こだわりすぎて肺炎に!?名優ダニエル・デイ=ルイスが見せる徹底した役作り|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
こだわりすぎて肺炎に!?名優ダニエル・デイ=ルイスが見せる徹底した役作り

コラム

こだわりすぎて肺炎に!?名優ダニエル・デイ=ルイスが見せる徹底した役作り

洗練された美しい映像や音楽、きらびやかな高級ドレスに魅了される一方で、狂気にも似た恋の物語が観る者の心を深くえぐる『ファントム・スレッド』(公開中)。本作で完璧主義者のオートクチュールの仕立て屋・レイノルズを演じるのが名優ダニエル・デイ=ルイス。3度のアカデミー主演男優賞受賞の栄誉を裏付ける、徹底した役作りを行う彼の姿を通して、作品の魅力を紹介したいと思う。

ダニエル・デイ=ルイスが50年代の天才デザイナーを体現した『ファントム・スレッド』(公開中)
ダニエル・デイ=ルイスが50年代の天才デザイナーを体現した『ファントム・スレッド』(公開中)[c]2017 Phantom Thread, LLC All Rights Reserved

舞台は1950年代のロンドン。英国ファッション界の中心に君臨し、天才デザイナーの名声をほしいままにするレイノルズ・ウッドコック。彼が姉のシリルと経営する「ハウス・オブ・ウッドコック」には、レイノルズが作る高級ドレスを求めて貴婦人たちが連日訪れていた。仕事もプライベートも一瞬の隙がないレイノルズだが、無垢なウェイトレス、アルマを新たなミューズとして迎えたことから、理路整然と縫い合わされた彼の日々がほころび始めていく…。

【写真を見る】まさに天才デザイナーが憑依した!?ダニエル・デイ=ルイスが厳格な姉と口論するシーンは圧巻
【写真を見る】まさに天才デザイナーが憑依した!?ダニエル・デイ=ルイスが厳格な姉と口論するシーンは圧巻[c]2017 Phantom Thread, LLC All Rights Reserved

演技の鬼!ダニエル・デイ=ルイスの役作り秘話

ダニエル・デイ=ルイスといえば、登場人物が憑依したような徹底的な役作りでも知られ、そのストイックぶりは常に話題になってきた。例えば、ギャングの肉屋を演じた『ギャング・オブ・ニューヨーク』(02)では、舞台である19世紀にはなかったという理由で、極寒の気候でも厚手のコートを着ることを拒否。その結果肺炎を患うが、やはり同じ理由で薬を飲まなかった。また、本作と同じポール・トーマス・アンダーソン監督作『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(07)に出演した際には、高圧的な石油採掘者を演じるにあたって相手役の俳優にきつく当たり過ぎてしまい、その俳優が降板してしまったという逸話まで残っている。

撮影前の約1年間、徹底的に裁縫の技術を叩き込んだ
撮影前の約1年間、徹底的に裁縫の技術を叩き込んだ[c]2017 Phantom Thread, LLC All Rights Reserved

その徹底ぶりは本作でも健在で、ダニエルは撮影前の約1年間、ニューヨーク・シティ・バレエ団の衣装監督も務める裁縫師のもとで、裁縫の基本や複雑な立体裁断、採寸の仕方まで教わり完璧に習得したという。そんなダニエルについて、アンダーソン監督は「彼(ダニエル)は想像力豊か。キャラクターの細部を即座に思い浮かべ、日常的には誰も気づかないクセまで表現してしまうんだ」と絶賛している。

自身も完璧主義者であるポール・トーマス・アンダーソン監督もダニエルのストイックさを絶賛
自身も完璧主義者であるポール・トーマス・アンダーソン監督もダニエルのストイックさを絶賛[c]2017 Phantom Thread, LLC All Rights Reserved

ダニエルだけじゃない!“鉄の女”を演じるレスリー・マンヴィル

ハウス・オブ・ウッドコックは一見するとレイノルズの城に思えるが、その彼に大きな影響をもたらす女性がレイノルズの姉・シリルだ。演じるレスリー・マンヴィルは「シリルは厳格な女性で、弟に人生を捧げてきたの。レイノルズのことを彼女以上に理解できる人はいないわ」とその存在感について語っている。大きく表情を変えることはないが、堂々とした“鉄の女”を思わせる彼女の演技は、主演男優賞の候補になったダニエルと共にアカデミー助演女優賞にノミネート。公開された特別映像でも、本当の姉弟のような息の合った2人の演技合戦を確認することができる。

レイノルズの厳格な姉・シリルを演じるレスリー・マンヴィル
レイノルズの厳格な姉・シリルを演じるレスリー・マンヴィル[c]2017 Phantom Thread, LLC All Rights Reserved

本作が“引退作”だと公言しているダニエル・デイ=ルイス。以前にも一時引退し靴職人として修行をしたのちに復帰したという過去があるだけに、その真意の程は定かではないが、彼の俳優人生の集大成となることは間違いない。芸術的ですらある究極の愛の物語を、ぜひ劇場で堪能してみてほしい。

文/トライワークス

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