【ネタバレあり】山崎貴監督との裏話も!?「寄生獣 -ザ・グレイ-」ヨン・サンホ監督が語る原作へのリスペクトと確固たるオリジナリティ - 2ページ目|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
【ネタバレあり】山崎貴監督との裏話も!?「寄生獣 -ザ・グレイ-」ヨン・サンホ監督が語る原作へのリスペクトと確固たるオリジナリティ

インタビュー

【ネタバレあり】山崎貴監督との裏話も!?「寄生獣 -ザ・グレイ-」ヨン・サンホ監督が語る原作へのリスペクトと確固たるオリジナリティ


“ヨンニバース"を支える俳優陣に新加入!「スインは新しい見知らぬ魅力を持つ俳優に演じてほしかった」

 裏社会で生きてきたチンピラのガンウは、失踪した妹を探す中で寄生生物に遭遇する
裏社会で生きてきたチンピラのガンウは、失踪した妹を探す中で寄生生物に遭遇する[c]Netflixシリーズ「寄生獣 -ザ・グレイ-」独占配信中/[c]岩明均/講談社

独自のジャンル的な世界観を広げ続けているヨン・サンホ監督の作品は、“ヨンニバース"(ヨン・サンホ+ユニバース)”という異名で称される。こうした哲学を支えるためには、キャスティングも重要だ。ク・ギョファン、チョルミン刑事役のクォン・ヘヒョ、寄生生物特殊対策チーム長役のイ・ジョンヒョンとは、『新感染半島 ファイナル・ステージ』(20)、ウォンソク刑事を演じるキム・イングォンは『呪呪呪/死者をあやつるもの』(21)に続いての起用だ。

同じ俳優との再タッグが多い理由についてヨン・サンホ監督は「キャラクターを作る際、ある特定の人物や自分がよく知っている人物像に置き換えて描くことがあります。過去に撮影を共にした経験のある俳優の方々だと皆さんの強みがより明確に見えるので、その特徴を考えながら作り上げることが多いんです」と明かした。一方でスインに抜擢されたチョン・ソニは、初めてヨン・サンホ組に加わったニューフェイスだ。

オファーを受けたチョン・ソニは“寄生生物が地球に襲来する”というストーリーに興奮したという
オファーを受けたチョン・ソニは“寄生生物が地球に襲来する”というストーリーに興奮したという[c]Netflixシリーズ「寄生獣 -ザ・グレイ-」独占配信中/[c]岩明均/講談社

「スインあるいはハイジについては、元々私が知っている俳優ではなく、新しい見知らぬ人物にお願いしたい気持ちがありました。オファーする以前、チョン・ソニさんのインディペンデント映画をとても楽しく拝見していて、ぜひ機会があればご一緒したいと思っていた気になる俳優さんでした。今回期待する気持ちを込めて、ご一緒させていただくことになったんです」

「寄生獣 -ザ・グレイ-」で投げかけた根源的な問い“人間は誰かと共生できるのか?”

宗教団体“新真理会”を装う寄生生物たちの集団
宗教団体“新真理会”を装う寄生生物たちの集団[c]Netflixシリーズ「寄生獣 -ザ・グレイ-」独占配信中/[c]岩明均/講談社

ヨン・サンホ作品に共通して描かれ続けてきたテーマに、“家族”がある。『新感染 ファイナル・エクスプレス』(16)では、大切な家族がゾンビというまがまがしいものに変わり果てる悲劇を描き、ドラマ「先山」は韓国の伝統的家族観をオカルティズムと融合させた。「寄生獣 -ザ・グレイ-」でも、ジュンギョンは家族が寄生生物に乗っ取られてしまうことで苦しみ、血のつながった家族から冷遇されていたスインは、逆にハイジとは家族にも似た奇妙な絆を結ぶ。原作から受け取った“共生”というテーマを深化させるとともに、こうした一貫した主題も盛り込まれている。ヨン・サンホ監督は「ストーリーを作る時、“共生”、そして人間が共存のために集まって一つの形を出す“組織”について考えたんです。確かに家族というのは、その形態の一つだと言えるかもしれませんね」と答えたのち、こう続ける。描こうとしたのは、家族や既存の組織の解体と、新たな共同体の模索だ。

「ドラマには様々な“組織”が登場しますよね。家族はもちろん、ガンウが属していた暴力団もその一つですし、警察や宗教団体などあらゆる“組織”が描かれます。ただ人間が作り上げたこうした集団は、作品ではポジティブな存在として描かれていません。スインの家族も、警察組織も宗教団体もそうです。善いものでは決してない“組織”というものに属さず、人間は一人で生きていくべきなのか?という問いが投げかけられます。でも、答えとしてはそんなことはないですよね。だとすれば、人間が共存する上でどんな形態があるべきなのか?どうすれば人間は連帯していくことができるのか?それを伝えたかったのです」

正義よりも思惑と野心ばかりがうごめく警察組織
正義よりも思惑と野心ばかりがうごめく警察組織[c]Netflixシリーズ「寄生獣 -ザ・グレイ-」独占配信中/[c]岩明均/講談社

そして、ラストシーンに驚嘆した視聴者も多いだろう。ルポライターを名乗る「泉新一」という男を演じているのが、邦画界をリードする若手スター、菅田将暉なのだ。

「新一が登場してドラマが終わる…というのが、私にとってとても重要でした。「寄生獣 -ザ・グレイ-」は原作のリメイクでありつつも、同じ世界観を共有する拡張したストーリーだということを、ラストのワンシーンで視聴者に直感的に感じ取ってもらえるのではないでしょうか。以前、菅田将暉さんの『あゝ、荒野 前篇/後篇』(17)を観たとき、少年のような顔と真剣な眼差しに惹かれました。この大事なキャラクターを誰にお願いするかと考えていたとき、あの顔と眼差しが泉新一にとても似通っていると思ったんです」。

果たして、新一とスイン/ハイジの遭遇はあるのだろうか?「寄生獣 -ザ・グレイ-」の未知なる展開に、否が応でも期待感が高まるというものだろう。


取材・文/荒井 南


関連作品