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『BLOODY ESCAPE』谷口悟朗監督が語る、監督業への向き合い方「“どんなものでもやります“という、専門を持たないやり方」

インタビュー

『BLOODY ESCAPE』谷口悟朗監督が語る、監督業への向き合い方「“どんなものでもやります“という、専門を持たないやり方」

「本当は子ども向けのアニメシリーズを作りたかったんです」

2023年に監督デビュー25周年を迎えた谷口監督。ターニングポイントとなった作品は「アルプスの少女ハイジ」だと話す。「子どものころに観ていたんですが、高校生になった時にふと夕方の再放送で改めて観て、価値を再発見しました。あまり深く考えずに何気なく観ていたけれど、ちょっととんでもないことをやっている作品だぞ、と目が覚めました」と衝撃度を解説。

【写真を見る】登場人物全員ヤバすぎ!内田雄馬演じるジャミとの友情ドラマが熱い
【写真を見る】登場人物全員ヤバすぎ!内田雄馬演じるジャミとの友情ドラマが熱い[c]2024 BLOODY ESCAPE製作委員会

「中学、高校生ってインプットされてくる知識に対しての感度が一番高いころ。当時はサブカル的な知識がバーッと広がってきていた時期で、アニメ、漫画、映画、音楽などをいろいろと吸収していた時期でした。音楽だったらYMOを聴いているのは普通だし、寺山修司とか安部公房なんかは基礎中の基礎じゃない?みたいな感じで。演出的なところで当時の私が意識していたのは、大島渚監督、押井守監督、森田芳光監督、相米慎二監督たち。そういった面々の作品が一番イケてるんだろうと思っていたけれど、『アルプスの少女ハイジ』を観た瞬間に全部吹き飛んじゃったんです、『なんじゃこりゃ!』って。これは大きな出来事だったし、間違いなくターニングポイントだと言えます」と断言した。

「不滅騎士団」には超個性的なキャラクターが集結している
「不滅騎士団」には超個性的なキャラクターが集結している[c]2024 BLOODY ESCAPE製作委員会

「アルプスの少女ハイジ」で衝撃を受けるも、興味があったのは実写や演劇だった。「だから日本映画学校に行っちゃったわけです」とニヤリ。「私は第一期生で、優秀なのがわらわらいる時代。普通にいまでも活躍している人達がいっぱいいます」と誇らしげに語る。それがどうしてアニメの世界へと足を踏み入れることになったのか。「テレビもやった関係で、実写はとりあえず一通りかじりました。でもアニメはなにもやったことがない。やってダメだったら実写に戻ってくればいい、実写はいつでも人手不足だから、戻ってきてもなんとかなると思って、一旦アニメのほうに来ちゃったんです」と微笑む。「やってみようかな」という軽い気持ちで足を踏み入れたアニメの世界だが、やりたいことは明確にあった。「本当は子ども向けのアニメシリーズを作りたかったんです」と明かす谷口監督だが、時代の流れもあり「なんとなくアニメの世界でオリジナルのものがたまたまうまく行っちゃったんですよね。その後、私に子ども向けのアニメーションの企画もなにも提示される隙間もないまま、まあいいかと受けたのが『ONE PIECE FILM RED』でした」と語る。

殺された親分の敵討ちを誓うヤクザたちも参戦して大抗争に…!
殺された親分の敵討ちを誓うヤクザたちも参戦して大抗争に…![c]2024 BLOODY ESCAPE製作委員会


実は谷口監督はテレビアニメが始まる前の1998年に、監督デビュー作となる「ONE PIECE 倒せ!海賊ギャンザック」を手掛けている。そして、実に約24年ぶりにシリーズに関わり、アンコール上映を含めてシリーズ歴代最高の興行収入200億円を突破した『ONE PIECE FILM RED』 に対しては、「いい景色を見させていただきました。感謝しています」としみじみ振り返る。「オファーの際にプロデューサーから『100億を突破してほしい』と言われた時は、ちょっとこの人頭おかしいとは思いましたね(笑)。東映グループ全体でも100億円は超えたことがないですし、『ONE PIECE』にいたっては基本的に20~60億くらいの作品。当時は『劇場版 名探偵コナン』ですら100億を超えていないというのになにを言っているんだと。ただ、そう言ってくれたからこそ乱暴な手が打てたわけです。外部からのスタッフも何人か引き連れて作ることも出来たわけですから」とうれしそうに話す。

そして、『ONE PIECE FILM RED』でもフジテレビのプロデューサーの存在が大きかった。「梶本(圭)プロデューサーが監督の意向を尊重しますと言ってくださり、これは本当にありがたいことでした」と笑顔を見せる。「『ジャングル大帝』で初めてフジテレビさんと関わったころから、フジテレビのアニメに対する考え方がしっかりしていること、そしてそれが受け継がれているなと感じています」と想いを語り、「『ONE PIECE FILM RED』であれだけの興行成績を叩き出せたことは、少なくとも数年は名前が残るということ。やっぱりそれはスタッフに対して一番のお土産になると思っています。あの作品で私にできるお礼、お返しはそれしかない。うれしいに決まってますよね」と満足の表情を浮かべた。

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