画作りも、「ジョン・ウィック」シリーズの魅力[r], TM & [c] 2023 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

そうした影響を受けた人物たちの教えを踏まえて、さらなる深みも模索する形で本作のアクションシーンは作り込まれている。「カンフー、サンボ、トマホークを使ったり、チャンバラをしたり。武器もショットガンを使い、カーアクションや長い階段での戦いなど、本作ではたくさんのアクションがありますが、それぞれのシーンでは色彩を全部ちょっとずつ変えているんです。それから、悪役側の衣装も色彩に富むように変えています。単調にならないように柔道的な動きやナイフなどをアクションに少しずつ加えて変化させ、そこにライティングでは赤や青の色味が入ることで、より映像的な豊かさが感じられるように作り込んでいます」。

アクションシーンでのこだわり抜かれた色彩にも注目!
アクションシーンでのこだわり抜かれた色彩にも注目![r], TM & [c] 2023 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

今作では、そうした少しずつ変化していくアクションと映像、色彩や音響も大きな見所となっているという。「アクション映画で多いのは、主役は一つのファイトスタイルで戦い続け、一人の相手と延々に戦い続ける。僕は、そうした魅せ方はちょっとおもしろ味に欠けると思っているので、衣装や色味を変えたり、ファイトスタイルも変化したりするようにしています。例えば、凱旋門のシーンで上空から撮っているショットは、ほかに比べて黒味を薄くするなどかなり手を加えていたり、サウンドエフェクトに関しても1度使った音は2度と使わないようにお願いして、銃声も毎回違っていたりします。そのあたりは、観たり聞いたりしても細かい違いは判らないかもしれませんが、映像を観ながら肌で感じてもらえるように、ある種実験的に作っているところでもあります」。

「日本の文化に触れなければ、僕はこうして映画を撮っていなかったでしょう」

こうした、深いこだわりの末に完成した本作。最高のアクションシークエンスを紡いでくれたリーヴス、イェン、真田という3人のアクション俳優との仕事を終えた想いをスタエルスキ監督は次のように語っている。「3人と仕事ができるというのは本当に最高でした。アクションを演出するというのはコラボレートがとても大切なんです。今回はアメリカ系に加え、日本系、中国・香港系という彼ら独自の仕事の仕方を学ばせてもらい、すごく楽しませてもらいました。ヒロユキの日本的な要素、ドニーの香港的な要素、そして、キアヌのアメリカ的なものを引き出したい。そうしたコラボレートをすることで、映画を通して彼らの人間性も感じてもらうことで、映画が豊かなものになったと思います」。

3人のアクション俳優の夢の競演について、笑顔で語るスタエルスキ監督
3人のアクション俳優の夢の競演について、笑顔で語るスタエルスキ監督

そして最後に、スタエルスキ監督から日本の『ジョン・ウィック』シリーズのファンにメッセージが。「ファンはもちろん、日本という国に感謝していますし、心からありがとうと言いたいです。日本の文化はすごくロマンチックでステキだと思っているし、日本の文化に触れなければ、そもそも僕はこうして映画を撮っていなかったでしょう」。

『ジョン・ウィック:コンセクエンス』は公開中!
『ジョン・ウィック:コンセクエンス』は公開中![r], TM & [c] 2023 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.


スタエルスキ監督が愛する日本の映画やアニメーション的な要素をふんだんに盛り込んだ『ジョン・ウィック:コンセクエンス』。シリーズの集大成とも言える本作の映像から、ぜひその深い愛情を感じ取ってほしい。

取材・文/石井誠

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