『月』とはまた違った衝撃を観る者に叩きつけてくる『愛にイナズマ』など週末観るならこの3本!|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
『月』とはまた違った衝撃を観る者に叩きつけてくる『愛にイナズマ』など週末観るならこの3本!

コラム

『月』とはまた違った衝撃を観る者に叩きつけてくる『愛にイナズマ』など週末観るならこの3本!

週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!
週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!

MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、大事な夢を奪った世界へ反撃を開始する男女が主人公のエンタテインメント、“絶対に捕まらない男“を追う刑事を描くサスペンス、不屈の精神を持つ不死身の老兵の死闘を描いたバイオレンスアクションの、状況を打破しようともがく主人公が登場する3本。

私たちみんなの物語…『愛にイナズマ』(公開中)

【写真を見る】大事な夢を取り戻すため花子と正夫は反撃の狼煙をあげる(『愛にイナズマ』)
【写真を見る】大事な夢を取り戻すため花子と正夫は反撃の狼煙をあげる(『愛にイナズマ』)[c]2023「愛にイナズマ」製作委員会

』の衝撃が日本全国を駆け巡っている最中に、新たに放たれた石井裕也監督の最新作『愛にイナズマ』。辺見庸の原作がベースにあった前作と違い、石井監督が自らのオリジナル脚本を松岡茉優、窪田正孝のW主演で映画化した本作は、コロナ禍で理不尽な社会に翻弄され、マスクの下に素顔を隠して生きることが普通になった私たちみんなの物語だ。26歳の花子(松岡)は念願の映画監督デビューを目前に控えていた。だが、業界の古い常識を押しつけてくる助監督(三浦貴大)や卑劣なプロデューサー(MEGUMI)に大切な自分の企画を奪われ、すべてを失ってしまう。だが、彼女は諦めない。偶然出会った魅力的だけど、空気が読めない正夫(窪田)に励まされた花子は、10年以上音信不通だった家族と向き合い、反撃の狼煙を上げるが…。社会の凝り固まった常識や若い感性を認めない業界人、すべてを軽く流してなかったことにする悪しき慣習…そんな障害の前でもがき苦しみ、不甲斐ない自分と向き合いながら前を向く花子の姿には、かつての石井監督やいまも戦い続けている若きクリエイターの姿が重なる。思い当たることの数々に自分を投影する人も少なくないはずだ。

そして、そこから誰よりも実はやっかいで本性を身内には特に見せない、嘘で塗り固められた家族の問題へと真っ向から突き進む本作は、『月』とはまた違った衝撃を観る者に叩きつけてくる。花子の父親を演じた佐藤浩市、長男役の池松壮亮、次男役の若葉竜也ほか、贅沢すぎる豪華演技派陣が全力の芝居と感情をぶつけ合い、時に笑いを撒き散らしながら、石井監督ならではのタッチで真実を浮かび上がらせるのも痛快だ。個人的には、花子と彼女の家族、正夫の気持ちがひとつになるクライマックスがお気に入り!なにが起こるか分からない世の中。勇気を持って前に踏み出す花子の姿が、未来を生きる人たちの希望になるのは間違いない。(映画ライター・イソガイマサト)


ロドリゲスらしいトリッキーな構成…『ドミノ』(公開中)

娘の行方を探す刑事ダニー・ロークは、現実と見紛う“世界“に足を踏み入れていく『ドミノ』
娘の行方を探す刑事ダニー・ロークは、現実と見紛う“世界“に足を踏み入れていく『ドミノ』[c] 2023 Hypnotic Film Holdings LLC. All Rights Reserved. 

ロバート・ロドリゲスが長年構想を温めてきた、ベン・アフレック主演のアクションスリラー。愛娘が行方不明になり心に傷を負った刑事ローク(アフレック)は、娘の失踪に関わりがある謎めいた男デルレーン(ウィリアム・フィクナー)の存在を察知。彼の行方を追ったロークは、デルレーンが他人の脳を自由に操る政府機関の超能力者だと知らされる。

アルフレッド・ヒッチコックのスリラー映画にインスピレーションを受けた本作は、主人公が罠に落ちもがき苦しむ“巻き込まれ型スリラー“。ただし追う側と追われる側、騙す側と騙す側が二転三転しながら想定外の方向に走り出す、ロドリゲスらしいトリッキーな構成になっている。ネーミングやシチュエーションなど、あらゆるものがひっくり返されていく展開に、騙される快感を覚えるはず。思わず二度見したくなるギミック感や遊び心あふれる一本だ。(映画ライター・神武団四郎)

老兵が見せるフィンランドの「不屈の魂」…『SISU/シス 不死身の男』(公開中)

不屈の精神を秘めた老兵がナチス戦車隊と死闘を繰り広げる『SISUシス 不死身の男』メイン
不屈の精神を秘めた老兵がナチス戦車隊と死闘を繰り広げる『SISUシス 不死身の男』メイン[c] 2022 FREEZING POINT OY AND IMMORTAL SISU UK LTD. ALL RIGHTS RESERVED. 

フィンランド発の「ナメてた相手が凄いヤツ」系アクション映画が上陸!第二次世界大戦末期、ソ連に攻め込んだナチス・ドイツ軍は東部戦線で敗退。撤退の際に、ドイツ軍の戦車部隊は自ら掘り当てた金塊を持つみすぼらしい老兵と遭遇する。ドイツ兵たちは老兵から金塊を奪うが、彼は300名以上のソ連兵を殺してきた伝説を持つ「不死身」と言われる兵士だった…。

映画のタイトルとなっている「SISU」とは、翻訳できない言葉でフィンランドに伝わる古き良き精神であり、例えるなら想像を超えるほどの意思の強さを指すとされる。主人公の老兵アアタミ(ヨルマ・トンミラ)はその「SISU」を持つ者とされ、どんなに傷つきながらも不屈の精神で状況を切り抜け、ツルハシ1本でドイツ兵たちを追い詰めていく。戦争状況を舞台としたアクションエンタメであり、「ナメてた相手が凄いヤツ」系譜にある作品だが、タイトルに込められた「精神性」がひとつの柱として描かれているのが特徴。スカッと爽快な欧米のアクション映画とはひと味違う、東ヨーロッパの風土や雰囲気が醸し出す独特の空気感を映像越しに味わうことができるアクション映画となっている。(映画ライター・石井誠)

映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。

構成/サンクレイオ翼

関連作品

  • SISU/シス 不死身の男

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    不屈の精神を持った伝説の老兵がたった一人でナチスの戦車隊と戦うバイオレンスアクション
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  • ドミノ

    3.5
    1603
    娘の失踪に関わっていると思われる男を追う刑事が、現実と見紛う世界に足を踏み入れていくサスペンス
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  • 4.1
    966