『PERFECT DAYS』で脚光を浴びるヴィム・ヴェンダース監督とは?『都会のアリス』『パリ、テキサス』名作8選からその原点を探る - 2ページ目|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
『PERFECT DAYS』で脚光を浴びるヴィム・ヴェンダース監督とは?『都会のアリス』『パリ、テキサス』名作8選からその原点を探る

コラム

『PERFECT DAYS』で脚光を浴びるヴィム・ヴェンダース監督とは?『都会のアリス』『パリ、テキサス』名作8選からその原点を探る

同名小説を映画化したクライムサスペンス『アメリカの友人』

パトリシア・ハイスミスの小説を映画化した『アメリカの友人』
パトリシア・ハイスミスの小説を映画化した『アメリカの友人』[c]EVERETT/AFLO

脚本がないままに撮影を進めた『さすらい』から一転、ヴェンダースは、大好きな作家パトリシア・ハイスミスの同名小説「アメリカの友人」の映画化に挑戦する。絵画の贋作を売り捌くアメリカ人のリプリー(デニス・ホッパー)は、オークション会場で額縁職人のヨナタン(ブルーノ・ガンツ)と出会い、多額の報酬を餌にある殺人を依頼。奇妙な縁で結ばれた2人の男の運命は、予期せぬ事態へと発展していく。

主演は、当時ハリウッドから遠ざかりつつあったデニス・ホッパー。『太陽がいっぱい』(60)でアラン・ドロンが作り上げたトム・リプリー像とはまったく違う、テンガロンハット姿のトム・リプリーを演じ、人々を驚かせた。自分が余命わずかだと信じ込み、家族のために殺人を引き受けるヨナタン役は、のちに『ベルリン・天使の詩』(87)に主演するブルーノ・ガンツ。ニコラス・レイ、ダニエル・シュミット、ジャン・ユスターシュら、ヴェンダースが敬愛する映画監督たちが俳優として多数出演しているのも本作の見どころ。

デニス・ホッパーが作り上げた新しいトム・リプリー像(『アメリカの友人』)
デニス・ホッパーが作り上げた新しいトム・リプリー像(『アメリカの友人』)[c]EVERETT/AFLO

ヨナタンとリプリーは、殺人を遂行するため、ハンブルクからパリへと移動し、列車内で格闘したかと思えば、猛スピードで車を走らせる。サスペンスに満ちたこの物語もまた、孤独な者たちのロードムービーなのだ。

自身の苦い映画づくりの体験を反映した『ことの次第』

ヴィム・ヴェンダース監督が自身のハリウッドでの苦い映画制作経験を反映させた『ことの次第』
ヴィム・ヴェンダース監督が自身のハリウッドでの苦い映画制作経験を反映させた『ことの次第』[c]EVERETT/AFLO

映画作家の多くは、しばしば自己言及的な映画をつくる。フェデリコ・フェリーニは『8 1/2』(63)で映画監督の苦悩と夢想を描き、フランソワ・トリュフォーは『映画に愛をこめて アメリカの夜』(73)で映画撮影の現場で起こる騒動を描いた。そして『ことの次第』(82)は、ヴェンダースが監督としての自身の姿を映しだした映画だ。

『アメリカの友人』で評価を得たヴェンダースは、フランシス・フォード・コッポラにハリウッドへ招かれ、『ハメット』(82)の監督を引き受ける。だが製作資金の問題などで撮影はたびたび中断。そのごたごたの合間にポルトガルへ向かい、低予算で撮影を始めたのがこの『ことの次第』。物語は、ポルトガルでSF映画のリメイクに挑む映画クルーが、資金難のために撮影中止を余儀なくされ、異国の地で無為な時間を過ごすというもの。

第39回ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞した『ことの次第』
第39回ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞した『ことの次第』[c]EVERETT/AFLO


『ことの次第』には、『ハメット』で体験したヴェンダースの苦難がはっきり反映されている。自身の体験をもとに、映画製作の壁にぶち当たる人々の物語を描くなかで、映画とはなにか、映画を撮るとはどういうことか、という問いが浮かび上がる。その問いは、ヴェンダース映画に一貫したテーマでもあるはずだ。

映像美にも注目!傑作ロードムービー『パリ、テキサス』

テキサスの荒野を放浪する男の妻子との再会と別れを描く『パリ、テキサス』
テキサスの荒野を放浪する男の妻子との再会と別れを描く『パリ、テキサス』[c]EVERETT/AFLO

ドイツで映画をつくりながら、ヴェンダースは常にアメリカの風景に憧れ、自分なりのアメリカ映画をつくろうとしてきた人だ。だからこそ、アメリカを舞台に、一人の男のテキサスからロサンゼルス、ヒューストンまでの旅を描いた『パリ、テキサス』(84)は、彼の長年の願望を叶えた映画だった。ヴェンダース自身、この映画をつくったことで自分はアメリカ映画への執着からようやく解放されたとインタビューで語っている。

原作・共同脚本を手掛けたのは、劇作家で俳優のサム・シェパード。テキサスの砂漠を彷徨っているのを発見された一人の男(ハリー・ディーン・スタントン)。実は彼は、4年前に妻子を捨て行方不明になっていた男だった。妻子へと会いにいく彼の旅を通して、狂おしいほどの愛の物語が奏でられる。

男の心象を、アメリカ西部の荒涼とした砂漠に投影させる(『パリ、テキサス』)
男の心象を、アメリカ西部の荒涼とした砂漠に投影させる(『パリ、テキサス』)[c]EVERETT/AFLO

ハリー・ディーン・スタントンの赤いキャップ。ナスターシャ・キンスキーのショッキングピンクのニット。荒涼とした砂漠に広がる真っ青な空。長年ヴェンダースとの協働を続けてきた撮影監督のロビー・ミュラーが手掛けた映像は、赤と青のイメージによって形成され、その鮮烈な美しさによって人々を魅了した。

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