渋谷の街に根付いたエンタテインメントの発信地「シネクイント」がついに復活！

1999年7月にオープンし、ヴィンセント・ギャロ監督の『バッファロー’66』(98)やクリストファー・ノーラン監督の『メメント』(01)などの話題作を世に送りだし、2016年に渋谷PARCO建て替えのために一時休館となっていた「シネクイント」が7月6日(金)に2スクリーンとなって復活。劇場を運営する株式会社パルコのエンタテインメント事業部の岩垂史兼氏は「渋谷の街全体にミニシアターで貢献していきたいと考えています」と意気込みを語る。

今回シネクイントが復活する場所は、今年の5月まで「渋谷シネパレス」として営業していた映画館の跡地。7階にチケットカウンターとコンセッションスタンド、そして162席(車椅子スペース1席)を擁するスクリーン1があり、6階には115席(車椅子スペース1席)のスクリーン2。また、8階はスクリーン1の2階席部分となっており、ここには渋谷地区で唯一となるペアシートが設けられている。

「元々の劇場に2階席があったので、それを活かしたいと強く思いました」とペアシート設置の経緯を語る岩垂氏。「いまの時代に合わせて、感動や喜怒哀楽(エンタテインメント)を誰かと共有しやすい映画館にしたいと考えてペアシートにしてみました」。なお、このペアシートはオープニング記念でしばらくの間、通常料金で利用できるとのことだ。

シネクイントと言えば、かつてお向かいにあったミニシアター「シネマライズ」との相互割引サービスをはじめ、様々な個性的な割引サービスで映画ファンの心を掴んできた。リニューアルオープン後も、休館前に人気を博していた「チケットリターンシステム」が復活。シネクイントで鑑賞した座席指定券を持参すれば1000円で鑑賞できる。また、作品ごとの割引サービスについて川嶋支配人は「あまり制限を設けずに取り組んでいきたいと思っています」とやる気満々。

「『ミラクル・ペティント』の時には宇宙服で無料だったり、『アタック・ナンバー・ハーフ』のときには6人で来場で割引だったり、『宇宙人ポール』のときは自己申告制の“宇宙人割引”というものもやりました。『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』の時には“泥酔者割引”というのも考えましたが、さすがにやりませんでしたね(笑)」とこれまでのユニークなサービスの歴史を振り返る川嶋支配人。「映画も楽しんでいただいて、また映画館に来ること自体をより楽しんでいただけるものがあれば、どんどん劇場から発信していきたいと思います」と力強く宣言。

また、渋谷のミニシアターの現場を10数年に渡り見つめつづけてきたという川嶋支配人は、近年相次いだミニシアターの閉館について「あまり悲観はしていません」とコメント。「いろんな劇場がありましたが不便な部分もあった。でも今は入替制や指定席制など、便利になって観やすい環境が整ってきている」。そして「みなさんが情報を得やすい時代になった今、シネクイントはミニシアターとしてお客様の半歩先を行くものを提供して、お客様と一緒に育って行く劇場になれればいいかなと願っています」と笑顔で語った。

リニューアルオープンの第1弾として、『最強のふたり』(11)の監督・スタッフが再結集し、先のフランス映画祭で観客賞を受賞したコメディ映画『セラヴィ！』と、『リトル・ミス・サンシャイン』(06)の監督コンビの最新作『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』が6日より公開される。

岩垂氏は「今後も作品としてエンタテインメイトを強く表現できてる作品を中心に提供していきたいと考えています。とくに、音楽やファッション、ストリートカルチャーを意識した作品も多く取り組んでいきたいです」と、渋谷の街に根付いた劇場作りを目指していることを明かす。最後に、2019年にリニューアルオープンを果たす渋谷PARCO内への出店計画について訊ねてみると「いまはまだ検討している状態です」と楽しみな答えが返ってきた。

取材・文/久保田 和馬