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斎藤工、『麻雀放浪記2020』でアンドロイド役のベッキーに感嘆「完璧でした」

インタビュー

斎藤工、『麻雀放浪記2020』でアンドロイド役のベッキーに感嘆「完璧でした」

『麻雀放浪記2020』の主演を務めた斎藤工
『麻雀放浪記2020』の主演を務めた斎藤工

斎藤工が大好きな映画の1本として挙げる、和田誠監督作『麻雀放浪記』(84)。その原作である阿佐田哲也の同名小説を原案に、斬新なアレンジを加えて作られた『麻雀放浪記2020』が4月5日(金)より公開される。主演を務めた斎藤は、10年間熱望した映画化ということで、気合も十分。さらにメガホンをとったのが、『孤狼の血』(18)などで見事に骨太な物語を活写してきた白石和彌監督ということで、規格外の異色エンターテインメント作品に仕上がったようだ。

舞台は、第三次世界大戦が勃発し、東京オリンピックが中止となった2020年の東京!この怖いもの知らずの設定に、映画業界はざわついた。斎藤扮する坊や哲は、1945年の第二次世界大戦後から時空を超えて2020年にやってくるが、未来の戦後は、政治家の不祥事や少子高齢化、労働者への過剰な搾取と、問題が山積み状態の社会だった。

1945年から2020年にタイムスリップしたギャンブラー・坊や哲
1945年から2020年にタイムスリップしたギャンブラー・坊や哲[c]2019「麻雀放浪記2020」製作委員会

斎藤は、映画を見漁っていた頃、非商業主義的な芸術作品などを配給していたATG(日本アート・シアター・ギルド)の映画もよく観ていて、そのなかで出会ったのが『麻雀放浪記』だったそうだ。

「土の匂いがする映画というイメージでした。僕はその時代を知らないけど、その匂いは、映像に宿る力の1つだと思っていました。僕は麻雀に詳しかったわけではないけど、阿佐田哲也さんが描く小説から、戦後に日本人がもがきながらもどう立ち上がってきたのかを知ることができました。当時の人はいまと比べていろんなリスクや不自由さを感じ、抑圧されていたと思いますが、その圧から逃れ、進んでいく姿にカタルシスみたいなものを感じ取っていたと思います」。

それは「もしかしたら、ヨーロッパの映画でホロコーストが描かれることに近いのかもしれない」と捉えた斎藤。

「『麻雀放浪記』では、敗戦や、広島や長崎の原爆投下など、なにか大きなダメージを受けたあとの社会が描かれていて、強烈なインパクトを受けました。また、描かれているものも妙にリアルで、当時の僕は小僧なりに、自分たちの日常と地続きなものとして感じていました。昭和の時代ならではのざらつきがあって、窮屈さや閉塞感を抱えつつも、そこから希望が見えていて、とても印象に残っています」。

麻雀クラブ・オックスのママ、八代ゆき(ベッキー)
麻雀クラブ・オックスのママ、八代ゆき(ベッキー)[c]2019「麻雀放浪記2020」製作委員会

そのスピリットを受け継いだ『麻雀放浪記2020』だが、斎藤を軸に、脇にもキャスティングの妙というべき個性派俳優陣が集った。天真爛漫な地下アイドル・ドテ子役に、姉妹音楽ユニット、チャラン・ポ・ランタンのボーカル・もも、麻雀クラブ「オックスクラブ」のオーナーで、坊や哲に麻雀のイカサマ技や博打のノウハウを叩き込む八代ゆき役にベッキー、タレントプロダクションの社長・クソ丸役に竹中直人、ドテ子の熱烈なファン、ドク役にミュージシャンの岡崎体育、言葉巧みな雀士・ドサ健役に的場浩司、冷静で非道な雀士・出目徳役に小松政夫が扮する。

「白石監督のキャスティングはすごい。すべてが逆説的です」と斎藤は舌を巻く。「ある程度、俳優はパブリックイメージみたいなものを持っていると思いますが、白石監督はそのラベルを剥がし、どう調理していくかというところで勝負をされている。そして『こんな調理法があるんだ!』とか『これが本来の調理法だったのか!?』というところまで持っていくんです」。



ベッキーが八代ゆき役のほか、AI搭載のアンドロイド役で一人二役に挑んでいる点も興味深い。

「ベッキーさんは完璧でした。ヒロインというよりは、現代社会の象徴です。僕は普段見ているベッキーさんのイメージが強すぎて、最初は想像できなかったけど、いざその役に入ったベッキーさんと対峙してみると、本当にすばらしかったし、この人しか考えられないと思いました」。

大ヒットした『blank13』(18)など、映画監督としての顔も持つ斎藤だが「もちろん紆余曲折はあったと思いますが、少なくとも僕にはできないキャスティングでした」と、感心を通り超して、感動すら覚えたよう。

坊や哲を助けることになるドテ⼦(もも)
坊や哲を助けることになるドテ⼦(もも)[c]2019「麻雀放浪記2020」製作委員会

「僕ならもう少し保守的にいきます。僕は本作の立ち上げから関わっていますが、最初は僕が坊や哲役じゃなかったし、僕である必然性もなかったので反対していました。そのあと、もっと若い方も含めていろんな座組が10年近く練られてきたけど、最終的にはとんでもなくリアルな世界に着地したと思っています。この作品には発酵させる時間が必要で、時間と共に熟成されていきました。いい意味で、誰も予想できないところにたどり着いたと思っています」。

取材・文/山崎 伸子

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