海軍から俳優へ“自分は自分”の人生を歩む個性派俳優アダム・ドライバーに注目|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
海軍から俳優へ“自分は自分”の人生を歩む個性派俳優アダム・ドライバーに注目

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海軍から俳優へ“自分は自分”の人生を歩む個性派俳優アダム・ドライバーに注目

多くの人にとっては『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』のカイロ・レンとして知られる米国俳優アダム・ドライバー。スティーヴン・ソダーバーグ監督の新作『ローガン・ラッキー』では、チャニング・テイタム演じるジミー・ローガンの弟役のクライドを演じている。クライドは元軍人で、義腕のバーテンダーという役柄だ。

「脚本が良かったから全くプレシャーはなかったよ。前にも『パターソン』で元軍人を演じたことがあったけど、両方とも元軍人であるという過去が、それぞれの人格を模っているというわけではない点が良かった。軍隊にいたからトラウマがあるに違いないとか、家では軍隊みたいな振る舞いをするとか、型にはまった元軍人像をこれまで多くの映画で観てきたからね」と元軍人を演じることいついて語る。実はアダム自身従軍の経験がある。その経験が演技に及ぼす影響とは何だろう。

「海軍にいたんだけど、そこでの経験は演技の上でとても役立っていると感じている。僕は普通のティーンエイジャーの生活から孤立し、身の危険の高い環境に置かれ、緊張やストレスを経験した。チームワークこそすべてという環境で生活した経験も、映画の仕事の助けになるし。ただ軍隊では行動が生と死の境目に直接つながるが、演技の場合はそのフリをしているだけ、というのが大きな違いだね」と指摘。映画作りというのは、多くの人が一丸となってやる作業、自分はその一部であるという心構えが大切だと語る。

 義肢をつけての演技は大変だったのだろうか。ハンディを描きつつ笑いを誘うなど、微妙なニュアンスが大切だったはず。

「義肢は役作りの大きな助けになった。クライドは真面目で思いやりがあり、そのせいで逆に事態に反応するのが遅すぎたりする。義肢に動きを制限されたことで、あまり動かないという演技もできた。兄のジミーはクライドとは生反対で、衝動的な行動をとる男なので、その対比も出せたと思うよ」とチャニング・テイタムとの共演を振り返る。

 長身189センチ、飄々とした雰囲気を漂わせながらも、時には鋭く光るやんちゃな瞳が彼の個性だ。軍人から演者へと転換した人生にも興味がわく。

「ハイスクール時代演技に関心があったが、成績もよくなくて演技の道に進むことを両親は納得しなかったんだ。9.11が起こった当時、僕は故郷の小さな町でアルバイトを転々としていたから、人生の展開もあまりなく、軍隊のほうが人生の可能性を大きく感じたんだ」

「海軍に入隊して、何もないところで生き延びる事を学んだ。それができると、普通の生活がずっと楽に思えたんだよ。それで退役して、演劇学校ジュリアードの門をたたいた。演劇を学ぶには最高の学校だと聞いたからさ。入試に落ちたらセントラルパークで野宿すればいいかな、って思ったんだ。でも、市民の問題が、軍隊の問題より解決が簡単だというのは間違った考えで、それは僕の抱いていた幻想だったんだ。解決方法が異なるだけなんだよ」。

取材・文/高野裕子(LONDON)

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