クイーンの知られざるトリビアを『ボヘミアン・ラプソディ』のキャストが語る|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
クイーンの知られざるトリビアを『ボヘミアン・ラプソディ』のキャストが語る

インタビュー

クイーンの知られざるトリビアを『ボヘミアン・ラプソディ』のキャストが語る

『ボヘミアン・ラプソディ』でクイーンを演じた3人
『ボヘミアン・ラプソディ』でクイーンを演じた3人

20世紀のロックシーンにその名を轟かせた、クイーンのフレディ・マーキュリーの生き様を、名曲と共にフィーチャーした音楽映画『ボヘミアン・ラプソディ』(公開中)。本作を引っさげ、フレディ役を演じたラミ・マレック、ブライアン・メイ役のグウィリム・リー、ジョン・ディーコン役のジョー・マッゼロが来日。彼らを直撃し、本作に懸けた情熱と、クイーンを演じた上で知ったトリビアネタについて語ってもらった。

クイーンの現メンバーであるブライアン・メイ(ギター)とロジャー・テイラー(ドラム)が音楽総指揮を務め、「X-MEN」シリーズのブライアン・シンガー監督がメガホンをとった本作。クイーンの誕生秘話やその後の活躍ぶり、20世紀最大のチャリティーライブ「ライヴ・エイド」の舞台裏を語ると共に、フレディの秘めたる苦悩や葛藤も浮き彫りにされていく。

ミュージックビデオがたった4時間で撮影されたとされ、本作のタイトルにもなった名曲「ボヘミアン・ラプソディ」。クイーンを演じたラミたちが、役にアプローチしていくうえで一番驚いたエピソードとは?

【写真を見る】フレディ・マーキュリーになり切ってシャウトするラミ・マレック
【写真を見る】フレディ・マーキュリーになり切ってシャウトするラミ・マレック[c]2018 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

ラミは、フレディが「愛という名の欲望」を生みだした時の制作秘話をピックアップ。「フレディがお風呂に入っていた時、突然インスピレーションが湧き、アシスタントにギターを持ってこさせたとか。彼がバスタブのなかで、ギターを手に作り上げたのが『愛という名の欲望』だった。実は、このエピソードは脚本にもあり、撮影もしたけど、完成版ではカットされてしまった。でも、僕にとっては想い出深いシーンだったよ」。

さらにラミは「100%真実かどうかはわからないけど…」と眉唾ものだと前置きをしたうえで「(フレディは)ダイアナ元王妃を男装させてゲイバーに連れていったらしい。いや、これは真実みたいだよ」と、グウィリムやジョーとうなずき合う。

ジョーは、クイーンとデヴィッド・ボウイによる81年の共作共演曲「アンダー・プレッシャー」にまつわるジョン・ディーコンのエピソードを披露。「『アンダー・プレッシャー』のべースラインを思いついたのはジョンなんだけど、そのあとランチに行ってすっかり忘れてしまったようで。その後、彼が『まったく覚えていない』と言ったら、ロジャー・テイラーが『なに言ってるの?こういうふうだったんじゃない?』と、教えてくれたそうだ。ジョンはあれだけ才能にあふれたすばらしいベーシストで、いろんな名曲を作ってきたにも関わらず、そういうそそっかしいところがあるんだなと(笑)」。

グウィリムはブライアン・メイがインペリアル・カレッジ・ロンドンで博士号を取ったことに驚いたそうだ。「ブライアンは当時、天体物理学の博士課程を取っていたが、クイーンに参加したことで72年に学問からしばらく離れることになったんだ。その後、彼は復帰し、再び論文を手掛け、08年にやっと博士課程を終了した。彼の論文のタイトルは『黄道塵の中の視線速度』だそうだ。36年間も大学から離れて復帰した人なんて、これまでにいなかったんじゃないかと驚かされるよ」。

続いて3人に、一番好きなクイーンの曲を聞いてみた。ジョーは「僕たちの好きな歌は日々変わっていくよ」としたうえで、『愛にすべてを』を挙げた。「もちろん『ボヘミアン・ラプソディ』が彼らの最高傑作だと思うけど、『愛にすべてを』は美しくてわかりやすい内容だから好きなんだ」。

クイーンの結成秘話からその後の活躍までが描かれていく
クイーンの結成秘話からその後の活躍までが描かれていく[c]2018 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

ラミも「フレディ自身も『愛にすべてを』は『ボヘミアン・ラプソディ』よりもずっといい曲だと言ってたらしい。僕も一番好きだ」と言う。「フレディのピアノは、誰にも真似できない弾き方をするし、歌についても彼はあの世代で最も偉大なシンガーの1人だと言える。また、彼はバンドのロゴを作ったり、コスチュームデザインをしたりするアーティストでもあり、詩人でストーリーテラーでもあった。彼の詩を読んでみると、そこから1本のショートストーリーが生まれそうな気がするし、同時に痛みも感じられる。『誰か愛する人を探してくれないか』なんて言える人がほかにいると思う?」。

グウィムは「僕には子どもがいないけれど、クイーンの好きな曲を選べという質問は、子どもがいる人に、どの子が一番お気に入りなんだい?と聞くようなものだ」と苦笑い。その後「まあ、今日の答えとしては『ドゥーイング・オールライト』かな」と、クイーンの母体となったスマイル時代からの曲を選んだ。「これはかなり初期の曲で、スマイルの時にレコーディングしたものと、フレディが加入した後のものがあるんだけど、両方聴いてみると全然違うんだ。直接比較できるのがおもしろいと思う」。

複雑な生い立ちで、様々なコンプレックスを抱えながらも、スターダムを駆け上ったフレディ・マーキュリー。その壮絶な人生を、ラミ自身はどう捉えたのか?

「僕はフレディではないからなんとも言えないけれど、僕なりの解釈で言えば、フレディは時に孤独や疎外感を感じていたと思う。彼はイラン系インド人で、ゾロアスター教という強い信仰心を持つ家庭で育ち、自分のセクシャルなアイデンティティも芽生えていくなかで、彼はそれをどう表現しようかと模索し、自分の夢を達成しようと、ノーマルな文化とぶつかり合っていったんだ。だけど、彼はそれらすべてを自分の野望や欲望に変えていこうとした。そして、自分が孤独じゃないと思える場所を少しずつ見つけて行ったんだと思う。それは、バンドのメンバーや(恋人から真の友人となる)メアリー、(恋人の)ジム・ハットンはもちろん、音楽を通してつながっていた彼のファンたちとの関係性を含めてのものだ」。

クイーンを徹底的にリサーチし、彼らになり切ろうと真摯にアプローチしたというラミたち。観終わったあと、クイーンの名曲の数々が心のなかでリフレインして止まない。伝説となった男、フレディ・マーキュリーの熱き魂の歌声を、ぜひ大きなスクリーンで体感していただきたい。

取材・文/山崎 伸子

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