実写とアニメの音楽制作の違いは?梶浦由記が明かす『Fate』サウンド・クリエイトの秘密|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
実写とアニメの音楽制作の違いは?梶浦由記が明かす『Fate』サウンド・クリエイトの秘密

インタビュー

実写とアニメの音楽制作の違いは?梶浦由記が明かす『Fate』サウンド・クリエイトの秘密

手にした者の願いを叶える万能の願望機「聖杯」をめぐる魔術師たちの死闘“聖杯戦争”を描くヴィジュアルノベルゲーム「Fate/stay night」。04年の初アニメ化以来、映像化される度に熱狂的なファンを増やし続けている同シリーズのアニメ最新作は、主人公・衛宮士郎(声:杉山紀彰)の後輩・間桐桜(声:下屋則子)をヒロインに据えた物語を全三章構成で映画化する。動員98万人、興収15億円の大ヒットを記録した『劇場版「Fate/stay night [Heaven’s Feel]」Ⅰ.presage flower』(以下『第一章』)に続く『劇場版 Fate/stay night [Heaven’s Feel]II. lost butterfly』(以下『第二章』)の公開を19年1月12日(土)に控えるなか、音楽そして主題歌を手掛けた梶浦由記に、作品への想いを聞いた。

ハリウッド作品にも負けないアニメの音楽を手がけられるよろこび

桜が慕う先輩・衛宮士郎(左)。[HF]は彼と桜の関係性をドラマチックに深堀りする
桜が慕う先輩・衛宮士郎(左)。[HF]は彼と桜の関係性をドラマチックに深堀りする[c]TYPE-MOON・ufotable・FSNPC

――今作を製作するTYPE-MOON、ufotableとのお仕事は『劇場版 空の境界』シリーズに続いてだと思われますが、どんな充足感、魅力がありますか?

「私は『空の境界』で、シリーズ全作で画に合わせて音楽を作る“フィルムスコアリング”をさせていただきました。その作業を通して、自分の中で学べたことがとても大きかったんです。私にとって、本当にターニングポイントと言える作品になりました。ufotableさんは、いろんなアニメ作品を作っていらっしゃいますが、私に依頼いただくのはダークな伝奇ものだったり、割と悲惨な運命が待ちかまえているような、スケールが非常に大きい作品が多いんです。いろいろな作品でサウンドトラックのお仕事を何度もさせていただいていますけど、例えば英雄がものすごい軍勢を引き連れて『行けーっ!』とか言って、敵陣に突っ込んでいったり、英雄が悲劇のうちにすごく悲惨な死を遂げる作品って、ufotableさんの作品かハリウッドの作品じゃなければ作れないのでは?って思うところがあって(笑)。悪役は高笑いしますしね。『ぅわははははは!』みたいなね。そういう作品の音楽を作るのは、非常に楽しいです」

『劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」第一章&第二章の音楽を手掛けた梶浦由記
『劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」第一章&第二章の音楽を手掛けた梶浦由記

――『劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」』でのお仕事、手応えはいかがですか?

「この作品は『Fate/stay night』の各ルートの中でも非常にダークな物語だということに加え、音楽の役割も非常に大きいところがありますので、とてもやりがいのある作品だと思っています。[Heaven's Feel](以下[HF])は、間桐桜というヒロインに特化した、すごく陰鬱なラブストーリーで、このシリーズの中で一番生々しい作品だと思っているんですよ。桜の嫉妬心など、女子が持っているダークな部分を『ここまで描いちゃうの?』と思う部分もあったりするので、音楽面でのアプローチもかなりパーソナルな雰囲気で、興味深く作らせていただきました」

今夜、地上波で放送!『第一章』の見どころ&聴きどころ

『第一章』の主題歌「花の唄」に、梶浦は「桜を好きになってもらいたい」という思いを込めたという
『第一章』の主題歌「花の唄」に、梶浦は「桜を好きになってもらいたい」という思いを込めたという[c]TYPE-MOON・ufotable・FSNPC

――TV初放送となる『第一章』をご覧になる方に、注目していただきたいポイントはありますか?

「『第一章』も結構難しいんですよね。もうTVシリーズを観ている、原作ゲームをプレイされていることが前提で描かれているお話なので。でも[HF]は、他の『Fate』を知らなくても、桜という少女の立場に立って観ると、入り込みやすいのかなって思いますね。他の『Fate』のシリーズでは、人格的に完成された大人がたくさん登場するんですけど、ものすごく未完成な人間ばかりが出てくるところが[HF]の魅力かもしれませんね。特に士郎と桜のカップルの行方を見守るような作品かな、と。『もうちょっとうまく生きられただろう、君たち』と思うようなところが描かれるので、ダークなファンタジーとしても、不器用な少年少女のラブストーリーとしても観ていただけるんじゃないかな、と思います」

――『第一章』の主題歌「花の唄」の歌詞も素晴らしいですよね。

「普段はあそこまで登場人物に寄った歌詞は書かないんですよ。今回は、主人公の気持ちを代弁しているようなつもりで。あまり主人公の代弁をするのは、普段はいやらしくなりすぎるので避けていたんですけど、今回は、桜のことを映画をご覧になる方に好きになってほしくて。この話って、そこがないと始まらないなと思っていて。なので、あえて作品内のセリフを使ったりと、えげつないくらいヒロインの歌にしてみました」

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