吉岡里帆「リスクを背負いながらも、自分がやりたいものに挑戦したい」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
吉岡里帆「リスクを背負いながらも、自分がやりたいものに挑戦したい」

インタビュー

吉岡里帆「リスクを背負いながらも、自分がやりたいものに挑戦したい」

『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』でヒロインを務めた吉岡里帆
『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』でヒロインを務めた吉岡里帆

テレビドラマ「時効警察」シリーズの三木聡監督作『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』(公開中)でヒロインを務めた吉岡里帆。いまや連ドラや映画、CMに引っ張りだことなった吉岡のパブリックイメージは、ひたむきで向上心溢れる若手女優だ。その強さの源を知るべく、インタビューを敢行した。

本作では、彼女が演じた異様に声が小さいストリートミュージシャンのふうかと、“声帯ドーピング”をして、奇跡の音域と声量を手にしたロックスターのシン(阿部サダヲ)の個性がぶつかり合い、パワフルなグルーヴを生みだしている。

吉岡は阿部と初対面した時、とてもシャイな印象を受けたそうだ。「私も初日からぐいぐい行けないタイプなので、2人とも遠慮し合っていました。でも、ふうかはシンに対して、素のままでぶつかっていく子なので、私も阿部さんに対して変に壁を作らず、思ったことをそのまま伝えるように心がけていったんです。阿部さんも『常におもしろいことをしてやるぞ』という気持ちが強い方なので、少しずつ距離が縮まっていく感じがしました」。

シンとふうかが出会い、奇跡が巻き起こる!
シンとふうかが出会い、奇跡が巻き起こる![c]2018「音量を上げろタコ!」製作委員会

シンがふうかに「やらない理由ばっか見つけてんじゃねえ」と罵声を浴びせるシーンが心に刺さる。吉岡は、どこまでもアグレッシブなシンと、何事にも消極的なふうか、どちらの気持ちにも共感できたそうだ。

「ふうかみたいに、つい億劫になっておびえてしまい、あと一歩が怖くて踏み出せない気持ちはよく分かります。私も子ども時代に、学芸会で配役を決める時、自分がやりたい役に誰かが先に手を挙げたら、『もういいや』と諦めてしまうタイプでした。好きな人が友だちとかぶった時も、一歩引いちゃうほうだし。でも、この仕事をやっていくうえでは、自分から前に踏みだしていかないと誰も気づいてくれないんです」。

吉岡は女優業を始めてからは、弱い自分を奮い立たせ、勇気を出すようにしていったそう。「けっこう心境の変化がありました。いまでは逆に、みんなが避けるような役や、共感しにくいけどおもしろそうなものに対して、敢えて挑戦したいと思えるようになりました」。

吉岡が思考を切り替えるきっかけになった作品が、連ドラ「ゆとりですがなにか」の現場だった。「自分が演じるキャラクターがどうしても好きになれなかった私は、水田(伸生)監督に『なんで彼女はこういうことを言うんでしょう?私には理解できないです』と言ったんです。そうしたら、水田監督から『どんな役が来ても、演じる役者が自分の役を愛せないと、その役が誰かに愛されることはないよ』と言われて。『たとえ演じるのが悪役だろうが、面倒くさい女の子だろうが、どんな役でも愛していけば、魅力的に見えるようになる。そうすれば、そのキャラクターの味方になってくれる人が増えていくから、自分で自分の役を否定しちゃいけない』と言われ、なるほどと思ったんです」。

異様に歌声が小さいストリートミュージシャンのふうか(吉岡里帆)
異様に歌声が小さいストリートミュージシャンのふうか(吉岡里帆)[c]2018「音量を上げろタコ!」製作委員会

当然ながら、チャレンジングな作品を選ぶ時には、常に不安も伴うが、吉岡は「リスクを背負いながらも、自分がやりたいと思うものに挑戦したい。失敗するかもしれないけど、新しいものにトライしようとしている人たちと一緒に突き進むほうがよっぽど楽しい人生じゃないかと、いまは思っています」と言う。

荒波のなかへ漕ぎだす分、風当たりも強くなるし、時には心が折れそうになる時もあるだろう。ただ、吉岡には確固たる信念があり、共に船出をした制作チームへの信頼感もある。「きっとこの職業の人はみんなそうだと思うんですが、年々心が強くなっていくような気はします。自分が傷つくことはたいした問題じゃない。それ以上に大事なことがたくさんあって、自分が守りたいものもたくさんあるから」。

いまでも現場ではかなり緊張するという吉岡。「でも作品ごとに、演じる役や癖の強い台詞に背中を押されたり、監督の熱いメッセージに救われたりします。共演者やスタッフさんも応援してくださる。だから大変な時も、次の日になったら『まあいいや』と切り替えられるんです。三木監督の口癖も『まあいいや』で、私もその三木イズムをリスペクトし、この作品をやったあと、より明るくなれました」と柔和な笑顔を見せる。

彼女の志の強さは、現場で培われたものだ。「もちろん難しいことをする時はドキドキするし、難しいことに変わりはないんですが、なにか新しいことをする時は誰でもそうだと思います。これからも皆さんが観たことがないような作品に出演できるように、ひたすら頑張っていきたいです」。

取材・文/山崎 伸子

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