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“絶望とエンタテインメントが両立”した傑作『ボーダーライン』続編を、トークイベントで分析!

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“絶望とエンタテインメントが両立”した傑作『ボーダーライン』続編を、トークイベントで分析!

国境麻薬戦争の闇を捉え、アカデミー賞3部門にノミネートされたサスペンス・アクション『ボーダーライン』(16)の続編として、11月16日(金)より公開となる『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』。10月26日に「丸の内ピカデリー爆音映画祭」のクロージング作品として先行上映が行われ、ゲストに映画・音楽ジャーナリストの宇野維正、聞き手に奥浜レイラを迎えたトークイベントが開催された。

『ボーダーライン』を象徴するテーマ曲「The Beast」と共に現れた宇野は、『ボーダーライン』シリーズを「10年代に立ち上がったオリジナルシリーズ映画としては最高」と絶賛。本作では、前作から監督・主演・音楽の担当人物が変わったことで期待と不安を感じていたそうだが、「心配する必要はなかった!」と太鼓判を押した。

製作陣がガラリと変わったにも関わらず、本作が成り立っていたのは、脚本家テイラー・シェリダンの手腕によるもの、と宇野は語る。元々役者として活動していたテイラーは、前作監督のドゥニ・ヴィルヌーヴに才を見抜かれ、『ボーダーライン』の脚本を経て、『ウインド・リバー』では監督まで務めた。テイラーは『最後の追跡』『ボーダーライン』『ウインド・リバー』ら“フロンティア3部作”を手掛けてきたように、まさに社会の繊細な“ボーダーライン”を描いてきた人物。続編の特徴について宇野は「麻薬カルテル映画としてのスリルはもちろん、“国境”や“民族”というボーダーを捉えた映画」と評した。

次なる話題は、映画の緊迫感を高める音楽について。前作で音楽を務めたヨハン・ヨハンソンは今年2月に急逝。本作では彼と長年共同制作を行ってきたヒルドゥル・グズナドッティルが音楽を務めたが、宇野は「ヨハン・ヨハンソンの存在を否応にも感じることになる」と感動の場面を匂わせる。

最後に宇野は、自身もファンである本シリーズに対する今後の不安として、昨年9月に亡くなったカルロス・ムニョス・ポルタルの名を挙げた。『マイ・ボディガード』(04)を始めとして、メキシコの危険地帯での撮影を誘導するロケーションマネージャーだったカルロス。中南米の危険地帯の撮影に必ず参加していた彼がハチの巣状態で射殺されてしまった事件について、宇野は「マフィア側からの警告だと思う、今後は実録度が下がってしまうのではないか」と危惧するとともに「この痛ましい事件を機に、リアルな映画だったことが良くわかる」と心境を述べた。

本作の見どころについて、宇野は「絶望とエンタテインメントは両立する。とにかく観てほしい」と熱弁し、イベントは幕を閉じた。

文/編集部

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