作家・松久淳が好きな俳優第2位、ユ・ヘジン主演のラブコメについて熱く語る!|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
作家・松久淳が好きな俳優第2位、ユ・ヘジン主演のラブコメについて熱く語る!

コラム

作家・松久淳が好きな俳優第2位、ユ・ヘジン主演のラブコメについて熱く語る!

全国11チェーンの劇場で配布されるインシアターマガジン「シネコンウォーカー」。創刊時より続く、作家・松久淳の人気連載「地球は男で回ってる when a man loves a man」。今回は、松久淳が俳優のなかで2番目に好きだと語る韓国俳優ユ・ヘジンの主演作『マイ・スイート・ハニー』(公開中)を紹介します。

【写真を見る】お金の貸し借りから始まった関係、食事をしたりドライブをしたりするうちに、どんどんチホ(ユ・ヘジン)の胸が苦しくなっていき…!?
【写真を見る】お金の貸し借りから始まった関係、食事をしたりドライブをしたりするうちに、どんどんチホ(ユ・ヘジン)の胸が苦しくなっていき…!?[c]MINDMARK Inc. & MOVIEROCK ALL RIGHT RESERVED

黄金の起承転結で描く、好きな俳優2位主演のラブコメ

この連載の古くからの読者の方には耳にタコなことをまた書きますが、ラブコメとは「男女が出会う」「恋に落ちる」「別れる」「再び出会う」という黄金の起承転結で成り立ってます。
なので大事なのは物語ではなく、おもしろい設定やひねった台詞や印象深い小道具、キャラの立った恋敵や拍手したくなるようなコメディリリーフなのです。なにを語るかではなく、いかに語るか。

というわけで、今回の韓国映画『マイ・スイート・ハニー』は、もうそんな決まりごとを絵に描いたような安心ラブコメです。
しかも主演は、私の好きな俳優ランキング(ヒュー・グラントに次いで)2位を、いつもマッツ・ミケルセンと競ってる、ユ・へジン!…ユ・へジン!?

天才的な味覚を持つ製菓会社の研究員チホを、『梟ーフクロウー』(24)に出演したユ・ヘジンが演じる
天才的な味覚を持つ製菓会社の研究員チホを、『梟ーフクロウー』(24)に出演したユ・ヘジンが演じる[c]MINDMARK Inc. & MOVIEROCK ALL RIGHT RESERVED

天才的な味覚をもつお菓子の研究員で、いつも時間どおり規則正しく生活してるおもしろみのない男チャ・チホ。そんな彼が兄の肩代わりで借金を返すことになって、ローン会社で働くシングルマザーのイ・イルヨンと出会い…というザ・ラブコメの導入なんですけど、この映画、いままでのラブコメとなにが違うってその年齢設定。

チホ45歳(演じるユ・へジンは現在54歳)、イルヨン41歳(演じるキム・ヒソン現在46歳)。
いやあ、ついにここまできたかと、長年ラブコメを追っかけてきた私は実に感慨深かったです。いまの40代は確かに若いですけど、昭和だったら限りなく老人に近い中年。
でもこれが、ちゃんと成立してるんですよね。娘はもう大学生のシングルマザー、イルヨンは、気の強さとパワフルさが逆にかわいく見えるし、チホ、というかユ・へジンは怒ろうと困ろうと照れようと、そもそもかわいいし(おじさんがおじさんを本気でほめてます)。ちゃんとこの年齢のラブコメで、キュンとさせてくれるのだからすばらしい。

12年に韓国で放送されたドラマ「シンイ-信義-」 でヒロインを演じたキム・ヒソンが前向きなヒロインを演じる
12年に韓国で放送されたドラマ「シンイ-信義-」 でヒロインを演じたキム・ヒソンが前向きなヒロインを演じる[c]MINDMARK Inc. & MOVIEROCK ALL RIGHT RESERVED


ところで話はがらっと変わりますが、『トップガン マーヴェリック』の個人的な名シーンは、トム・クルーズ(60歳前後)がジェニファー・コネリー(50代前半)の部屋でいちゃついて、「やばい、娘が帰ってきた」と、そっと2階の窓から飛び降りたら、ジェニファーの娘(15歳くらい)に「ママを泣かせないでよ」とたしなめられるところでした。『マイ・スイート・ハニー』にも近いシーンがあります。

これ、昔の青春映画などでは真逆で、高校生男子が女の子の部屋に潜り込んだけど、「パパが帰ってきちゃった!」で慌てて逃げ出すのが定番だったはず。
実際に『トップガン マーヴェリック』あたりから、10代をほったらかして中高年が恋したり張り切ったりする映画が増えたような気がします。22年公開の『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』、『スクリーム』『ゴーストバスターズ/アフターライフ』あたりは、かつての若者キャストが歳取ってからカムバック&大活躍。
映画を作る層も観る層もそうなってきてるからでしょうか、という分析は専門家におまかせしますが、もはやラブコメも20代、30代のものではなくなってきてるのだなとは感じます。

というわけで同世代ユ・へジンの恋の行方を見守ったあとで、よし、私も彼女つくろうと思ったのでした。なに言いだしてんだ私。

文/松久淳


■松久淳プロフィール
作家。著作に映画化もされた「天国の本屋」シリーズ、「ラブコメ」シリーズなどがある。エッセイ「走る奴なんて馬鹿だと思ってた」(山と溪谷社)が発売中。

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