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「クローバーフィールド」最新作がNetflixに突然現れる!“サプライズ”を読み解く最速レビュー!

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「クローバーフィールド」最新作がNetflixに突然現れる!“サプライズ”を読み解く最速レビュー!

何の前触れもなしに突然配信が開始されたNetflixオリジナル映画『クローバーフィールド・パラドックス』。当初は「God Particle」(直訳すると「神の粒子」という意味になる)の題で2018年2月末に公開されると噂されていた本作だが、その後2017年10月末の公開に変更され、再び2018年4月公開に延期が発表されていた。

それにもかかわらず、日本時間の2月5日にいきなり全世界配信がスタート。これまでも公開まで徹底した秘密主義を貫くプロデューサー、J.J.エイブラムスの策略通り数多くのサプライズが行われてきた「クローバーフィールド」シリーズだけに、ここまでくると単なる驚きではなく喜びを感じてしまうほどだ。(1作目のはじまりがサプライズパーティだったのは今考えると伏線だったと思わずにはいられない)。

もっとも、全世界配信が行われたのはアメリカの国民的行事“スーパーボウル”の終了直後。例年映画館が静まり返るほど、国民の誰もが家庭で熱中し外出をしない“スーパーボウル・サンデー”だけに、Netflixでストリーミング配信される本作を大々的に売り出すにはもってこいのタイミングということだろう。

さて、簡単にシリーズを振り返ると1作目『クローバーフィールド/HAKAISHA』(08)では、突然ニューヨークの街に現れた“HAKAISHA”の脅威をくぐり抜けながら、恋人を救おうとする主人公の姿がPOVによって描き出された。タイトルを省き、首のない自由の女神像を描いただけのインパクト充分のポスタービジュアルだけで宣伝を打ったこともあいまって、そのアイデアの数々にパニック映画ファンは度肝を抜かれた。

そして2作目の『10 クローバーフィールド・レーン』(16)では一転して、2000年代に『ソウ』(04)などでブームが訪れたソリッド・シチュエーション・スリラーの様相を踏襲し、3人の男女がシェルターの中で生活する姿が描きだされた。直接的に前作とリンクすることない“精神的続編”として、別の世界の物語を作り出したのであるが、その油断を良い意味で裏切るクライマックスが待ち受けていた。

では今回の『クローバーフィールド・パラドックス』は、どのようなタイプの“クローバーフィールド”なのか。簡潔に言えば、またしても前2作とはまるで異なる作品と言って差し支えないだろう。エネルギー危機が訪れた地球を救うために、宇宙ステーションで実験を繰り返していたクルーたちが、謎の事故に巻き込まれて別次元の世界へと放出されてしまい、地球に戻るために奔走していく。

宇宙ステーションの中で繰り広げられるメインプロットの中で、見えない恐怖に怯えるクルーたちの姿は、まるでリドリー・スコットの『エイリアン』(79)などを想起させる、クラシカルなスペースSF映画のテイスト。国際色豊かなキャスティングもさることながら、徹底して作り込まれた美術や宇宙空間の映像の迫力を観ると、どうしても「劇場で観たい」という願いを抱いてしまう。

それにしてもタイトルに“パラドックス”とある通り、実に複雑に作り込まれたシナリオは、前2作との関係を考えながら観るにはあまりにも難解ではないだろうか。しかし、劇場と違って観終わってからすぐに何度も気になる場面を再生できるストリーミング配信の強みが、こういった部分にも活かされているのかもしれない。

シリーズ映画は少なからず、前作を観ていない観客のニーズに答えなくてはならないという壁にぶつかる。ひとつ言えることは、このシリーズは過去作をまだ観ていなくても問題がない作りである。そして、シリーズを隈なく追っている観客は、また“別次元”の作品として、リンクする瞬間を待ちながら観るのが相応しいのではないだろうか。

ところで本シリーズは1作目をのちに『モールス』(10)や「猿の惑星」シリーズを手掛けたマット・リーヴス、2作目はダン・トラクテンバーグ。そして今回はジュリアス・オナと、それぞれまったく無名の監督を発掘し、その手腕を試す役割も果たしている。今後毎年のようにシリーズが重ねられていくことが噂されているだけに、次なる展開はもちろんのこと、メガホンをとる新鋭監督たちにも注目していきたいところだ。

文/久保田和馬

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