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劇場版最新作がついに公開!世界中の子どもたちを魅了する「パウ・パトロール」はなぜ北米で大ヒットを記録したのか

コラム

劇場版最新作がついに公開!世界中の子どもたちを魅了する「パウ・パトロール」はなぜ北米で大ヒットを記録したのか

“子ども向け”であることは大きな強みになる!

アニメだけでなく玩具やゲームでも人気沸騰
アニメだけでなく玩具やゲームでも人気沸騰[c] 2023 Paramount Pictures. All rights reserved.

テレビアニメは今年で放送開始10周年を迎え、すでに北米ではシーズン10まで放送されている。スペシャルエピソードや短編作品も数多く制作されており、初の劇場用作品となった先述の『パウ・パトロール ザ・ムービー』は北米興収4000万ドル以上を記録。コロナ禍の余波が少なからず残っているタイミングだったとはいえ、2600万ドルの制作費の回収に成功し、全世界興収は1億4400万ドルを記録。とりわけドイツ、イギリス、フランス、中国で大ヒットを記録した。

北米のアニメーション映画界では近年、特に大きな変化が見られはじめている。コロナ禍に突入した当初、“映画館離れ”と“配信サービスの台頭”の影響を真っ先に受けたのが幼児、児童を含む若年層の子どもたちをターゲットにしたアニメ作品。『トロールズ ミュージック★パワー』(20)が即座にPVOD配信に踏み切り大成功を収め、同ジャンルを牽引するディズニーも多くの作品を自社の配信サービスでの公開にシフトし、数年が経った現在も劇場公開作が興行的苦戦を強いられることが頻繁に起きている。

キャラクターの魅力やストーリーで子どもたちの心をキャッチ
キャラクターの魅力やストーリーで子どもたちの心をキャッチ[c] 2023 Paramount Pictures. All rights reserved.

また、そうした興行的に伸び悩む作品の傾向として、子ども向けであることに振り切らずに大人のノスタルジーを刺激する、よくいえば“全年齢向け”をねらった作風が挙げられるだろう。一昔前までは“子ども向け”と考えられ侮られがちだったアニメーションが、大人でも楽しめるコンテンツになったことは非常に大きな価値がある反面、その分“棲み分け”は重要となってくる。

そのなかで「怪盗グルー」シリーズをはじめとしたイルミネーション・エンターテインメント作品や、大人のノスタルジーと子どもでも受け入れやすい娯楽を絶妙に共存させた『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(23)が大ヒットとなったのは、子どもが観ることも念頭において、もしくは最優先に考えて作られていたからであろう。

子どもに連れられて観た大人もハマる人が続出!
子どもに連れられて観た大人もハマる人が続出![c] 2023 Paramount Pictures. All rights reserved.

幼い子どもが観たがれば、自ずと保護者も映画館に同伴する。仮に配信で手軽に観ることができたとしても、映画館での鑑賞が文化として根付いた北米では選択肢のなかから映画館はそう簡単に外れることはなく、息の長い興行が見込める。比較的安価な制作費であれば収益も黒字になりやすく、さらに次の作品へと繋がり、コンテンツ自体の人気も持続し、次の世代にも広まるきっかけが生まれる。

コンテンツとしての強さを10年かけて確たるものにしてきた「パウ・パトロール」は、まさにその最たる例。今作『パウ・パトロール ザ・マイティ・ムービー』では、制作費3000万ドルを瞬く間に回収。北米では2か月ほどの上映期間で興収6523万ドルに到達し、全世界興収では2億ドルに迫るほど。これは幼児向けカートゥーンアニメの劇場版としては「スポンジ・ボブ」シリーズや『ラグラッツ・ムービー』(98)を凌駕する、10年に1度の大成功だ。一人ひとりが観る期間は決して長くないにもかかわらず、意外なほど入れ替わりの少ないのが幼児向けコンテンツの特徴。今後も世界的に見れば“パウパト”の時代は続いていくことだろう。


日本でも着実に人気を集めつつある
日本でも着実に人気を集めつつある[c] 2023 Paramount Pictures. All rights reserved.

ちなみにここ日本では、2019年からテレビ東京系6局ネットでテレビアニメシリーズが放送されており、各種配信サービスでも視聴可能。前作『パウ・パトロール ザ・ムービー』は日本上陸からわずか2年での公開でありながら、週末動員ランキングでトップテン入りを果たした。あれからさらに2年。日本の子どもたちにも着実に浸透してきたなかで公開を迎えた最新作は、どんな反応を集めるのか。いま世界中の子どもたちになにが流行っているのか気になった大人たちも、是非とも映画館に足を運んで“パウパト”たちの虜になってみてはいかがだろうか。

文/久保田 和馬

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