「BLAME!」「シドニア」秘話も!「大雪海のカイナ」監督&プロデューサーたちが企画発足からの約10年を振り返る|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
「BLAME!」「シドニア」秘話も!「大雪海のカイナ」監督&プロデューサーたちが企画発足からの約10年を振り返る

インタビュー

「BLAME!」「シドニア」秘話も!「大雪海のカイナ」監督&プロデューサーたちが企画発足からの約10年を振り返る

「BLAME!」「シドニアの騎士」の原作、弐瓶勉とアニメーションスタジオ、ポリゴン・ピクチュアズのタッグによるオリジナルテレビアニメ「大雪海のカイナ」。拡がり続ける“雪海(ゆきうみ)”により大地が消えかけた世界を舞台に、巨木“軌道樹”から広がる“天膜”の上で暮らす少年カイナ(声:細谷佳正)と、雪海に沈んだ世界に生きる王女リリハ(声:高橋李依)の出会いから始まる物語だ。

テレビアニメのその後が描かれる劇場版『大雪海のカイナ ほしのけんじゃ』(公開中)。人類存続のため、水源をもたらす雪海の果てにある“大軌道樹”へ向かうことになったカイナたちだが、そこにあったのはビョウザン(声:花江夏樹)率いる独裁国家プラナトだった。“建設者”と呼ばれる巨大兵器を操り、大軌道樹の破壊を目論むビョウザンをカイナたちは食い止めることができるのか。

監督は引き続き安藤裕章が務め、アヌシー国際アニメーション映画祭で特別上映された際にはスタンディングオベーションを巻き起こした。長い構想期間を経て企画が始動し、ポリゴン・ピクチュアズ設立40周年記念作品として完成した本作の見どころや制作裏話に迫るため、安藤監督に加えて、彼と共に「亜人」や「シドニアの騎士」シリーズを手がけたアニメーション監督の瀬下寛之、ポリゴン・ピクチュアズのプロデューサー、守屋秀樹による座談会を実施。作品へのこだわりポイントはもちろん、弐瓶勉の世界観、ポリゴン・ピクチュアズのこれまでとこれからについても語り合ってもらった。

『大雪海のカイナ ほしのけんじゃ』の安藤裕章監督、アニメーション監督の瀬下寛之、ポリゴン・ピクチュアズの守屋秀樹による鼎談が実現!
『大雪海のカイナ ほしのけんじゃ』の安藤裕章監督、アニメーション監督の瀬下寛之、ポリゴン・ピクチュアズの守屋秀樹による鼎談が実現!撮影/河内彩

「SFに対するこだわりの強い人たちが、いかにファンタジーとのバランスを取るのか。これはすごく難しいことです」(安藤)

――まずはさきほど初めて完成した作品をご覧になったという瀬下監督に、本作を鑑賞された感想を伺いたいです。

瀬下寛之(以下、瀬下)「ファンタジーのようでいてハードSFという難しい内容をうまく料理されたという印象です。安藤さんの実直で丁寧な、きめ細やかな演出をそこかしこで感じました」

安藤裕章(以下、安藤)「お互いにSF要素やファンタジー系の作品を手掛けるのは、それほど苦労しないんじゃないでしょうか」

瀬下「元々がマニアですからね(笑)。おっしゃるとおりSF作品は比較的条件反射で作り込めるのですが、最近はそれが自分の中で邪魔になってきていて。エモーショナルなストーリー展開のために、設定を気にしたくない時がありますね」

安藤「わかります、わかります!」

新たな水源を目指して、大軌道樹を目指すカイナとリリハ
新たな水源を目指して、大軌道樹を目指すカイナとリリハ[c]弐瓶勉/東亜重工開拓局

瀬下「作品によっては設定よりもエモーショナルさを大胆に選ぶ場合があって、多少の破綻や意図的に設定を壊すことを心掛けるのがSFマニアとしてはつらい…。本作にも、僕の視点とは異なる大変なバランス取りがあったことも見受けられたし、そんなところも含めて丁寧な配慮という印象がありました」

守屋秀樹(以下、守屋)「SFでガチガチに設定してあるのに、物語で感情を伝えようとした時に『そういう設定だったっけ?』という葛藤が起こることがありますからね。ファンの方が大勢いらっしゃるジャンルなので、ポイントを押さえて見せるところは見せて、楽しんでもらえるエンタテインメントとしての映像作りもしなければいけない。その辺のバランスは難しかったと思います」

安藤「SFに対するこだわりの強い人たちが、いかにファンタジーとのバランスを取るのか。これはすごく難しいことです」

――そこに弐瓶先生の世界観が加わるのですね。

瀬下「一番聞きたいことは、弐瓶ワールドの解釈の過程です。その苦労は筆舌に尽くし難いと想像しています。本作については企画の初期段階は知っているのですが、僕は途中で(ポリゴン・ピクチュアズから)独立してしまったので、この5年間でなにがあったのかが気になります!」

演出に安藤監督らしいきめ細やかさを感じたと語る、「亜人」や「シドニアの騎士」シリーズを手掛けたアニメーション監督の瀬下寛之
演出に安藤監督らしいきめ細やかさを感じたと語る、「亜人」や「シドニアの騎士」シリーズを手掛けたアニメーション監督の瀬下寛之撮影/河内彩

守屋「いいさじ加減で綺麗にまとまっていたでしょ?」

瀬下「弐瓶さんのいわゆるスターシステム、世界観の中の共通性の整理とか、大変だろうなって」

守屋「横で監督たちを見ていたけれど、本当に大変そうでした。『BLAME!』や『シドニア』との一番の違いは原作漫画がなかったということ。ここが一番大変で。設定がない要素は弐瓶さんにお願いするなり、こちらである程度作って相談したりしながら進めていました。ベースがない分、設定を考えるのに一番時間がかかりましたね」

安藤「漫画は映像にとってすごくいいプレビジュアライズですからね」

守屋「画面に映っていない部分も設定は作りましたしね」

安藤「作り終えちゃうと大変だったことは割とスポッと忘れちゃうタイプなので、いまはもっとできたかも、あれもやりたかったな、みたいなことばかり考えています(笑)」

瀬下「安藤さんはメンタルが強いですよね」

守屋「(作るのが)好きだしね(笑)」

瀬下「僕はメンタルが弱いから…」

守屋「そんなことないでしょ(笑)」

瀬下「終わってからも、大変だったことは日記に書いて30年くらい忘れないかも(笑)。あ、これ書かないでくださいね」

守屋「『ネチネチしている』と書いておいてください!」

瀬下「図星だから腹が立つ(笑)。でも、本当に安藤さんは監督に向いていますよね。終わったら忘れて次に行けるのっていいなあって思います」

――大変だったことで特に印象に残っていることはありますか?

安藤「うーん…」

守屋「例えば、テレビと映画ではどちらが大変だったとか」

安藤「それでいうと、映画でのクライマックスのシーンかな。大吹雪、稲光、建設者のレーザーと大変な状況で、またそこからの天変地異ですから…映像も音も含めてすごさを盛ったまま、わかりやすくまとまりをつけるのに苦労した…というより苦労かけさせたかな」

よりダイナミックに何度も修正したというクライマックスだが、安藤監督にとっては“楽しさ”が勝っていたそう
よりダイナミックに何度も修正したというクライマックスだが、安藤監督にとっては“楽しさ”が勝っていたそう[c]弐瓶勉/東亜重工開拓局


瀬下&守屋「優しい!」

守屋「あのシーンは僕も2回くらい追加オーダーしたのを覚えています。ダイナミックさを追加してほしいとか。監督は受け止めてくれましたね」

瀬下「やっぱり優しいですね」

安藤「というより、“これを機会にもっと作り込めるぞ!”という感覚でした」

守屋「プロデューサー発信の指示なので免罪符になった(笑)」

安藤「そうそう。『大変だけど頑張って』みたいなオーダーをいただきましたが、僕の中ではもう1回推敲できる安堵のほうが勝っていました。大きな声では言えませんが…」

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【イベント概要】
入場者特典付! 《東亜重工サーガ》 『BLAME!』『大雪海のカイナ ほしのけんじゃ』特別音響上映&スペシャルトーク

・実施日:2023年10月29日(日)
・実施劇場:川崎チネチッタ
・実施時間:13:00開映
※『BLAME!』『大雪海のカイナ ほしのけんじゃ』上映に続いてトークイベントあり

・登壇者(予定)
安藤裕章(『大雪海のカイナ ほしのけんじゃ』監督)
瀬下寛之(『BLAME!』監督)
吉平”Tady“直弘(『シドニアの騎士 あいつむぐほし』監督)
守屋秀樹(各作品プロデューサー)
※登壇者は、予告なく変更となる場合がございます。

スケジュールおよびチケット販売情報などの詳細はこちらをご確認ください。

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