神田伯山、『クラユカバ』で声優初主演「鬼のような現場」と大苦戦!塚原重義監督は第一声で「息を呑んだ」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
神田伯山、『クラユカバ』で声優初主演「鬼のような現場」と大苦戦!塚原重義監督は第一声で「息を呑んだ」

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神田伯山、『クラユカバ』で声優初主演「鬼のような現場」と大苦戦!塚原重義監督は第一声で「息を呑んだ」

2023年ファンタジア国際映画祭の長編アニメーション部門「観客賞・金賞」を受賞した長編アニメーション映画『クラユカバ』の初日舞台挨拶が丸の内TOEIで開催され、神田伯山、黒沢ともよ、芹澤優、坂本頼光、原作・脚本・監督を務めた塚原重義が登壇。声優初主演を務めた伯山が、「鬼のような現場」と苦戦したことを明かした。

【写真を見る】黒沢ともよ、芹澤優も登壇!『クラユカバ』初日舞台挨拶の様子
【写真を見る】黒沢ともよ、芹澤優も登壇!『クラユカバ』初日舞台挨拶の様子

長年にわたり個人映像作家として活動してきた塚原監督、初めての長編アニメーション映画となる本作。探偵の荘太郎が、奇怪な集団失踪事件を追って、謎多き地下世界“クラガリ”に足を踏み入れていくミステリーだ。主人公の荘太郎役を講談師の六代目神田伯山が務めた。

主人公の荘太郎役を講談師の六代目神田伯山が務めた
主人公の荘太郎役を講談師の六代目神田伯山が務めた

「鬼のような現場でしたね。鬼がいた」と切りだした伯山は、「声優さんというのはスペシャリスト。声優ではない素人が参加するにあたって、最高の環境を整えてくれた。忌憚なく『もう一回お願いします』と言っていただいた」とテイクを重ねたことを告白。「僕も何度も録り直すのは、好きなんです。ラジオでもそうですし、古典芸能というのは再放送ですから。本当に苦ではない」という伯山だが、「今回初めて苦になりまして。鬼がいるなと思った」とくじけそうになった振り返る。同時に「結果的にこれだけ一生懸命にやると、いい作品になって、塚原監督の初の長編アニメーションに恥じないものになれたとしたら光栄」と充実感について語った。

神田伯山と塚原重義監督のやり取りに会場も大笑い!
神田伯山と塚原重義監督のやり取りに会場も大笑い!

塚原監督に伯山を紹介したのは、探訪記者・稲荷坂を演じた坂本だという。坂本は「監督から作品や荘太郎というキャラクターの構想を聞いていると、伯山さんの声質、喋り方がいいなと思った」と回想。上映後の会場に坂本が「皆さん、伯山さんの荘太郎。よかったでしょう?」と語りかけると、同意を表現するように大きな拍手が上がるひと幕もあった。塚原監督は「最初は冒険だった。主演で、一番セリフが多いキャラクター。声優ではない方にやってもらうとどうなるか。そういった化学反応に期待もしたけれど、不安もあった」と素直に吐露し、「最初の『はい、大辻探偵社』というセリフを言っていただいた瞬間に、『ああ、荘太郎がいる』と周りのみんなも息を呑んだ」とそのハマり具合を絶賛した。

ただアフレコの完走までには苦労もあったそうで、塚原監督は「伯山さんが『監督、僕は声優じゃないんで。無理ですよ。他の声優さんでいいんじゃないですか』と言っていた」と降板を申し入れるほど苦戦していたとぶっちゃけ。これには伯山も「そんなトーンじゃない!」とタジタジになりながら、「ものづくりの現場は、そういうほうがいい作品ができるといいますもんね。それくらいお互いが感情的になるくらいのほうが楽しいですよね」と笑顔を見せていた。

伯山から受けた刺激も語った黒沢ともよ
伯山から受けた刺激も語った黒沢ともよ

また“クラガリ”を走る装甲列車、通称“鬼の四六三”の列車長であるタンネ役の黒沢と、探偵社に居着いている天涯孤独な情報屋の少女・サキ役の芹澤が、オーディション当初はお互いに逆の役を受けていたことも明かされた。芹澤は「サキは男の子なのか、女の子なのかわからないようなデザイン。どんな感じで演じたらいいんだろうと思った。吐息や細かいところから出てくるサキの表情がかわいらしくて、キュンとした」とキャラクターに愛情を傾けていたが、黒沢は「傾向でいくと、これまではたぶん私のほうがサキっぽい女の子をやる機会が多くて、優ちゃんのほうがスッとした女の子の役が多かった。新たな機会をいただけてうれしかった」と芹澤と顔を見合わせて、うれしそうに目尻を下げていた。


サキに愛情を傾けた芹澤優
サキに愛情を傾けた芹澤優

構想から10年。2回のクラウドファンディングを経てついに完成した本作。塚原監督は「企画がなかなか通らない時期が長く続いて、クラウドファンディングを行った。完成していない状態が、自分にとって普通の状態だった。それだけに公開日を迎えて、知らない世界に来ているよう。まだふわふわしています」と照れ笑い。「ここまでの道のりは長かったですが、演者の皆さん、スタッフの皆さんのおかげでどうにかこの場に辿り着くことができた」と感謝を伝えた。伯山は「“クラガリに曳ひかれるな”というセリフがとても印象深い。世の中がどんどんクリーンな世界になっていって、それはとてもいいことだけれど、人間には光もあれば影もある。令和の世の中に、“クラガリというものは、実は結構面白いよ”という点が描かれているのがすてき」と完成作の魅力を語り、「携われて光栄」と改めて喜びを噛み締めていた。

※塚原重義の塚は旧字体が正式表記

取材・文/成田おり枝

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