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ビリー・ジーン、ボルグ、マッケンローも!テニス雑誌編集長が、レジェンドたちのテニス映画を分析

インタビュー

ビリー・ジーン、ボルグ、マッケンローも!テニス雑誌編集長が、レジェンドたちのテニス映画を分析

男女を問わずシビれる!ビリー・ジーンのリーダーシップ

『バトル・オブ~』は、試合の賞金額に男女で多額の格差が付けられ“男女平等”が叫ばれていた時代の物語だ。全米女子チャンピオンだったビリー・ジーンは状況打開のため仲間と共に女子テニス協会“WTA”を発足。それを良しとしなかった男性優位主義者たちの反発に遭い、やがて元男子チャンピオンのボビー・リッグスとの男女対抗試合に至る。映画ではこの歴史的な試合に目が行きがちだが、現在も存続するWTAをビリー・ジーンたちがゼロから築き上げた点も注目すべきポイントだろう。

男子相手に臆せず自身の意見を述べ、仲間と共に闘う彼女の姿はまさに理想の女性リーダーの先がけ。テニス雑誌初の女性編集長である保坂氏も「私自身、部活動などテニスのプレー経験がほとんどない状態で『スマッシュ』に配属され、テニスも夢中になって練習し雑誌を編集してきました。劇中のビリー・ジーンたちも“女性の地位を高めよう”というだけでなく、“好きなことを一生懸命やることに、男性も女性も関係ないでしょ”と言いたかっただけなのではないでしょうか?」と心を動かされたという。男女を問わず、自身の進むべき道を必死で模索するビリー・ジーンらの姿に勇気付けられるはずだ。

ビリー・ジーン・キングら女子テニス選手の闘いの積み重ねで、現在は多くの大会で男女の賞金額は同額に設定されている
ビリー・ジーン・キングら女子テニス選手の闘いの積み重ねで、現在は多くの大会で男女の賞金額は同額に設定されている[c]2018 Twentieth Century Fox

これまでのイメージを覆す、ボルグ&マッケンローの人物像に驚嘆

『ボルグ/マッケンロー~』で描かれるのは、世界ランキング1位で前人未到のウインブルドン5連覇に挑むボルグと、続く2位ながら野心に燃えるルーキー、マッケンローが激突した“テニスの聖地”での頂上決戦。

“鋼のメンタル”を持つボルグに対し、頭に血が上りやすいマッケンローはすぐに感情を爆発させる。本作はそんな両雄の幼少時代や、大舞台へ臨む葛藤も繊細に活写する。「ボルグには常に冷静沈着というイメージがあったので、子ども時代の描写、ツアーの裏側での表情は、私にとっても新鮮でした。マッケンローは悪態をつきまくるヒールの印象が強いのですが、あの決勝戦だけは人間として成長した姿を見せ、後に時代を創るに至る成長や葛藤が見えた気がしました」と保坂氏が語る通り、2人の人間性を掘り下げ、パブリックイメージを覆すことに成功している。

グランドスラム11勝を誇るレジェンドのボルグ。FILAのヘッドバンドやジャケットなど、ファッションでも大きな影響を与えた
グランドスラム11勝を誇るレジェンドのボルグ。FILAのヘッドバンドやジャケットなど、ファッションでも大きな影響を与えた[c] AB Svensk Filmindustri 2017
引退後のマッケンローはテニス解説者としても活躍し、ウインブルドンでもその姿を確認することができる
引退後のマッケンローはテニス解説者としても活躍し、ウインブルドンでもその姿を確認することができる[c] AB Svensk Filmindustri 2017

そして現在、テニス界は大坂なおみ、錦織圭たちの時代へ

映画をきっかけに図らずもテニス界の歴史とプレーの変遷を知ることができたが、そうなると、いま、リアルなテニス界はどうなっているのかも気になるところ。せっかくなので保坂氏に男女別で現在のテニス界の状況も伺ってみた。

「女子テニスは本命不在の混沌とした時代が続いています。調子が良く、モチベーションも高ければ誰にでも大きな大会で優勝できるチャンスがあり、もちろん大坂なおみもその一人です。この中から誰が抜け出すのかに注目ですね。男子テニスはケガから復活したフェデラーとナダルの2強時代が続いています。ですがズべレフやキリオス、ティームといった若い世代も台頭していて、そこに錦織圭らがどう再び食い込むのかなど、大変見応えのある時代になっていますね」

歴史を知り、プレーの変遷を理解して見るとテニス映画はもっと楽しくなる。そして映画を見たら、きっと実際のテニスや、ウィンブルドンで繰り広げられている名勝負にもクギ付けになるはず!

テニス雑誌初の女性編集長としてテニスの発展に務める保坂明美氏
テニス雑誌初の女性編集長としてテニスの発展に務める保坂明美氏

取材・文/トライワークス

テニス雑誌「スマッシュ」 
毎月21日発売
¥670
発・販売元:日本スポーツ企画出版社


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