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「すごく大きな宝になった」行定勲監督、名優・津川雅彦との思い出を語る

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「すごく大きな宝になった」行定勲監督、名優・津川雅彦との思い出を語る

10月25日(木)から11月3日(土・祝)まで開催される第31回東京国際映画祭でワールドプレミア上映される「アジア三面鏡」シリーズの第2弾『アジア三面鏡2018:Journey』と、シリーズ第1弾『アジア三面鏡2016:リフレクションズ』が劇場公開されることを記念して3日、日本外国特派員協会にて記者会見が行われ、行定勲監督と松永大司監督が登壇した。

「アジア三面鏡」シリーズは、国際交流基金アジアセンターと東京国際映画祭がプロデュースを務め、アジアの気鋭監督3名が一つのテーマの基で共同製作を行うオムニバス映画。第1弾では日本の行定監督、フィリピンのブリランテ・メンドーサ監督、カンボジアのソト・クォーリーカー監督がメガホンをとり、第2弾では日本の松永監督と中国のテグナー監督、インドネシアのエドウィン監督がメガホンをとった。

マレーシアのペナン島を舞台にした『鳩 Pigeon』を手掛けた行定監督は「僕自身もアジア映画から影響を受けている」と明かし「その恩返しの気持ちと、ヤスミン・アフマド監督の作品から知ったマレーシア映画の良さや、マレーシアの監督たちが築いていった情緒が自分の映画とどういうふうに融合するのか楽しみだった」と、撮影当時の心情を振り返り「ただ、マレーシアはすごく暑かったんです。昼間に働いているのは日本から来たカメラマンと僕だけでした」と笑顔を見せた。

一方で長谷川博己を主演に迎えた『碧朱』を南アジアのミャンマーで撮影した松永監督は、本作とハワイで撮影した長編2作目の『ハナレイ・ベイ』(10月19日公開)を例に挙げながら「今後を模索していく上で、言葉の通じない海外のスタッフと仕事をすることは自分の作家性を広げていく大きな可能性だと感じました」と語る。さらに「日本とは違う考え方がたくさんあったので、映画を作る上で勉強になりました」と今後のキャリアを見据えた。

行定監督の『鳩』は、今年8月に亡くなられた俳優・津川雅彦さんの遺作となった作品。津川さんとの思い出を訊ねられた行定監督は「あの暑いペナン島での撮影の日々を思い出さずに入られません」と語り、津川が海外の撮影が嫌いだということや、監督の祖父に風貌が似ているからオファーしたこと、そして撮影に入る前に役柄を知った津川が「死と生の狭間に存在する役なんだね」と言ったことなどを振り返っていく。

「彼にとってのラストシーンに近い、海辺のシーンで津川さんが僕にポツンと呟いたことを今でも忘れられない。『死と生の狭間では、結局人は何にもできないもんだな』。マレーシアの海をずっと見ている姿、僕は固唾を呑んでカメラを回すことしかできませんでした。この作品でしかご一緒できませんでしたが、津川さんと仕事できたこと、マレーシアのキャストやスタッフにとってもすごく大きな宝になったと思います」と、日本の映画界を支えてきた名俳優の死を悼んだ。

取材・文/久保田 和馬

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