坂本龍一、初めての映画音楽『戦メリ』は「やらせて」と自ら打診。運命変えた一言|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
坂本龍一、初めての映画音楽『戦メリ』は「やらせて」と自ら打診。運命変えた一言

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坂本龍一、初めての映画音楽『戦メリ』は「やらせて」と自ら打診。運命変えた一言

第30回東京国際映画祭で「SAMURAI賞」を受賞した音楽家・坂本龍一が、11月1日に六本木アカデミーヒルズで行われた「坂本龍一スペシャルトークイベント〜映像と音の関係〜」に登壇。これまでの軌跡を振り返り、数々の名匠との貴重な裏話を明かした。

「SAMURAI賞」は、時代を切り開く、革新的な作品を世界に発信し続けてきた映画人に贈られる賞。坂本が初めて映画音楽に携わったのは、役者としても出演した大島渚監督の『戦場のメリークリスマス』。坂本は「僕からオファーしたんですよ」と振り返る。

「大島渚さんがオフィスに来られて『僕の映画に出てください』と。僕は何を血迷ったのか、『音楽もやらせてくれるなら出てもいい』みたいなことを言って。何を考えているんだか(笑)」と直訴したそう。「大島さんはその場で『はい、お願いします』と言うんです。僕はズブの素人。役者も初めて、映画音楽も初めて、生まれて初めてのことが2つも重なった。大島さんは勇気がある。賭けです」と楽しそうに語る。

数々の名匠ともタッグを組んで来た。ベルナルド・ベルトルッチ監督の『ラストエンペラー』では、「『戦場のメリークリスマス』でシンセでやって手応えがあったので、シンセでやりかたった。ベルトルッチの前で『ロンドンにシンセを持って行って、こんな音も出ますよ』と披露した」のだそう。「でもベルトルッチに却下されちゃって。『衣擦れの音はどこだ、椅子の軋む音がしないじゃないか』と」と“きれいすぎる音”のため、NGが出たと明かす。

結果、オーケストラ中心で映画音楽を製作したが、「45曲持って行って、実際に使われたのは半分。半分はボツ」と告白。皇帝が戴冠式をするシーンでは、朗々とテーマ曲が鳴るイメージだったものが、ばっさりと音をカットされたとか。「ショックでしたね。泣きべそですよ。辛くて見れない」とこぼすと、会場も爆笑。

しかし「映画のためには音楽を切ってよかったのかなと、最近は思う」という坂本。「いい映画って、そんなに音楽は必要ないんですよ」と驚くような言葉を放ち、「音楽としてだけで存在する場合、映画の中の音楽とでは、存在の仕方が違う」と持論を話していた。

また観客からは「映画監督への意欲はあるか?」と聞かれる一幕も。坂本は「才能のない人がやっちゃいけない」とニッコリ。「『戦メリ』で映画に関わって、その後(北野)たけしさんは映画を作られている。大島(渚)さんと話したときに、『坂本くんはなぜやらない。お前は卑怯者だ!』と言われて。あの人、すぐ怒るんで」と楽しそうに回想し、「自分にはビジュアルの才能がない」と音楽一筋の思いを明かしていた。【取材・文/成田おり枝】

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